近藤瑞木『江戸の怪談 近世怪異文芸論考』(文学通信)

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9月上旬刊行予定です。

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近藤瑞木『江戸の怪談 近世怪異文芸論考』(文学通信)
ISBN978-4-86766-052-2 C0095
A5判・並製・464頁・
定価:本体2,800円(税別)

怪談は怪異への懐疑という逆境に耐え、鍛えられ、しぶとく生き続けた――。
最も怪談書の流行した18世紀。神秘への感受性はどのように醸成されていったのか。
江戸の怪談を新たに見出し、知られざるその世界を切り開く。

この時代のマイナーな怪談書類を作品論によって掘り起こし、再評価を試みる。またその中で、近世人の怪異観や近世怪談のこれまであまり論じられていない側面、例えば、儒家や神職の怪異観や、被害者意識の希薄な幽霊ばなし、浮世草子から草双紙へと引き継がれた怪談パロディの精神、宣伝素材としての怪談の機能など─に光を当て、近世怪談についての理解を深めていく。
百物語や化物振舞のような怪談イベントを開催し、種々のネットワークを通じてハナシを共有する近世の共同的な怪談文化について明らかにもしていく。

「死」を免れぬ存在である以上、人間は本来超越的な存在を希求する。
いまだ超自然的発想が迷信として撲滅されることも、さまざまな信仰習俗の絶える気配もないのは、人の心がそのような領域を必要としていると見るべきであろう。
神秘への感受性を、宗教の影響は受けながらも、より自由で、豊かに表現できるのが、文学(すなわち近世怪談)の醍醐味ではないか――。

最新の江戸怪談史がここに誕生!

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【著者紹介】
 
近藤瑞木
(こんどう・みずき)

1967年、神奈川県横浜市生。早稲田大学第一文学部文芸専攻卒。東京都立大学大学院人文科学研究科国文学専攻博士課程単位取得退学。博士号(文学・東京都立大学、2001年)取得。
現在は東京都立大学大学院日本文化論教室教授。専門は日本近世文学。編著に『初期江戸読本怪談集』(共編。国書刊行会、2000年)、『百鬼繚乱―江戸怪談・妖怪絵本集成』(国書刊行会、2002年)、『幕末明治百物語』(共編、国書刊行会、2009年)など。

【目次】

緒言

【一】近世「怪談」の研究
【二】本書の位置
【三】本書の構成
【四】ミスティシズムの文芸


第一部 近世怪談考

一章 近世合理主義と怪談の流行

【一】近世怪談の特性
【二】合理主義的思潮―怪異否定論の普及
【三】怪異肯定派の世界観―湛澄と大伴恭安
【四】荻生徂徠の不可知論と上田秋成の怪談
おわりに―「工夫しての幽霊」

二章 儒者の妖怪退治 近世怪談と儒家思想

はじめに
【一】「妖は徳に勝たず」と儒者の妖怪退治譚
【二】「怪異」の制御

三章 往生際の悪い死体 執着譚と蘇生譚の境界

はじめに
【一】実録的「蘇り譚」
【二】「是よみがへるにはあらざる事」
【三】臨終行儀書の姿勢
【四】蘇生者の殺害―『伽婢子』と『雪窓夜話』
【五】西鶴の「蘇れない」蘇生談  おわりに

四章 鷺水の時間意識 『御伽百物語』の「過去」と「現在」

はじめに
【一】名井の由緒異伝
【二】大蔵流宗家の神話
【三】両足院開祖秘話
【四】京都の浮世草子

五章 「滑稽怪談」の潮流 草双紙に於ける浮世草子『怪談御伽桜』の享受

はじめに―『怪談御伽桜』と江戸の草双紙
【一】『しやうのばけ』
【二】『模文画今怪談』
【三】『御存之化物』
【四】上方怪談の好笑性
【五】滑稽怪談の潮流

六章 鐘撞の娘轆轤首 近世的妖怪とその小説

はじめに
【一】鐘撞の巷説の背景
【二】カネの恨み
【三】戯作に見る鐘撞の巷説
【四】轆轤首詐欺譚の系譜
【五】前期読本『奇談玉婦伝』、『奇伝新話』
おわりに―妖怪は人が作る

七章 茶碗児の化物 興福寺七不思議

はじめに
【一】東花坊のからかさ小僧
【二】大鳥居の朱盆
【三】水屋の小豆とぎ
【四】元興寺の鬼
【五】光林院の茶碗児


第二部 怪談仲間とハナシの共同体

一章 玉華子と静観房 怪談・談義本作者たちの交流

はじめに
【一】好阿江戸人説について
【二】玉華子と静話
【三】『花実御伽硯』と『諸州奇事談』―兄弟関係にある怪談書

二章 町奉行と講釈師 東随舎栗原幸十郎の活動

はじめに
【一】東随舎と栗原幸十郎
【二】東随舎の事跡(1 講釈と相学/2 東随舎の交友と情報収集)
【三】東随舎の作品(1 中村瑶池堂/2 舌耕的題材/3 巷説から読本へ)
おわりに

