説話文学会編『説話文学研究の海図 説話文学会六〇周年記念論集』(文学通信)
7月上旬刊行予定です。
説話文学会編『説話文学研究の海図 説話文学会六〇周年記念論集』(文学通信)
ISBN978-4-86766-056-0 C0095
A5判・並製・384頁
定価:本体3,200円(税別)
説話文学研究は、どのような経緯を経てどのような現状にあるのか、そして今後どのような未来に向かっていこうとしているのか。
六〇年の歴史の中で大きく方向性を変え、文学研究の中でも広く国際的・学際的方向に舵を取って進んできた、説話文学会。人文科学総体が危機を迎えているともいえる現在、その進路は果たして今後の指針となり得るのか。二〇二三年七月に開催された六〇周年記念大会を中心に、座談会やエッセイを加えて、それらを考える。
現在の説話文学研究は、「説話」という概念自体の拡大と共に、文学研究の学際化に伴って、美術史・宗教史等々との境界を越えつつある。その最前線の様相を荒木浩・伊藤聡・肥田路美の三氏により紹介。シンポジウムでは、中国の仏伝文学である『釈氏源流』をとりあげ、小峯和明・吉原浩人・山本聡美・河野貴美子の四氏に加え、コメンテーターとして張龍妹・李銘敬の二氏により国際的かつ学際的な研究課題に取り組む。ラウンドテーブルでは、本井牧子・牧野淳司・恋田知子・高橋悠介の四氏に、研究の現状や課題をお話いただいた。
座談会「説話研究の未来―一〇〇年後の研究はありうるか?」ではハルオ・シラネ、渡辺麻里子、陸晩霞、趙恩馤、小峯和明の各氏により語り合っていただき、ベテランから若手まで一四名によるエッセイも収録。
新たな資料や視点を拒むことなく、変化流動しつつも前進してきた説話文学会とその研究の、過去・現在・未来を照らす書。
執筆は、佐伯真一/荒木 浩/伊藤 聡/肥田路美/小峯和明/吉原浩人/山本聡美/河野貴美子/張 龍妹/李 銘敬/近本謙介/本井牧子/牧野淳司/恋田知子/高橋悠介/渡辺麻里子/陸 晩霞/趙 恩馤/ハルオ・シラネ/高橋 貢/阿部泰郎/伊東玉美/石川 透/齋藤真麻理/杉山和也/田中貴子/目黒将史/森 正人/阿部龍一/Ivo SMITS/琴 榮辰/高 陽/PHAM Le Huy。
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【編者紹介】
説話文学会
1962年創設。2022年に設立60周年を迎えた学会。近年は例会を年3回、大会を年1回開催している。学会誌『説話文学研究』を年1回刊行。
http://www.setsuwa.org/
【目次】
はじめに●佐伯真一
Ⅰ 講演会 説話の文学・美術・宗教
❶〈裏返しの仏伝〉という文学伝統─『源氏物語』再読と尊子出家譚から●荒木 浩
はじめに/一、『源氏物語』における仏伝の影響とその反転についての考察/二、今西祐一郎編注『源氏物語補作 山路の露・雲隠六帖 他二篇』「解説」摘記/三、仏伝のなぞりとしての『源氏物語』補作の世界/四、「みずから剃髪」した出家譚の具現--尊子内親王の場合/五、女性の「二段階出家」説と尊子内親王/六、前提となる勝浦論の再読が示唆すること
❷説話文学研究と宗教研究のはざまで●伊藤 聡
はじめに/一、説話文学研究の展開と宗教研究との関係/二、仏教・神道の秘説形成と説話/まとめ
❸仏教美術の物語表現法●肥田路美
はじめに/一、仏教美術初期の時間表現/二、敦煌石窟の摩訶薩埵太子本生図/三、『釈氏源流』挿絵に見る雲形モチーフ/四、敦煌石窟壁画に見る雲気モチーフ/五、雲気モチーフのはたらき/六、講経文に登場する雲/七、雲気モチーフと「変」「変相」「変文」/むすび
Ⅱ シンポジウム 説話の文学・美術・宗教─『釈氏源流』を軸に
❶仏伝文学としての『釈氏源流』●小峯和明
はじめに/一、東アジアの仏伝文学/二、『釈氏源流』の成立と展開/三、本文と挿絵の様相/四、『釈氏源流』の意義--附・新出伝本について
❷『釈氏源流』仏教東伝記事の歴史観と挿図の意味●吉原浩人
