国立歴史民俗博物館・工藤航平・箱崎真隆編『REKIHAKU 特集・蔵書をヒラク』(国立歴史民俗博物館)

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6月下旬刊行予定です。

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国立歴史民俗博物館・工藤航平・箱崎真隆編
『REKIHAKU 特集・蔵書をヒラク』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-86766-055-3 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信


国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

そもそも蔵書とはなにか。例えば人の本棚からは何がわかるだろう?
古代から現代まで存在し、そして未来でも媒体や構築者層をより多様化させながらも、意味を持つまとまり、〝体系化された〈知〉の表象〟という姿を持つ、身近な存在「蔵書」を考えぬく。
「蔵書」から、人の〈知〉の形成・継承のプロセスは、どう解き明かすことができるのか。

例えば江戸時代には、身分を問わず一挙に蔵書を構築する層が拡大し、全国津々浦々に個性を持った蔵書が構築された。この時の〈知〉の形成は、個別具体的な問題との格闘から出発して、経験的に得られた即時的な生活の知恵を前提に、さまざまな情報や、書籍の主体的な読書により思想化し、為政者や知識人の言説や故事・古典の〈知〉によって自説を補強したり、昇華させたり、権威づけることが行われたことがわかっている。

また現代の資料整理や研究の場では、『国書総目録』の分類項目を適用したり、研究者オリジナルの項目設定がなされ、蔵書構築者の意図や価値観を踏まえていなかったことも多かったが、研究視角の広がりに合わせて、書籍を文書と同様に史料として扱い、地域の遺された多種多様な書籍に注目して、書籍がもつ社会的な影響力の解明や、読者・社会の変容を描く研究が行われるようになってきた。そんな研究の現状についても、本特集では言及する。

個人や組織に半ば身体化していると言っても過言ではない「蔵書」。
過去の蔵書について調べていくと、長い歴史のなかで築き上げた知的営為のあり方、人の織り成す知的営為の豊かさに気づくことができる。本特集では、その蔵書文化を考える研究の最前線をお届けする。
特集執筆は、工藤航平、小倉慈司、貫井裕恵、小池淳一、山中さゆり、小粥祐子、菅谷壽美子、竹原万雄、岡村龍男。

特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。

歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

●特集趣意文
 本特集では、皆さんにも身近な存在といえる〝蔵書〟について、特に、〈知〉(知識とも)の形成・蓄積・継承という視点から、その実態、成り立ち、機能、歴史に切り込むことで深掘りします。
蔵書を辞書で引くと、「書籍を所蔵すること。また、その書籍。」(『広辞苑』第七版)と説明されています。しかし、このような、単に書籍(書物とも)の集合体という現代的な既成概念だけで捉えてよいのでしょうか。あらためて蔵書を史料に基づいて実証的に分析すると、長い歴史のなかで築き上げた知的営為のあり方、人の織り成す知的営為の豊かさに気づくことができます。
このような説明だと難しいと敬遠されるかもしれませんが、自身の趣味や興味関心など身近なことでも同じように考えることができます。何かに取り組んだり、調べたりする際、さまざまな情報を収集し、比較したり、取捨選択して自分なりに結果(=〈知〉)を導き出すと思います。そして、それら収集したさまざまな情報は、一段落するまで一つにまとめにして管理しておくと思います。
 簡単に言うと、このような〈知〉を生み出すなかでかたちづくられた、さまざまな情報からなる〈知〉の集積体を〝蔵書〟と考えます(情報≠知。情報を素材としたら、知は料理)。結果として、さまざまな媒体から構成されるものもあれば、大量の書籍のみで構成されるものもあり、バラエティに富みます。
このような蔵書のかたちは、古代から現代まで、そして未来においても、情報の媒体を多様化させ、蔵書の構築者=持ち主の層を拡大させながらも、基本的な理念やかたちは変わらないのではないでしょうか。
 本書タイトルである「ヒラク」という言葉は、さまざまな意味を持ちます。本特集では、まず蔵書そのものの実態を明らかにするため、記録史料や書籍類をもとに丁寧に読み解くこと【披く】。そして、古代から近現代まで、多分野の幅広い視角から〝蔵書〟のあらゆる面に迫ること【開く】。それらを通じて、「蔵書文化」という新たな学際的な研究テーマを提起すること【拓く】。さらに、このような新しい研究成果を紹介することで、読者の皆さんの日々の生活が豊かになることに少しでも繋げること【啓く】。これら四つの意味が込められています。
 各論稿・コラムの位置づけについては最初の「蔵書文化ことはじめ」で触れますので、本特集を通じて蔵書文化の広がりや奥深さを実感していただければと思います。


