シュミット堀佐知編『なんで日本研究するの?』(文学通信)

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2023年10月下旬刊行予定です。

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シュミット堀佐知編『なんで日本研究するの?』(文学通信)
ISBN978-4-86766-019-5 C0036
A5判・並製・304頁
定価:本体2,400円(税別)

9人の日本研究者たちが「なんで日本研究するの?」という問いに答える。
第1部は「言葉の壁・方法論の谷・技術という橋」。人文学研究における英語の有用性と、人文学研究者が英語という「言語の壁」を乗り越えるためのヒントが多数含まれる。第2部は「エンパワーメントとしての知の創造」。知の創造は、社会的弱者にとってのエンパワーメントになり得るのだ。第3部「周辺的なものに光をあてる」は前近代日本の文化が決して現代社会と切り離されてはいないということを気づかせる。第4部「日本とアメリカのあわいで」は、日本とアメリカのあわいに佇み、2つの文化と言語の間で揺れ動く自己について省察がふくまれる。
日米アカデミアの間にそびえる、言葉・文化・政治の壁を跳び越えるために。オープンな対話の未来のために。これからの日本研究のための重要な書。バイリンガル(日本語・英語)出版。
執筆は、シュミット堀佐知、佐々木孝浩、日比嘉高、江口啓子、マーク・ブックマン、セツ・シゲマツ、末松美咲、クリストファー・ローウィ、ディラン・ミギー。

「日本研究の国境を超えた新しいフィールドが形成され、次の章が今まさに開かれようとしている。意欲あるものはこの刺激的な瞬間に立ち会うべきである。この本のなかにも多くの裂け目がある。しかし、その裂け目からこそ、日本と日本をふくむ世界をリアルにとらえ直すまなざしが生み出されてくるのだ。」(紅野謙介)





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【編者紹介】

シュミット堀佐知 SCHMIDT-HORI, Sachi

ダートマス大学(米国)アジア社会文化言語学部准教授
著作にTales of Idolized Boys: Male-Male Love in Medieval Buddhist Narratives (University of Hawaiʻi Press, 2021)、 "Yoshitsune and the Gendered Transformations of Japan's Self-Image," The Journal of Japanese Studies 48, no. 1 (2022) 、"The Erotic Family: Structures and Narratives of Milk Kinship in Premodern Japanese Tales," The Journal of Asian Studies 80, no. 3 (2021) などがある。

【執筆者】
シュミット堀佐知 SCHMIDT-HORI, Sachi/佐々木孝浩 SASAKI, Takahiro/日比嘉高 HIBI, Yoshitaka/江口啓子 EGUCHI, Keiko/マーク・ブックマン BOOKMAN, Mark/末松美咲 SUEMATSU, Misaki/セツ・シゲマツ  SHIGEMATSU, Setsu/ディラン・ミギー MCGEE, Dylan/クリストファー・ローウィ LOWY, Christopher


【目次】

はじめに
●シュミット堀佐知

1.「日本研究」って何?
2.なんで『なんで日本研究するの?』なの?
3.本書の内容と構成

第1部 言葉の壁・方法論の谷・技術という橋

01 日本研究の本場は日本だけじゃない
私はなぜ海外に日本の書物文化を発信するのか
●佐々木孝浩
(慶応義塾大学・斯道文庫)

1.何故英語が必要なの? 
2.世界の日本研究との出会い
3.世界に向けて和本文化を発信 
4.MOOCという追い風 
5.これからのこと

02  先ず隗より始めよ
なんで、どうやって私は「英語でも」研究をするようになったのか
●日比嘉高
(名古屋大学)

1. 「なんで」英語でも研究しはじめたのか
2.「どうやって」英語で研究をするようになったのか
3.ロサンゼルス、2002年 
4. 英語で学会発表をする
5. 英語で書くこと、あるいは機械翻訳について
6. 日本文学研究のシンギュラリティ?

03  「いま」「ここ」の当たり前を問いなおす
私は「変」じゃない―私が日本研究する理由
●江口啓子
(豊田工業高等専門学校)

1. 「BLっていつからあるんだろう?」
2. 愛すべき室町時代のはみ出し者
3.海外における日本研究との出会い
4. おわりに

第2部 エンパワーメントとしての知の創造

04  バリアフリーな研究環境をつくる
アメリカ人障害者として日本で暮らすこと―複合的な障壁と非排他的な想像性
●マーク・ブックマン
(東京大学)
渡辺哲史 & シュミット堀佐知 訳

1. 障害がきっかけで出会った日本
2. 日本を通じて障害を発見する
3. 教育から実践へ
4. おわりに

05  アカデミアの暗黙の特権を批評する
白人性と日本研究
●セツ・シゲマツ
(カリフォルニア大学リバーサイド校)
シュミット堀佐知 訳

パートI:「白人性」と日本研究におけるその機能
1. 白人性と(非)西洋としての日本
2. 日本研究の形成
3. 搾取する権利としての言語能力
4. 白人による非西洋の解釈とその引用義務
パートII:「準白人」として共謀する日本人研究者たち
5. 白人性へのあこがれ=レイシズムをはらんだ愛+反黒人主義
6. 白人性の方法論:アカデミアのルール(支配/規則)
パートIII:何をすべきか
7. おわりに

