北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室・田村実咲[編]『開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する』(文学通信)

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9月上旬刊行予定です。

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北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室・
田村実咲[編]
『開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する』(文学通信)
ISBN978-4-86766-054-6 C0070
四六判・並製・368頁・口絵カラー
定価:本体2,200円(税別)

あなたの元にやってきた木彫り熊たちは、どこから来たのか?
木彫り熊概論、開講します!

1970年代には「現在道内で生産される木彫り熊は、年間約250万個、ザット15億円」とも伝えられ、北海道の一大土産品産業になった、木彫り熊。

本書は、北海道木彫り熊が歩んできた歴史を振り返り、土産店、職人・作家、有志の研究会、展覧会を企画した博物館や大学など、木彫り熊に携わる人々の多彩な活動と現場の声から、木彫り熊をあらたに捉え直し、その魅力と私たちとの関係とを明らかにします。

さらに研究としての木彫り熊の裾野を広げるため、絵画的な方法で表現されたクマ・ヒグマの事例より、美術・文化の方面からクマについて考えていきます。また、ミュージアム・コレクションとしての木彫り熊の可能性にも注目します。博物館はどのように私たちの生活にありふれた資料を収集・保存し、展示しているのか。資料としての位置づけや在り方、コレクション形成のプロセスの事例をもとに、木彫り熊のこれからを探ります。

カラーで「木彫り熊基礎知識」を掲載するほか、図版・資料も多数掲載。付録として「木彫り熊関連年表」も完備。

執筆・インタビューは、田村実咲、武永真、山崎幸治、青沼千鶴、増子博子、是恒さくら、今村信隆、寺農織苑、尾崎織女、阿部麟太郎、(有)トミヤ澤田商店、遊木民。

【当時の暮らしや出来事を知る当事者が少なくなるなか、聞き取りと情報共有、技術伝承は喫緊の課題といえます。木彫り熊の歴史が再評価され、新たな価値への注目が高まる今こそ、少しでも多くの現場や当事者の記憶と証言を集め、後世へつないでいくことが、本書の役割であると考えています。】...田村実咲「はじめに」より

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【編者紹介】

北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室

この研究室は、2019年に北大大学院文学院に誕生しました。博物館には伝統的で固有な機能があります。一方で、それと同じぐらい大切な機能が、利用者とコミュニケーションを図って、コミュニティの参加とともにさまざまな博物館体験を提供することです。博物館のそんな側面に関心のある学生たちが多く学んでいます。 http://museology.starfree.jp/

田村実咲(たむら・みさき)

1995年、北海道札幌市生まれ。北海道大学大学院文学研究科修士課程修了。2022年、札幌市アイヌ文化交流センター(サッポロピㇼカコタン)活動促進員。2023年より国立アイヌ民族博物館にて、アソシエイトフェローとして勤務している。木彫り熊の「サイン」に注目し、木彫り熊の制作と販売の歴史についての研究を進めている。

【目次】

口絵 木彫り熊基礎知識

はじめに(田村実咲)

凡例

1 木彫り熊を旅する

木彫り熊とは何だろうか?
どこから来て、どんな旅路をたどり、
どこへ向かおうとしているのだろうか?
木彫り熊の足跡をたどって、歴史と文化を旅してみよう。

第1章 木彫り熊をたどる(田村実咲)

[本章では、北海道木彫り熊の制作・販売の歴史的経緯を概観する。 木彫り熊は北海道の著名な土産品として知られているが、北海道木彫り熊に関する全般的な研究は始まったばかりといえる。 北海道木彫り熊の軌跡を八雲と旭川をはじめとするたくさんの「ふるさと」に注目してたどっていく。]

introduction●北海道観光と木彫り熊

1 八雲熊彫の足跡

尾張徳川家による八雲移住/徳川農場の設立と「熊狩の殿様」/スイスから八雲へと持ち込まれたペザントアート/徳川義親による農村美術運動/品評会に「木彫り熊」が出品される/擬人化熊も生まれた農村美術運動の展開/「我が町の特産品」八雲熊彫の確立と発展/第二次世界大戦による徳川農場の閉場/戦後から現在までの八雲熊彫の制作・販売

2 アイヌの木彫り熊の足跡

江戸時代までの木彫土産品制作/明治時代に迫られる生活文化の変容/博覧会のなかのアイヌの土産品/旭川・近文における新たな土産品の模索/熊猟師・松井梅太郎と「豚熊・鰐熊・鼠熊」/アイヌの木彫り熊のはじまりを巡って/昭和初期の北海道観光ブーム/急速な人気の高まりによって生まれた光と影/第二次世界大戦中にも続けられた木彫り熊制作/戦後復興と米兵の土産品として/二度目の北海道観光ブーム/北海道の一大土産品産業へ/移り変わる北海道観光の価値/再び注目される木彫り熊

