新入社員週報第3回「送料無料で届く本たち」(松尾彩乃)

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10月30日31日に神保町ブックフリマがありました。雨が降ったりやんだりの不安定な天候のなかお越しいただいた皆さま、有難うございました。今週も前回に引き続き「大学構内での書籍販売」についてお送りいたします。

図書館の本、人と貸し借りする本、上京するときに親に持たされた本...大学構内はさまざまな本で溢れていますが、多く学生さんたちが大学で初めて出会う本は「教科書」と呼ばれるものだと思います。そのため「大学構内の書籍販売」、本を届ける側としても、新学期の教科書販売は大きな比重を占める業務でした。

その年の受講者数が未確定のなかでの発注(返品が出ないようにしつつ)、しかし授業の進行に支障をきたす可能性もあるので品切れさせるわけにもいかない。300〜400点ほどの本(キャンパスによって扱う点数は大きく異なります)を管理するうえで、毎年必ず猛省点は出てきました。

特に、予想もしていなかった新型コロナウイルス感染症の流行拡大、その影響を受けた2020年は、授業形態の変化もあり過去の発注冊数が参考にならないことや、初めて実施した教科書の通信販売で配送料がかかってしまうことも、私のなかでは大きな課題でした。

自分自身もこれまで幾度となく恩恵を受けてきた「送料無料」の文言と向き合わざるを得ない状況です。

そして今、出版社に所属している身で、書店からやってきた私は、オンライン書店、書店の店頭、出版社直販サイト、先日の神保町ブックフリマもそうですね...この読者と本とを結びつける場所たちとどのように向き合えば良いのか、まだ分からないままでもあります。まだ正解が出ないままではありますが、和田敦彦さん『読書の歴史を問う 書物と読者の近代 改訂増補版』(文学通信)は、現在2021年11月より行動が制限された2020年8月に刊行され、本が読者と出会う場やその仕組みを見つめ直し、大きなヒントをくれた1冊でもあります。


新入社員週報第1回「転々としながらも決まっていたかのように
新入社員週報第2回「呟きは慎重にして(大学構内での書籍販売について)」