天野ひろみ『王朝物語における居住空間 物語の登場人物と住まい』(文学通信)

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3月上旬刊行予定です。

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天野ひろみ『王朝物語における居住空間 物語の登場人物と住まい』(文学通信)
ISBN978-4-86766-075-1 C0095
A5判・上製・288頁
定価:本体4,800円(税別)

王朝物語の居住空間とはどのようなものだったのか。貴族邸宅に存在する殿舎の特徴とは何なのか。

物語の舞台となっている"空間"は登場人物の呼称となったり、そこに住まう登場人物の特性をイメージ付けたりしている。殿舎は身分・性別・立場などによって相違していたが実態はどうだったのか。物語の貴族邸宅の全体を俯瞰できる書。

虚構である物語の用例のみならず、王朝期に記された古記録や歴史書に記された用例をも検討。建築史学面での平安時代の建築に関する研究も取り入れながら、王朝物語の登場人物と住まいを考える。

物語の文章からは貴族邸宅に存在する殿舎の個別の特徴をうかがうことができる。それらを説明する文章は、登場人物の性質や物語展開と密接に関わってくるものである。それは、物語作者から読者へ向けられた物語読解のためのヒントである。

第一部「女君たちの居住空間」では物語の女主人公の住まいについて考察、第二部はあまり注目されることのなかった「男君たちの居住空間」を考える。第三部「女房たちの居住空間」では、物語を陰で支える女房たちの住まいについて考え、第四部「子どもたちの居住空間」は「寝殿」とその家の子女たちとの関わりや、皇子女たちがどこで生活したかについて『源氏物語』の用例を中心に確認していく。

【平安時代の大貴族の住む邸宅は広大な敷地を持つ。物語はフィクションであるが、そこに登場する上級貴族の邸宅は、やはり実際の貴族の邸宅と同様の仕様・規模を持つものであったと思われる。しかし、そこに住まう物語のヒロインたちは自邸の広さを俯瞰したり、邸宅の隅々まで探索したりすることはできない。彼女たちの視界は狭く限定されたものだっただろう。広い邸宅に比して、ヒロインたちの行動範囲は限られている。その限られた中で女性たちは生き、その中で生活の楽しさを見出していたと思われる。そして、彼女たちの生きるその狭い空間はそのまま彼女たちの呼称となった。居住空間と呼称の深い関係に気付いてから、私は空間についてもっと深く理解したいと思うようになっていった。最初は正殿である寝殿について考察した。そして興味はその寝殿を取り巻く附属舎へと広がっていった。】......あとがきより

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【著者紹介】

天野ひろみ(あまの・ひろみ〈旧姓 水田〉)

1978年 兵庫県姫路市生まれ。
1999年 同志社女子大学短期大学部日本語日本文学科卒業。
2001年 立命館大学文学部文学科卒業。
2005年 神戸大学大学院文学研究科修士課程修了。
2010年 神戸大学大学院人文学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。
2010~2012年 神戸大学大学院人文学研究科非常勤講師。
2013~2024年 九州産業大学国際文化学部非常勤講師。

【目次】

凡例

序 章 王朝物語の居住空間
一、王朝物語における貴族の邸宅の様相
二、登場人物たちの居住空間
三、本書の構成

第一部 女君たちの居住空間

第一章 『源氏物語』を中心とした王朝物語における西の空間
はじめに
一、寝殿の西面について
二、物語の西の対
三、『源氏物語』の東の対
おわりに

第二章 王朝物語における「対」の居住者たち

はじめに
一、妻たち
二、母代わりの女房たち
三、引き取られた娘たち
四、引き継がれた「対の御方」のイメージ
おわりに

第二部 男君たちの居住空間

第一章 『源氏物語』の邸宅使用方法について―光源氏と匂宮の事例を中心に―
はじめに
一、青年光源氏の二条院使用方法
二、大臣光源氏の場合
三、匂宮の二条院使用方法
おわりに

第二章 王朝物語における男性の住まい
はじめに
一、男子の居所としての「曹司」
二、男子の居所としての「御方」
三、婿たちの空間
四、主人の居所としての「出居」
おわりに

第三部 女房たちの居住空間

第一章 王朝物語における渡殿の役割―恋愛発生の場として―
はじめに―「廊」と「渡殿」に関する諸説―
一、渡殿の位置
二、居住空間としての渡殿
三、恋愛空間としての渡殿
おわりに

第二章 『源氏物語』を中心とした王朝物語における北の空間
はじめに
一、北側の空間
二、北の対の機能
三、女房たちの空間としての北の対
四、『源氏物語』の北の対
おわりに

第三章 後宮の細殿―その特質と役割をめぐって―
はじめに―細殿とは何か―
一、後宮の細殿の特質
二、後宮の細殿の役割
三、物語における細殿女性の系譜―名のりをしない女性の場―
四、密会空間としての細殿
おわりに

第四章 王朝物語における台盤所―使用者と役割について―
はじめに
一、台盤所を使用する人々
二、台盤所の機能
三、台盤所を許された男性たち
四、男性と女房との交流空間として
五、台盤所の女房の身分
おわりに

第四部 子どもたちの居住空間

第一章 王朝物語の中の寝殿―子女たちとの関わりを中心に―
はじめに―主人と寝殿―
一、寝殿と娘との関わり①―独身の娘の場合―
二、寝殿と娘との関わり②―既婚の娘の場合―
三、寝殿と男子との関わり①―婿となった男子の場合―
四、寝殿と男子との関わり②―息子の場合―
おわりに―寝殿が担った役割―

第二章 王朝物語における皇子女たちの居住空間

はじめに
一、史上の皇子女の居住空間
二、物語の皇子女の居住空間①―『うつほ物語』の場合―
三、物語の皇子女の居住空間②―『源氏物語』桐壺帝の皇子女たちの場合―
四、物語の皇子女の居住空間③―『源氏物語』今上帝の皇子女たちの場合―
おわりに

初出一覧
あとがき
索引(人名索引、書名索引、邸宅名索引)