一、問題の所在/二、『釈氏源流』下巻第六一話までの出典とその仏教史観/三、『釈氏源流』下巻第六話・第七話をめぐって
❸造形語彙集としての『釈氏源流』─日本中世絵巻との接点を探る●山本聡美
はじめに/一、「釈迦堂縁起絵巻」における『釈氏源流』受容/二、「華厳宗祖師絵伝」義湘絵と『釈氏源流』/三、「華厳宗祖師絵伝」元暁絵と『釈氏源流』/四、少康伝と一遍伝/おわりに
❹『釈氏源流』を通してみる明代絵入り刊本の出版と流通●河野貴美子
一、『釈氏源流』刊本概観/二、正統元年重刊本(増上寺本)および圓道重刊本(早稲田本)/三、富岡鉄斎収集明代絵入り刊本/おわりに
コメンテーターより①『釈氏源流』の図像伝播・異時同図法・仏法と王法の関係について●張 龍妹
コメンテーターより②『釈氏源流』の編纂と版本について●李 銘敬
一、『成道記』『成道記註』との関連性について/二、『釈氏源流』の版本と早稲田大学所蔵本の位置づけ
説話文学会大会関連展示 説話の文学・美術・宗教:『釈氏源流』と仏伝展 出品目録
Ⅲ ラウンドテーブル 説話文学研究─つぎの六〇年に向けて
趣意文●近本謙介
❶説話集研究の現状と今後●本井牧子
一、説話集研究の現状--五〇周年記念事業とそれ以降/二、「架橋」の試み--書籍・シンポジウムから/三、説話集・説話の読みを示す--注釈的研究の可能性
❷軍記物語研究と説話文学研究●牧野淳司
一、軍記・平家と説話/二、その後の歩み/三、問題点のいくつか/四、これからどうするか
❸説話と絵画をめぐる研究の動向と展望●恋田知子
一、説話文学会の絵画をめぐる研究動向/二、近年の研究動向/三、現状の課題と展望
❹説話の観点からみた能楽研究の動向と展望●高橋悠介
一、能・狂言と説話/二、演劇としての能の特徴と、説話の摂取/三、近年の作品研究上の問題提起や、新しい動向/四、能楽関係資料の公開や利便性/五、唱導や中世の宗教的知との関係で能を読み直す研究の可能性
司会者より●佐伯真一
Ⅳ 座談会 説話研究の未来─一〇〇年後の研究はありうるか?
●参加者
渡辺麻里子/陸 晩霞/趙 恩馤/ハルオ・シラネ
【オブザーバー】河野貴美子/【司会】小峯和明
説話研究の「今は昔」─動向概略
説話の三極論─「説話」の用例から探る
説話文学研究とは、何を研究するのか
結局何でも学んでおかないと説話研究というものはできない
古典文学研究はもう少し統合される必要がある
説話は語り直せる・書き直せる、歴史性のある重要な領域
近代の説話としての童話─古典文学の大衆化と説話の様相
説話が現われるまで─中国文学史の視座から考える
文学史の概念としての「説話文学」は解体必至か
説話はカノンではない─書き換えられる/られない話
注釈と説話の二面性
日本の「説話」に相当する東アジア用語は?
「説話」を世界の共通語として考える?
説話文学というジャンルを考える
物語と説話と文学史
説話とその研究を世界に拓く
Ⅴ エッセイ 説話文学会六〇周年に寄せて
説話文学会の設立時を回想して●高橋 貢
説話文学研究の可能性─過去・現在・未来の三世相、フィールドとテクスト●阿部泰郎
探し物と考え事─現代の注釈の場●伊東玉美
説話文学と絵画●石川 透
表象をつなぐ─画題と説話研究●齋藤真麻理
説話と変形菌の汎世界性を見つめて●杉山和也
古典を現代語訳する、ということ●田中貴子
〈枠〉を超えて拓かれる説話研究●目黒将史
方法論を携えて●森 正人
説話文学研究から学んだこと●阿部龍一
逸話的様式の寡黙な王朝文学─貴族説話集の機能を考える●イフォ・スミッツ
韓日説話に見る「左と右」「数字」「方位」の話●琴 榮辰
龍の説話学をめざして●高 陽
ベトナム説話文学世界の再発見と日本説話文学会の架け橋の存在●ファム・レ・フイ
説話文学会 例会・大会の記録(二〇一三~二〇二三)
あとがき●河野貴美子
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