佐々木孝浩『日本古典書誌学論 新訂版』(文学通信)

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6月上旬刊行予定です。

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佐々木孝浩『日本古典書誌学論 新訂版』(文学通信)
ISBN978-4-86766-088-1 C0095
A5判・並製・568頁
定価:本体3,200円(税別)

書誌学は、文学作品を読み解くため何の役に立つのか。書誌学とは何か。
古典を理解するには、それを保存する書物をも知る必要がある。
書物との対話の方法を鮮やかに示し、第39回角川源義賞【文学研究部門】を受賞した、名著の新訂版。

巻物や冊子といった書物の形態や装訂にはヒエラルキーがあり、作品内容の「格」と深く結びついている。漢字・片仮名・平仮名の使い分けと書物の製作にも相関性があり、それを見抜いた上で作品を読み解いていかなければならない。
既存の文学研究では明らかにできなかった「読み」を示す、古くて新しい書誌学の具体的活用法!

新訂版刊行にあたっては、初版を訂正したほか、書誌学用語・人名・作品名を中心にルビを多く振り、初学者にも配慮した作りになっています。

【本書にまとめた論文は、「書誌学研究は文学研究において何の役に立つのか」という、世に珍しい書誌学の研究所に所属し、古典籍に囲まれながら書誌学の講義を二十年続けてきた自分にとっての、大きな命題に対する答えとして書いてきたものである。......書誌学は文学研究の基礎を固める学問である、これを疎かにした研究を行うと永遠に真実に辿り着けないのである。既存の文学研究に何が足りなかったのか、そのことを考えることが、書誌学を役立たせる方法をはっきりと教えてくれたのである。】......「あとがき」より
【内容を深く検討するためには、まずその本文の器たる書物の書誌的な情報を抽出し、それを活かしてその本文の性格や価値を確定した上で、研究に用いるように心掛けることが大切であることを明らかにできたものと確信する。これを行うことによって、誤りが少ないより本格的で深い研究が可能となるのである。......基礎的にして即物的でもあるこの研究方法の有効性は、考察を重ねても揺らぐことはないはずである。】......「おわりに――本書で明らかにしたこと――」より

「定説との戦い〜「大島本源氏物語」問題と書誌学」★佐々木孝浩

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【著者紹介】

佐々木孝浩(ささき・たかひろ)

1962年2月山口県生まれ。
慶應義塾大学文学部卒業。同大学大学院博士課程中退。博士(学術)。
国文学研究資料館研究情報部助手を経て、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫に勤務。現在教授。前文庫長。
専門は日本書誌学および中世和歌文学。

著書に、『古今集注釈書影印叢刊1 僻案抄』(勉誠出版、2008)、『歌論歌学集成 第11巻』(共著、三弥井書店、2009)、『日本の書と紙―古筆手鑑『かたばみ帖』の世界』(共編著、三弥井書店、2012)、『芳賀矢一 「国文学」の誕生(近代「国文学」の肖像第1巻)』(岩波書店、2021)など、論文に、「六条藤家から九条家へ―人麿影と大嘗会和歌―」(『藝文研究』第53号、1988・7)、「『とはずがたり』の人麿影供―二条の血統意識と六条有房の通光影供をめぐって―」(『国語と国文学』第70巻7号、1993・7)、「後鳥羽院と恋歌―和歌と信仰の関係をめぐって―」(『明月記研究』第10号、2005・12)、「中世歌合諸本の研究(八)―『歌合 建保三年六月二日』について・附校本―」(『斯道文庫論集』第40輯、2006・2)、「家集としての『慕帰絵詞』―巻五第三段の歌会場面存在の意味について―」(『中世と物語と絵画』竹林舎、2013・5)、「出来の悪い古活字版―慶長元和頃刊『新古今和歌集』の性格をめぐって―」(『斯道文庫論集』第48輯、2014・2)、「断片の集積体―「古筆手鑑」という存在―」(『集と断片 類聚と編纂の日本文化』勉誠出版、2014・6)、「後嵯峨院歌壇の再検討―『亀山殿五首歌合』を中心にして―」(『日本文学研究ジャーナル』創刊号、2017・3)、「飯沼山圓福寺蔵 源氏物語「まほろし」帖―解題・影印・翻刻―」(『斯道文庫論集』第53輯、2019・2)、「斯道文庫蔵吉田小五郎旧蔵『明朝紫硯』について」(『斯道文庫論集』第58輯、2024・2)などがある。

【目次】

はじめに

序編

第一章 日本古典書誌学論序説
はじめに
一 和本の装訂の種類
 ①巻小装 ②折本 ③粘葉装 ④綴葉装 ⑤袋綴
二 装訂と作品の関係
 ①巻小装 ②折本 ③粘葉装 ④綴葉装 ⑤袋綴
三 装訂の格と改装
おわりに

第二章 日本語の文字種と書物の関係について
はじめに
一 日本語の文字の種類
二 文字種と装訂の関係
三 文字種と版式の関係
おわりに

第一編 巻子装と冊子本

第一章 冊子本の外題位置をめぐって
はじめに
一 書誌学文献における題簽位置の記述
二 入木道伝書における題簽位置の記述
三 歌書の古写本にみる外題の位置
四 物語の古写本にみる外題の位置
五 外題位置の違いが意味すること
おわりに

