東アジア恠異学会編『怪異から妖怪へ』(文学通信)

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12月下旬刊行予定です。

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東アジア恠異学会編『怪異から妖怪へ』(文学通信)
ISBN978-4-86766-072-0 C0021
B6判・並製・240頁
定価:本体1,700円(税別)

「妖怪」はなぜ生まれたか。「妖怪」の見かたが変わる!

人は何かに出会ったとき、それを「怪異」と認識し記録に残す。そういった記録されたことばを分析することを重視してきたのが怪異学であり、本書の編者、東アジア恠異学会(ひがしあじあかいいがっかい)である。

動物の異常行動や異常気象など、もとは現象だった「怪異」を起こしていた存在は、時の経過とともに姿形などの輪郭を得て、すこしずつ私たちが知る「妖怪」に変容してきた。

本書はそんな「妖怪」の来歴を丁寧に読み解くことで、より探究心を得、新たな専門知を学ぶことができる入門書であり、近年になり語られるようになった新しい存在、むかしは起きなかった異常な現象についても、怪異学の技法でどう論じていけばいいか、ヒントも得られる実践の書でもある。

第1部「怪異学総説」では、「怪異」と「神」、「妖怪」の基礎とその関係を論じ、第2部「妖怪列伝」では、独立したキャラクター「妖怪」の成り立ちを、鬼、白沢、天狗、鳴釜、河童、一目連、九尾狐、オサカベ、件、水子霊から見ていく。[特別寄稿]チョコレートを食べること(京極夏彦)収録!

執筆は、大江 篤、久禮旦雄、化野 燐、榎村寛之、佐々木聡、久留島元、木場貴俊、村上紀夫、佐野誠子、南郷晃子、笹方政紀、陳 宣聿、京極夏彦。

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【編者】

東アジア恠異学会(ひがしあじあかいいがっかい)

2001年(平成13)創設。「恠異」をキーワードとして、各分野からの研究者が集い、学際的な研究を続けている学術団体。代表は大江篤(園田学園女子大学教授)。
学会編著書として、『怪異学講義:王権・信仰・いとなみ』(勉誠出版、2021年)、『怪異学の地平』(臨川書店、2019年)、『怪異を媒介するもの』(アジア遊学187、勉誠出版、2015年)、『怪異学入門』(岩田書院、2012年)、『怪異学の可能性』(角川書店、2009年)など。お問い合わせは公式HP(http://kaiigakkai.jp/)まで。

【目次】

はじめに─神と怪(大江 篤)

「怪異」を研究する「東アジア恠異学会」とは/怪異学は、記録された語を、分析することを重視/「怪異」研究のキーワードは「媒介者」

○東アジア恠異学会のご案内

第1部 怪異学総説

[怪異とは何か、怪異学とはどういう学問なのか]
1 「怪異」と怪異学(大江 篤)

1 東アジア恠異学会と「怪異」/2 平安時代の「怪異」/3 神津島の噴火と「怪異」/4 新羅の外寇と「怪異」/おわりに

[不可視の存在が語り始めるとき]
2 神─その形成と展開(久禮旦雄)

1 神と祟/2 社と祭/3 卜占と祥瑞/4 託宣と怨霊─語りだす神と霊

[これまでとこれからの「怪異」と「妖怪」の関係]
3 妖怪(化野 燐)

1 いくつもの妖怪/2 現象から存在へ/3 これまでの「妖怪」/4 これからの「妖怪」

第2部 妖怪列伝─どのように成立したか

[「鬼」のイメージはどのように成立したのか]
1 鬼─『出雲国風土記』と日本古代の「鬼」(榎村寛之)

はじめに/1 『古事記』と『日本書紀』の「鬼」と「鬼状のもの」/2 『出雲国風土記』の「鬼」/3 『出雲国風土記』の「鬼」字の使われ方と「鬼」の本来の姿/4 鬼の具象化─九世紀の事例と比べて/おわりに

[神獣はどのように姿を変えていったのか]
2 白沢─俗化する神獣とその知識(佐々木聡)

はじめに/1 祥瑞から辟邪へ/2 さまざまな白沢の姿/3 白沢図の流布/4 白沢図画賛の意義とその影響

[「神」か「妖怪」か、時代ごとに移り変わる定義]
3 天狗─天変から信仰へ[久留島元]

1 天狗は神か/2 古代の天狗/3 天狗をまつる/4 天狗と修験/5 天狗と天道

[近世という情報社会の中で膨張する怪異]
4 鳴釜─俗信から科学、そして諧謔へ(佐々木聡)

はじめに/1 中国古代以来の祥瑞災異として/2 「自然の怪」から自然科学的理解へ/3 江戸時代の鳴釜神事

[室町から江戸時代まで、河童の歴史をたどる]
5 河童(木場貴俊)

はじめに/1 河童は生物/2 河童は研究対象/3 河童を描く/4 河童信仰

[情報発信により地域の神様から妖怪へ]
6 一目連─情報の連鎖と変容(村上紀夫)

はじめに/1 十七世紀文献に見える一目連/2 百科事典に掲載される/3 多度社の公式情報/4 香具師による便乗/5 一目連像の拡大

[祥瑞か、凶兆か、狐か、美女か]
7 九尾狐(佐野誠子)