3 全道へ広がった木彫り熊の制作

繁華街・札幌/道東の一大拠点・阿寒/地域産業として根付いた白老/新たな技術を導入した奈井江/道南の観光拠点・函館/伝統工芸の里・二風谷

epilogue●たくさんの「ふるさと」いくつもの「旅路」

第2章 木彫り熊を訪ねる

[本章では、木彫り熊の制作・販売にたずさわってきた商店や職人の元を訪ね、現場の声を集める。 制作・販売が広がっていった各地域で、木彫り熊はどのような歴史をたどってきたのだろうか。そこにはどのような人やモノ、地域のつながりが見出せるだろうか。]

1 木彫り熊を訪ねる前に(田村実咲)

木彫り熊の「サイン」とは/誰が「サイン」を入れたのか?/❶職人の「サイン」/❷土産店の「サイン」/❸購入者の「サイン」/❹その他の「サイン」/「サイン」がないことにも理由はある!/❶「サイン」を入れることができなかった場合/❷「サイン」を意図的に入れなかった場合/「サイン」から人々のつながりをひも解く

2-1 〔木彫り熊を訪ねて〕有限会社トミヤ澤田商店

内地へ赴く兵隊さんのお土産として/本州や九州の土産品も集まる/有名キャラクターブームと熊ボッコ/北海道マークのシール/木札とタグと表情熊/職人の名前を入れる?入れない?

2-2 〔木彫り熊を訪ねて〕遊木民(有限会社拓商)

道東をまわると箔がつく/長野や小田原の木彫り熊たち/ニポポ、レリーフ、木彫り熊/「木彫専門店」として/職人にも生活がある!/「サイン」の上手な店員さん/買った人のサインでもあるペン書き/「職人」なのか「作家」なのか/「サイン」の価値の移り変わり

column1●職人の話を聴く〜木彫家・荒木繁氏を訪ねて〜(田村実咲)

飛び込み営業で売った「熊」/彫刻刀と電子レンジ/親子代々に使われてきた「サイン」/木彫り熊が生まれる場所で

第3章 木彫り熊を伝える

[本章では、木彫り熊展示を行った博物館や有志の研究会の取り組みを紹介する。会報「キムンカムイ」は、旭川で発足した「木彫り熊を愛する会(木彫り熊愛好倶楽部)」が刊行したフリーペーパーである。古美術商や土産店の元工場長らが集まり、木彫り熊の収集や商店などへの独自の聞き取りを行っていた(現在は解散)。近年、木彫り熊の魅力を伝える人々の活動が広がっている。例えば、有志の研究会やコレクターの存在は道内に留まらず、活動内容もイベントの企画、オリジナルグッズの制作・販売、書籍の刊行など多岐に渡る。]

1 木彫り熊と展示(田村実咲)

2-1 〔インタビュー〕木彫り熊展示とコミュニティ協働(話し手=武永真)

東北地方のこけしは伝統工芸品、では北海道の木彫り熊は......?/ゼロベースからの資料収集/「白老では土産屋さんの子どもが一番お小遣いが多かった」/「人間と熊の文化史」としての木彫り熊/木彫り熊という「ものづくり」を展示する/飛生芸術祭との協働/「再ブーム」=木彫り熊を北海道の「文化財」へ/博物館 ⇆ 木彫り熊 ⇆ 観光/産業として守り、継承すること/コミュニティとしての木彫り熊研究へ

2-2 〔インタビュー〕木彫り熊と文化人類学的発見(話し手=山崎幸治)

九州で収集された「山崎コレクション」/展示で旅をする木彫り熊たち/北海道の野性を担う土産品/自分も歴史や文化の当事者/「コンタクト・ゾーン」としての木彫り熊/移り変わっていく価値づけ/「芸術=文化システム」にみる木彫り熊/「再ブーム」=「なぜ木彫り熊なのか?」の謎を探る/「語られてこなかった歴史」の案内役/「完璧さ」よりも「自分らしさ」/「知の鉱脈」としての木彫り熊研究/付録 山崎コレクションが展示された展覧会一覧

column2●八雲のクマまつりレポート(話し手=青沼千鶴)

