【連載】計算の歴史学とジェンダー―誰が計算をしていたのか?(前山和喜)
【はじめに】
「コンピュータの歴史」、といわれて多くの人が思い浮かべるのは、機械の性能発展史やそれを開発した人々を英雄伝的に語る口調の物語ではないでしょうか。しかしこのような歴史の陰で、コンピュータに関わっていた無名の人々が数多く存在していたこともまた事実です。
本連載では日本計算史を専門とする研究者・前山和喜が、日本におけるコンピュータの黎明期から成長期まで(1950年~1975年)を、計算機本体(コンピュータ)ではなく計算行為(コンピューティング)に着目しつつ、人とコンピュータの在り方、そしてこれらの歴史に内在していたジェンダー転換を、歴史学的なアプローチで読み解いていきます。
当時の雑誌記事やマニュアルなどに加え、機械のために書かれたコンピュータプログラムも史料として扱いながら、現在まで続く情報社会における価値観や世界観の広がりを捉えなおします。
【執筆者紹介】
前山和喜(まえやま・かずき)
専門は日本計算史。研究対象は日本における電子計算機の開発と導入と利用による社会の変容。工学院大学・関西大学大学院・日本科学未来館 科学コミュニケーター職を経て、現在は総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻(国立歴史民俗博物館で博士後期課程)。工学院大学 情報学部 非常勤講師・客員研究員。
【連載目次】
第一回:「コンピューティング」の歴史学
第二回:キーパンチャーと女性
第三回:情報処理技術の可能性と曖昧な専門性
第四回:計算を"する"から、電子計算機を"使う"へ
第五回:「みんな」のためのコンピュータ ~ゼロとイチの多様性~