1 祥瑞・凶兆であった九尾狐/2 美女(悪女)の狐/3 九尾狐と妖狐の結合/4 玉藻前の九尾化

[物語に貪欲な近世社会が「神」を消費する]
8 オサカベ(南郷晃子)

はじめに/1 姫路城のオサカベ姫/2 『観自在菩薩冥応集』の仕掛け/3 書状について/4 書状をめぐる人々/5 妖怪化するオサカベ/おわりに

[近世から近代以降まで、その特徴の変遷]
9 件(笹方政紀)

はじめに/1 「件」の文字による特徴/2 皮革にまつわる物語/3 予言をする性質/4 神、あるいは神使としての存在

[水子霊をめぐる言説とメディアのあり方]
10 水子霊─夭逝した胎児の霊はどこに現れ、誰に祟るか?(陳 宣聿)

はじめに/1 身の回りの災因と水子霊の創出/2 オカルトブームと水子霊の流布/3 ローカルの文脈で再生産された心霊スポット/おわりに

[特別寄稿]チョコレートを食べること(京極夏彦)

参考・引用資料
執筆者紹介

【執筆者紹介】(掲載順)

大江 篤 おおえ・あつし
園田学園女子大学学長・教授(日本古代史・日本民俗学)。著書に『日本古代の神と霊』(臨川書店、二〇〇七年)、『皇位継承の歴史と儀礼』(編著、臨川書店、二〇二〇年)など。

久禮旦雄 くれ・あさお
京都産業大学准教授(日本法制文化史)。著書に『元号―年号から読み解く日本史』(共著、文春新書、二〇一八年)、『元号読本―「大化」から「令和」まで全248年号の読み物事典』(共著、創元社、二〇一九年)など。

化野 燐 あだしの・りん
お化け好き、小説家。主な作品・論文に『人工憑霊蠱猫』シリーズ(講談社)、『考古探偵一法師全』シリーズ(KADOKAWA)、「妖怪百家争鳴 妖怪の分類・試論」(『怪』vol.12〜22、二〇〇一〜二〇〇六年、角川書店)、「「妖怪名彙」ができるまで」(東アジア恠異学会編『怪異を媒介するもの』アジア遊学一八七、二〇一五年、勉誠出版)など。

榎村寛之 えむら・ひろゆき
斎宮歴史博物館学芸員(王権・祭祀・怪異に関する事いろいろ)。著書に『女たちの平安後期―紫式部から源平までの200年』(中公新書、二〇二四年)、『律令天皇制祭祀と古代王権』(塙書房、二〇二〇年)など。

佐々木聡 ささき・さとし
金沢学院大学准教授(中国社会史、宗教文化史、書誌学)。論文に「中国歴代王朝における天文五行占書の編纂と禁書政策」(水口拓寿編『術数学研究の課題と方法』汲古書院、二〇二二年)、「通俗信仰と怪異―前近代中国の基層社会における災異受容史」(東アジア恠異学会編『怪異学講義』勉誠出版、二〇二一年)など。

久留島元 くるしま・はじめ
同志社大学嘱託講師(日本中世文学、説話。天狗説話と修験の関係)。著書・論文に『天狗説話考』(白澤社、二〇二三年)、「狐火伝承と俳諧」(『朱』六十二、二〇一九年)など。

木場貴俊 きば・たかとし
京都先端科学大学准教授(日本近世文化史)。著書・論文に『怪異をつくる―日本近世怪異文化史』(文学通信、二〇二〇年)、「近世怪異の展開と近代化」(『史潮』九十四、二〇二三年)など。

村上紀夫 むらかみ・のりお
奈良大学教授(日本文化史)。著書に『怪異と妖怪のメディア史―情報社会としての近世』(創元社、二〇二三年)、『近世京都寺社の文化史』(法藏館、二〇一九年)など。

佐野誠子 さの・せいこ
名古屋大学教授(中国仏教志怪)。著書に『怪を志す―六朝志怪の誕生と展開』(名古屋大学出版会、二〇二〇年)など。

南郷晃子 なんごう・こうこ
桃山学院大学准教授(近世の説話、伝承。特に怪異譚およびキリシタン説話)。著書・論文に『なぜ少年は聖剣を手にし、死神は歌い踊るのか―ポップカルチャーと神話を読み解く17の方法』(共編著、文学通信、二〇二四年)、「『老媼茶話』の魔術」(斎藤英喜編著『文学と魔術の饗宴・日本編』小鳥遊書房、二〇二四年)など。

笹方政紀 ささかた・まさき
東アジア恠異学会会員(見世物、化物屋敷等で使用される怪異・妖怪)。著書・論文に『予言獣大図鑑』(文学通信、二〇二三年)、「戦時に件(クダン)を語る訳―戦時流言に関する一考察」(『世間話研究』二十七、二〇一九年)など。

陳 宣聿 ちん・せんいつ
東京理科大学嘱託助教(宗教学)。著書に『「水子供養」の日台比較研究―死者救済儀礼の創造と再構築』(晃洋書房、二〇二三年)など。

京極夏彦 きょうごく・なつひこ
小説家、意匠家。一般社団法人日本推理作家協会監事。主な著書に『百鬼夜行』シリーズ(講談社)、『巷説百物語』シリーズ、『談』シリーズ(KADOKAWA)、『書楼弔堂』シリーズ(集英社)など。