八雲のヘリテージ・木彫り熊/目標はシステムをつくること/現場の声を後世につなぐ

第4章 木彫り熊を探す

[木彫り熊に関心をよせる人々の活動によって、木彫り熊の足跡は道外や海外からも見つかり始めている。本章では、北海道という地を飛び出し、木彫り熊の足跡を追いかける二人のエッセイを収録する。木彫り熊によって接続される土地、人に注目したい。]

1 道外・海外の木彫り熊の足跡を求めて 田村実咲

2-1 〔エッセイ〕月の輪を持つ木彫り熊/松本生まれの木彫り熊(増子博子)

月の輪を持つ木彫り熊/松本生まれの木彫り熊

2-2 〔エッセイ〕日本からブラジルへ、木彫り熊の足跡を辿る日々(是恒さくら)

2 木彫り熊を学問する

木彫り熊から何を知り、何を学ぶことができるだろうか。
これからの木彫り熊研究の可能性を探ってみよう。
今こそ、木彫り熊学を始めよう!

第5章 木彫り熊と研究領域

[本章では、木彫り熊に重要な関わりを持つ学問領域から、木彫り熊研究の裾野を広げることを試みる。芸術学の側面から、絵画のモチーフやイメージのなかのクマに着目して、「クマを表象する」ことの事例を見てみよう。芸術品としての木彫り熊の価値やクマというモチーフに注目することは、鑑賞を楽しんだり研究を進めるための足がかりになるはずだ。]

1 描かれた、もしくは描かれなかったクマ・ヒグマ―絵画の森に動物たちを追って(今村信隆)

はじめに/1 北海道のイメージとヒグマ/2 なかなか描かれないクマ?/3 江戸時代のクマ表現/4 蝦夷地の動物/5 近代の油彩画・洋画と動物/6 近年の日本画と北海道の動物/おわりに

第6章 ミュージアムとコレクション 博物館資料としての可能性を考える

[本章では、近現代の生活資料が博物館資料となる過程を見つめる論考を掲載する。博物館はどのように私たちの生活にありふれた資料を収集・保存し、展示しているのだろうか。展示制作や鑑賞を通して、私たちはどんな学びを得ることができるだろうか。博物館資料としての木彫り熊の可能性について考えてみよう。]

1 モノがミュージアムのコレクションになるまで(寺農織苑)

1 収集と所有との違い/2 モノがミュージアムのコレクションになるまで/①資料の収集・拡充/②資料の保管・保存・維持/③展示/④教育/⑤調査研究/3 木彫り熊はどのようなミュージアムのコレクションになり得るのか/4 コレクションのこれから/5 ミュージアムとビデオゲーム機

2 日本玩具博物館のコレクション形成への歩み――世界の玩具文化を求めて(尾崎織女)

はじめに/ひとりの熱意から博物館が誕生した/日本玩具博物館が提示する玩具の世界/世界の玩具の収集活動/⒈まずは現地へ出かける/⒉各地の民芸品を輸入する専門業者の協力を得る/⒊海外の玩具博物館、収集家との交換収集/⒋生涯をかけたコレクションの寄贈を受ける/⒌来館者が収集者になる/来館者とともにコレクション展示を育てる/玩具文化へのまなざし

column3●研究成果が展示になるまで(阿部麟太郎)

多様な解釈ができる「展示」/「見方」を伝えるために/物と場所の制限と工夫/黒板風のタイトル、実は....../専門の外を見つめて

「開講、木彫り熊概論!」 展示記録

おわりに(田村実咲)

付録●木彫り熊関連年表(田村実咲)

【執筆者(掲載順)】
増子博子(ますこ・ひろこ)
絵描き。土地を移動する中で偶然出合い、惹かれるものをテーマに美術を通した制作を行う。近年参加した展覧会は「こっぱ人形ってなあに? 徳武忠造がつなぐ農民美術のいま」(朝日美術館、二〇二四年)、「COLLECTION +vol.1 まなざしのあいのり 土地の声を聞く、探る、写す」(石神の丘美術館、二〇二四年)、「IMAをうつす7人」(岩手県立美術館、二〇二三年)、「地つづきの輪郭」(セゾン現代美術館、二〇二二年)、「日常をととのえる展」(はじまりの美術館、二〇二二年)など。主な著書に『ツキノワ木彫り熊ノート』、『松本生まれの木彫り熊』がある。