第3部 周縁的なものに光をあてる

06  「古典」の固定観念を変える
世界とつながる日本古典文学―物語の継承と再創造から
●末松美咲
(名古屋学院大学)

1. 「日本古典文学」のイメージ
2. 物語の継承と再創造
3. 古典文学の記憶
4. 国際化社会のなかの日本古典文学 
5. 世界とつながる日本古典文学

07  文字という視点から見えてくるもの
テクストと物語をつなぐ日本文学
●クリストファー・ローウィ
(カーネギーメロン大学)
陳元鎬 & シュミット堀佐知 訳

1. すべての道の行く先は?
2. 文学? 言語学? それとも...?
3. 文字体系のアーキテクチャー
4. 書記日本語のアーキテクチャー
5. 抵抗としての文字:井上ひさしと『吉里吉里人』
6. 横山悠太とバイスクリプタル・アイデンティティ
7. 結論

第4部 日本とアメリカのあわいで

08  アングロ・アメリカン・フェミニズムよ、さようなら
なんでアメリカで日本古典文学研究するの?
●シュミット堀佐知
(ダートマス大学)

1. はじめに
2. 教育と研究のモチベーション
3. フェミニズムは誰のため?
4. アメリカ社会の性規範
5. おわりに

09  微妙に場違いな自分を肯定してくれるもの
根無し草たちの日本研究―知の大成としての書物・言語・国境の関係について
●ディラン・ミギー
(名古屋大学)
ジェイソン・セイバー & シュミット堀佐知 訳

1. 「根無し草」という感覚
2. 壁の中の別世界
3. 図書館と「!」事件と根無し草感
4. 結論:日本文学はどのように世界に伝わったか

おわりに
●シュミット堀佐知

Preface
Sachi Schmidt-Hori

1. What is "Japan Studies"?
2. Why Why Study Japan?
3. Contents and Structure of Why Study Japan?


Part 1
The Linguistic Barrier, the Methodological Gulf, and the Technologies to Bridge the Gaps

01  Envisioning Global Japan Studies
Why I Share Japanese Book Culture with the World
Takahiro Sasaki (Shidō Bunko, Keiō University)
Translated by Yuanhao Chen & Emma Cool

1. Why is English Necessary?
2. Encountering Japan Studies in the World
3. Disseminating Japanese Book Culture to the World
4. A Tailwind Called MOOC
5. From Now on

02  Little Things Make Big Things Happen
How, of All Things, I Came to Use English in My Academic Work: Reasons and Methods
Yoshitaka Hibi (Nagoya University)
Translated by James Dorsey

1. Why I Began to Incorporate English into My Academic Work
2. How I Began to Use English in My Academic Work
3. Los Angeles, 2002
4. Conference Presentations in English
5. Writing in English and the Matter of Machine Translation
6. Singularity in Japanese Literary Studies

03  Challenging the Myopia of "Here" and "Now"
I Am not Strange: The Reason I Study Japan
Keiko Eguchi (National Institute of Technology, Toyota College)
Translated by Rhiannon Liou & Sachi Schmidt-Hori

1. When Did BL Begin?
2. Lovable Outcasts of the Muromachi Period
3. Encounters with Japan Research Overseas
4. Conclusion

Part2
The Creation of Knowledge as Empowerment

04  Imagining Barrier-Free Japan Studies
My Life as a Disabled American in Japan:Intersectional Barriers and Inclusive Imaginaries
Mark Bookman (Tokyo University)

1. Discovering Japan through Disability
2. Discovering Disability through Japan
3. Putting Pedagogy into Practice
4. Concluding Remarks

05  Critiquing the Unspoken Privileges within Academia
Whiteness and Japan Studies
Setsu Shigematsu (University of California, Riverside)

Part I: Whiteness and Its Function in Japan Studies
1. Whiteness and the (Non)West Japan
2. The Formation of Japan Studies
3. Linguistic Skills as Entitlement to Extract
4. White Interpretation and Compulsory Citation
Part II: Japanese as White-Adjacent‌ in This Dynamic of Complicity
5. Akogare for Whiteness as Racist Love & Anti-Black Racism
6. Methodologies of Whiteness: Rules (of) the Academic Game
Part III: What Is to Be Done?
7. Conclusion

Part3
Illuminating the Peripheries

06  Let's Demystify "Classical Literature"
Connecting Classical Japanese Literature to the World: Tales Retold and Reinvented
Misaki Suematsu (Nagoya Gakuin University)
Translated by Brian Bergstrom