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【編者紹介】

国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

工藤航平(くどう・こうへい)

国立歴史民俗博物館准教授(日本近世史、地域文化史) 【著書・論文】『近世蔵書文化論―地域〈知〉の形成と社会』(勉誠出版、2017年)、「北海道所在の民間アーカイブズの特質―分割された「移住持込文書」の伝来と意義」(国文学研究資料館編『社会変容と民間アーカイブズ』勉誠出版、2017年) 【関心事】適切な資料管理のための学問的追究と研究室の現状との乖離をいかに解消するか

箱崎真隆(はこざき・まさたか)

国立歴史民俗博物館准教授(年輪年代学) 【著書・論文】箱崎真隆ほか「第九章 酸素同位体比年輪年代法の開発」「第十章 酸素同位体比クロノロジーの時空間的拡大と応用」(中塚武監修『気候変動から読みなおす日本史』2 古気候の復元と年代論の構築、臨川書店、2021年)、Hakozaki M, Miyake F, Nakamura T, Kimura K, Masuda K, Okuno M, Verification of the annual dating of the 10th century Baitoushan Volcano eruption based on an AD 774-775 carbon-14 spike, Radiocarbon, 60(1), pp261-268, (2018) 【趣味・特技】筋トレ、カメラ


【目次】

特集・蔵書をヒラク

1 人はなぜ他人の本棚をのぞきたい衝動に駆られるのか
蔵書文化ことはじめ
(工藤航平)

2 古代の蔵書を考える手がかり●COLUMN
古代天皇の宝庫──国家の宝物と天皇の宝物と
(小倉慈司)

3 中世の「知」の体系はこうして作られた
中世鎌倉武家と寺家のアーカイブズ
──金沢文庫・称名寺をてがかりに

(貫井裕恵)

4 生活のなかの書物・蔵書から民俗文化について考える
書物と民俗──地域における蔵書をめぐって
(小池淳一)

5 書箱からさぐる「知のありよう」●COLUMN
松代藩真田家の本箱
(山中さゆり)

6 江戸時代初期に「書院造」が完成するまで
日本住宅における「知を形成する空間」
(小粥祐子)

7 「日本間だと、すぐに横になってしまう」●COLUMN
池波正太郎の書斎
(菅谷壽美子)

8 書籍は他所に残されている可能性が高い=希少価値が低い?
旧家に伝来した書籍保存の課題
(竹原万雄)

9 蔵書を地域の人びとの営みがわかる資料としてとらえ直す
「羽田八幡宮文庫旧蔵資料」の郷土資料としての再構築
(岡村龍男)

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たかが歴史 されど歴史
千年の赤──蘇芳とブラジルボク(島津美子)

博物館マンガ 第11回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館

収蔵庫ってどんなところ?(鷹取ゆう)

石出奈々子のれきはく!探検 第11回
割れて、溶けて、氷期の森(石出奈々子)

フィールド紀行
加耶の史跡を探訪する
第2回 金官加耶と新羅のはざまの地、釜山
(高田貫太)

誌上博物館 歴博のイッピン
「誓詞帳」にみる気吹舎門人の歴史意識
「平田篤胤関係資料」の世界
(天野真志)

歴史研究フロントライン
福島県猪苗代湖周辺の先史時代人類活動の研究
(工藤雄一郎)

EXHIBITION 歴博への招待状
特集展示「幕末の外交官―幕臣柴田剛中とその資料―」
(樋口雄彦)

SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
巨大津波の将来予測は可能か? 地質・歴史記録の挑戦
(篠崎鉄哉)

歴史デジタルアーカイブ事始め 第10回
石川県立図書館 SHOSHO
(橋本雄太)
 
くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の朝顔」のご案内

博物館のある街
茨城県土浦市
上高津貝塚ふるさと歴史の広場
土浦の二つのサイトミュージアム
(一木絵理)

くらしの由来記
水無月と「夏越ごはん」(川村清志)

研究のひとしずく
年輪から読む人と木の歴史
第1回●ご神木の秘密
(箱崎真隆)

海外の日本研究から
ルーセルはどのような紙を使用したのか
──子供の時間、夏の夕方、パーソンズ・グリーン
(カーラ•レネ•サレム)

歴博友の会 会員募集
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