三章 捏造される物語 噂ばなしと近世中期小説

はじめに
【一】見世物と捏造怪談
【二】怪談による広告
【三】自己宣伝怪談
おわりに

四章 化物振舞 松平南海侯の化物道楽

はじめに
【一】化物振舞説話の展開
【二】「幽霊」に故人を偲ぶ
【三】宗衍と椿園
おわりに

五章 神職者たちの憑霊譚 『事実証談』の世界

はじめに
【一】『事実証談』とその成立背景(1 書誌/2 著者・校正者と成立背景)
【二】神職者のネットワーク
【三】神霊譚と人霊譚(1 祟る神霊/2 祭祀を乞う死霊)
【四】神職、国学者の幽霊ばなし
おわりに

六章 「百物語」断章

【一】百座会
【二】『黒甜瑣語』の「百灯物語」
【三】月待・日待・庚申待の怪談会
【四】最終話の重要性
【五】理髪師と百物語
【六】細木香以と百物語
【七】彫師山本信司
【八】怪を語れば怪至る―百物語の現場性


第三部 妖怪絵本と黄表紙怪談集

一章 近世妖怪画の技法 「見えない世界」をいかに描くか

はじめに
【一】おぼろに描く
【二】間接的に描く
【三】二次元を越える
【四】描かずに描く
おわりに

二章 黄表紙怪談集の諸相 『御伽百物語』、『怪談夜行』、『勇士怪談話』、『怪談奇発情』

はじめに
【一】『御伽百物語』と『諸国百物語』、『新説百物語』
【二】『怪談夜行』と『諸国百物語』、『怪談楸笊』、『怪談国土産』(1 『怪談夜行』の典拠と図案/2 禿箒子関与の読本怪談集『怪談国土産』、『夭怪奇変』について)
【三】『勇士怪談話』と『伽婢子』
【四】『怪談奇発情』と『太平百物語』、『怪異前席夜話』
おわりに

三章 怪武家物の草双紙 『武家物奇談』を読む

【一】化物と武士
【二】『武家物奇談』
【三】化物本と絵手本

四章 石燕妖怪画の風趣 『今昔百鬼拾遺』私注

はじめに
【一】「ことば」の妖怪(1 泥田坊と古庫裏婆/2 蛇骨婆と白粉婆/3 機尋と蛇帯/4 鬼一口)
【二】石燕妖怪画の「雅」と「俗」(1 青行灯/2 あやかし/3 煙々羅/4 雨女/5 小袖の手)
おわりに

五章 石燕妖怪画私注

はじめに
【一】火前坊と百々目鬼
【二】毛羽毛現
【三】狂骨
【四】大禿と滝霊王
おわりに


第四部 読本怪談集の世界

一章 読本怪談集の展開

はじめに
【一】寛延以降、宝暦・明和期
【二】安永・天明期
【三】寛政以降
おわりに

二章 『老媼茶話』の転変 写本から刊本へ

はじめに
【一】『老媼茶話』から『新編奇怪談』へ
【二】所収説話の対照
【三】『新編奇怪談』の編集処理
【四】堀主水の怪談と会津騒動
【五】『新編奇怪談』から『古今奇談紫双紙』へ
【六】『紫双紙』改題と再版の背景
おわりに

三章 『耵聹私記』素材考 初期江戸読本史の一齣

はじめに
【一】先行研究と書誌について
【二】白話小説翻案系怪談としての『耵聹私記』
【三】「侠夫奸智刑斃」と「智恵有殿」
【四】「斬二蝮蛇一医レ酔レ胾」と蛇食いの説話
【五】「撒二奇石一免二霆災一」と木内石亭
おわりに

四章 『警世通話』と明清小説―『娯目醒心編』、『姑妄聴之』、『獪園』

はじめに
【一】書誌と序文について
【二】「儒士の冥府を蔑如するを弁ずる話」と『娯目醒心編』
【三】「荻原左源次が妻妾骸をかへし話」と『姑妄聴之』
【四】「異仙来て井中に酒湧て酒匂の駅と云話」と『獪園』
【五】和製典拠に拠った三篇について  おわりに

五章 『(実説)妖怪新百話』の方法 「実話」化された読本

はじめに
【一】『(実説)妖怪新百話』の典拠
【二】『文芸倶楽部』「日本妖怪実譚」からの記事流用
【三】読本怪談書からの説話流用
【四】「実話」の方法
おわりに

初出一覧
あとがき

索引(人名・書名を中心に)