1. The Image of "Classical Japanese Literature"
2. Tales Retold and Reinvented
3. Classical Literature as Inherited Memory
4. Classical Japanese Literature in International Society
5. Conclusion--Connecting Japanese Classical Literature to the World

07  Inter-scriptal Storytelling
Japanese Literature at the Intersection of Text and Narrative Content
Christopher Lowy (Carnegie Mellon University)

1. All Roads Lead to --? 
2. Literature or Linguistics, Neither or Both?
3. The Architecture of Script
4. The Architecture of the Japanese Script
5. Script as Resistance: Inoue Hisashi and Kirikirijin
6. Yokoyama Yūta and a Biscriptal Identity
7. Conclusion

Part4
Between the Two Cultures, Societies, and Languages

08  Good-bye, Anglo-American Feminism
Why Do I Study Classical Japanese Literature in the United States?
Sachi Schmidt-Hori (Dartmouth College)

1. Introduction
2. My Motivation for Teaching and Research
3. For Whom Does "Feminism" Exist?
4. Gender-Sexuality Standards in American Society
5. Conclusion

09  Belonging on the Margin
Neither Here nor There:
Libraries of Knowledge, in English, in Japan
Dylan McGee (Nagoya University)

1. Neither Here nor There
2. World within Walls
3. Library within a Library
4. Conclusion, or How Japanese Literature Was Introduced to the World

Epilogue
Sachi Schmidt-Hori

参考文献/References
プロフィール/Profiles

【プロフィール/Profiles】[執筆順]

佐々木孝浩
 SASAKI, Takahiro
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授
著書に『日本古典書誌学論』(笠間書院、2016)、『芳賀矢一 「国文学」の誕生』(岩波書店、2021)などがある。

日比嘉高 HIBI, Yoshitaka
名古屋大学大学院人文学研究科教授
著書に『プライヴァシーの誕生 モデル小説のトラブル史』(新曜社、2020)、『文学の歴史をどう書き直すのか 二〇世紀日本の小説・空間・メディア』(笠間書院、2016)、『ジャパニーズ・アメリカ 移民文学、出版文化、収容所』(新曜社、2014)などがある。

江口啓子 EGUCHI, Keiko
豊田工業高等専門学校准教授
著書に『室町時代の女装少年×姫:『ちごいま』物語絵巻の世界』(共著、笠間書院、2019)、『異性装 歴史の中の性の越境者たち』(共著、集英社インターナショナル、2023)、論文に「男装と変成男子:『新蔵人』絵巻に見る女人成仏の思想」(『中世文学』65号、2020)などがある。

マーク・ブックマン Mark Bookman
東京大学国際高等研究所東京カレッジポストドクトラル・フェロー
著書に"Can the Tokyo 2020 Paralympic Games Spur Change?" (The Japan Times, September 6, 2021), "The Coronavirus Crisis: Disability Politics and Activism in Contemporary Japan," Japan Focus: The Asia-Pacific Journal, 18 no. 3 (2020): p. 1-13.などがある。

セツ・シゲマツ  Setsu Shigematsu
カリフォルニア大学リバーサイド校准教授
著書に Scream from the Shadows: The Women's Liberation Movement in Japan (University of Minnesota Press, 2012)などがある。
監督兼プロデュース作品に Visions of Abolition (2012), Abolish ICE and All Border-Prisons (2023)がある。

末松美咲 SUEMATSU, Misaki
名古屋学院大学商学部専任講師
著書に『室町時代の女装少年×姫:『ちごいま』物語絵巻の世界』(共著、笠間書院、2019)、論文に「『児今参り』物語の再創造と室町期女房の文芸活動」(『説話文学研究』54号、2019)、「性空型『硯わり』と近世前期における物語の制作」(『伝承文学研究』70号、2021)などがある。

クリストファー・ローウィ Christopher Lowy
カーネギーメロン大学現代語学部助教授
論文に「『婉曲の踏み車』と変わらないイデオロギー−エイズ、サル痘、〈悪所〉のハッテン場を中心に」(『ユリイカ』2022年8月号)、「新型コロナ騒動から日本エイズ文学を考える」(『現代思想』2020年5月号)などがある。現在はひつじ書房のウェブマガジン「未草」にて今野真二氏と「日本語表記のアーキテクチャ/The Architecture of Written Japanese」を協同連載中。

ディラン・ミギー Dylan McGee
名古屋大学大学院人文学研究科准教授
著書にInterdisciplinary Edo (共著、Routledge, 2023), A Kamigata Anthology, Literature from Japan's Metropolitan Centers (共著、University of Hawaiʻi Press, 2020), A Tokyo Anthology: Literature from Japan's Modern Capital, 1850-1920 (共著, University of Hawaiʻi Press, 2017)などがある。

■ 訳者
シュミット堀佐知・渡辺哲史・Brian Bergstrom・Yuanhao Chen
Emma Cool・James Dorsey・Rhiannon Liou・Jason Saber