第二章 絵巻物と絵草子―挿絵と装訂の関係について―
はじめに
一 巻子装と物語
二 絵巻物という存在
三 絵入り本という存在
四 絵入冊子本の登場
おわりに

第二編 巻子装と歌書・連歌書

第一章 勅撰和歌集と巻子装
はじめに
一 日本における巻子装
 ア巻子装の日本伝来 イ巻子装の地位
二 巻子装と勅撰和歌集
 ア勅撰集と巻子本の関係 イ勅撰集奏覧本の姿
三 勅撰集奏覧本の実態
 A金葉集(三奏本)・詞花集 B千載集 C新古今集 D新勅撰集 E続古今集 F風雅集 G新千載集 H新続古今集
四 奏覧本の清書者
五 現存する奏覧本
 ア『風雅集』竟宴本 イ『新続古今集』中書本・再清書本 ウ伝為家筆『続後撰集』切
エ伝為世筆『新後撰集』・『続千載集』切 オその他の巻子本切
六 天皇周辺の巻子本
おわりに

第二章 勅撰和歌集の面影―『新撰菟玖波集』の巻子装本をめぐって―
はじめに
一 『新撰菟玖波集』の巻子装
二 『新撰菟玖波集』成立に纏わる伝本
 ア草案本 イ中書本 ウ奏覧本
三 奏覧本の可能性の書誌的検討
四 奏覧本の可能性の本文的検討
おわりに
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵『新撰菟玖波集』存巻一【翻刻】

第三章 巻子装であること―早稲田大学図書館蔵『新撰菟玖波集〔政弘句抄出〕』をめぐって―
はじめに
一 もう一つの『新撰菟玖波集』巻子本
二 『新撰菟玖波集〔政弘句抄出〕』の書式
三 その本文
四 その成立過程
おわりに
早稲田大学図書館蔵『新撰菟玖波集』一軸【翻刻】

第三編 源氏物語と書誌学

第一章 「大島本源氏物語」の書誌学的研究
はじめに
一 従来の学説
二 従来説への疑問
三 問題点の再検討
四 大島本の奥書
五 大島本の親本
六 藤本孝一氏説の再検討
 ア若紫末尾の四行 イ柏木巻末の問題
おわりに

第二章 二つの「定家本源氏物語」の再検討―「大島本」という窓から二種の奥入に及ぶ―
はじめに
一 定家自筆本と奥入残存本文の関係
二 六半定家本の特徴
三 六半定家本の書写時期
四 四半定家本の特徴
五 四半本と青表紙
おわりに

第三章 「大島本源氏物語」続考―「関屋」冊奥書をめぐって―
はじめに
一 「大島本」解釈の問題点
二 「関屋」奥書の解釈
三 大島本「関屋」冊の本文
四 大島本「関屋」冊の書き入れ
おわりに

第四編 平家物語と書誌学

第一章 書物としての平家物語
はじめに
一 室町時代以前の平家物語写本
 『平家物語』古写本の略書誌一覧
二 『平家物語』写本の形態的特徴
三 『平家物語』内題のあり方
四 その他の特徴
おわりに

第二章 巻子装の平家物語―「長門切」についての書誌学的考察―
はじめに
一 「長門切」の基礎情報
二 「長門切本」が巻子装であること
三 「長門切本」の大きさと界線の問題
四 「長門切本」の書風の問題
五 「長門切本」は絵巻詞書か
おわりに

第三章 「屋代本平家物語」の書誌学的再検討
はじめに
一 書誌事項の再確認
二 書誌事項の再検討
三 屋代本の書写時期の検討
四 屋代本の補写の問題
おわりに

第五編 古典文学と書誌学

第一章 定家本としての枕草子
はじめに
一 三巻本枕草子の呼称の問題
二 安貞二年奥書の記主の問題
三 安貞二年奥書の再確認
四 定家本としての特徴
五 定家本の受容
六 定家本の抄出本
七 定家本の流布の問題
おわりに

第二章 書物としての『枕草子抜書』
はじめに
一 研究史と伝本
二 伝本の書誌情報
三 伝本の関係
四 連歌書としての性格
おわりに

第三章 書物としての歴史物語
はじめに
一 歴史物語古写本の書誌情報
 A栄花物語 B大鏡 C今鏡 D水鏡 E増鏡
二 歴史物語の書物としての特徴
三 歴史物語に対する当時のジャンル意識
おわりに

第四章 室町期東国武士が書写した八代集―韓国国立中央図書館蔵・雲岑筆『古今和歌集』をめぐって―
はじめに
一 韓国国立中央図書館蔵の『古今和歌集』
二 韓国国立中央図書館蔵の『拾遺和歌集』
三 雲岑筆写本を求めて
四 雲岑筆『後撰集』・『後拾遺集』・『金葉集』
五 雲岑の素性
六 雲岑筆八代集の位置付け
おわりに

第五章 長門二宮忌宮大宮司竹中家の文芸―未詳家集断簡から見えてくるもの―
はじめに
一 室町期の断簡から見えてくるもの
二 竹中(武内)家の文芸活動
三 竹中家の和歌短冊
四 竹中家の歌道師範と書流
五 「大島本源氏物語」と竹中家
おわりに

おわりに―本書で明らかにしたこと―

初出一覧
あとがき
新訂版あとがき

索引(人名・書名)
英文(題目・要旨)