是恒さくら(これつね・さくら)
アーティスト。国内外各地で人と鯨の関わりを尋ね、リトルプレス (小冊子)や刺繍、造形作品として発表している。リトルプレス『ありふれたくじら』主宰。近年の主な展示に「開館20周年展 ナラティブの修復」(せんだいメディアテーク、二〇二一年)、「NITTAN ART FILE4:土地の記憶~結晶化する表象」(苫小牧市美術博物館、二〇二二年)、「VOCA展 2022」(上野の森美術館)、「currents / undercurrents|いま、めくるめく流れは出会って」(国際芸術センター青森、二〇二四年)など。二〇二二〜二〇二三年、令和四年度文化庁新進芸術家海外研修制度・研修員としてノルウェーに滞在。
Web: www.sakurakoretsune.com
【twitter】@sakurakoretsune 【instagram】 @sakurakoretsune

今村信隆(いまむら・のぶたか)
北海道大学文学研究院准教授。博士(文学)。専門は美学・芸術学。札幌芸術の森美術館学芸員、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)准教授、甲南女子大学准教授等を経て、二〇二一年より現職。単著に『一七世紀フランスの絵画理論と絵画談義』(北海道大学出版会、二〇二一年)、編著に今村信隆・佐々木亨編『学芸員がミュージアムを変える! 公共文化施設の地域力』(水曜社、二〇二一年)、佐々木亨・今村信隆編『改訂新版 博物館経営論』(放送大学、二〇二三年)などがある。小学生の頃、鹿児島に住んでいた祖母が北海道旅行に来た際に、支笏湖畔で木彫り熊を買ってもらった。今も研究室に飾っている。

寺農織苑(てらの・しおん)
北海道大学大学院文学院 博物館学研究室 博士後期課程。修士(文学)。日本評価学会認定評価士。専門は博物館学・評価学。城陽市歴民俗資料館学芸員等を経て、二〇二一年より現在に至る。主要論文に「展示観覧前後における来館者の「ビデオゲーム・アーカイブ」に対する意識・態度変容への動機づけ︱ビデオゲームにまつわる書籍を題材にした展示会の事例から︱」(『人形玩具研究︱かたち・あそび︱』vol.34、二〇二四年)、"Do Japanese Museums Hold Video Game Consoles in Their Collections?--Based on the Results of a Survey of 1,751 Museums--"(『博物館学雑誌』第49巻第1号、二〇二三年)などがある。

尾崎織女(おさき・あやめ)
日本玩具博物館学芸員。一九九〇年より三〇余年にわたり、世界の玩具の調査や収集を担当。「世界のクリスマス展」や「雛人形展」をはじめ、館内外での展覧会と講座企画に従事する。専門分野は上巳や端午、七夕など節句にまつわる人形玩具文化。著書に『中国民衆玩具―日本玩具博物館コレクション』(大福書林、二〇二二年)、『世界の民芸玩具―日本玩具博物館コレクション』(大福書林、二〇二〇年)、『日本と世界おもしろ玩具図鑑』(共著、神戸新聞総合出版センター、二〇一七年)、『ままごと』(文溪堂、二〇一四年)などがある。

阿部麟太郎(あべ・りんたろう)
北海道大学文学院 博物館学研究室 博士後期課程。エコミュージアム研究(エコミュージアム思想史・エコミュージアム在野論)。主な論文に、阿部麟太郎・寺農織苑・石本万象(共同執筆・阿部が筆頭著者)「我が国の博物館学におけるケーススタディの傾向 〜主要3学会誌を対象とした分析を通じて〜」(『日本ミュージアム・マネージメント学会研究紀要』No.28、二〇二四年)、 「アンケート調査による日本エコミュージアムの現状把握」(『エコミュージアム研究』No.28、二〇二三)がある。

【インタビュー(掲載順)】
武永真(たけなが・しん) 
一九六三年、北海道釧路市生まれ。仙台藩白老元陣屋資料館長。一九八七年に厚岸町教育委員会学芸員となり、一九九三年より現館に勤務。二〇二五年には『白老町史〔平成史〕』の刊行を予定している。

山崎幸治(やまさき・こうじ) 
一九七五年、福岡県北九州市生まれ。北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授。専門は、文化人類学、博物館学。博物館資料の現代的意義とその活用に関心を持ち、アイヌ物質文化および博物館に関する研究をおこなう。先住民族の展示、アイヌ工芸の振興、海外アイヌ・コレクションについても研究をおこなう。著書に『もっと知りたいアイヌの美術』(二〇二二年、東京美術)などがある。

青沼千鶴(あおぬま・ちづる) 
八雲町で司法書士・行政書士として働き、「クマまつり」を企画・運営する。司法書士・行政書士事務所の隣に「木彫り熊と本の店 kodamado」を開く。https://kodamado.com/