呉 佩珍『太平洋を越える〈新しい女〉 田村俊子とジェンダー・人種・階級』(文学通信)

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12月下旬刊行予定です。

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呉 佩珍『太平洋を越える〈新しい女〉 田村俊子とジェンダー・人種・階級』(文学通信)
ISBN978-4-86766-073-7 C0095
A5判・並製・296頁
定価:本体3,500円(税別)

無国境、無国籍的な田村俊子の思想遍歴をたどる。
なぜ晩年の俊子は、中国の女性問題に尽力することになったか?
日本から北米へ、そして最終的に中国にわたった田村俊子の作品とその思想を、時系列に沿って分析し、そのなかに見えた田村俊子の「ジェンダー」「人種」「階級」言説の形成の軌跡を解明する。

俊子が取り組んだ〈ジェンダー〉問題は、当時、女性たちの社会進出とどのような関係にあったのか。作家・田村俊子は、なぜ日本を離れ、カナダのバンクーバーに赴いたのか。そして、一八年間の北米滞在を終え、日本に帰国した俊子は、なぜ、また日本を離れて中国に発ったのか。俊子は、海外でどのように活動し、どのような成果を達成したのであろうか。

第1部「ドメスティック・イデオロギーへの挑戦―田村俊子にみるジェンダー諸問題」、第2部「カナダのバンクーバーにおける思想的変遷―日系社会を描く作品群をめぐって」、第3部「インターナショナル・フェミニストの連携―上海時代の佐藤(田村)俊子と中国女性問題」と、全体を3部に分け追求していく。

【田村俊子は、日本から北米、そして中国へと移動し、それぞれの土地にさまざまな足跡を残した。このような俊子の半生を一言でいうなら、「コスモポリタン」田村(佐藤)俊子となろう。彼女はいかなる道程を辿って、ここに至ったのであろうか。】......「序章」より

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【著者紹介】

呉 佩珍(Wu Peizhen ご・はいちん)

1967年台湾生まれ。東呉大学日本語学系助教授を経て、現在国立政治大学台湾文学研究所教授。専門は、日本近代文学、日台比較文学。筑波大学地域研究研究科修士、シカゴ大学東アジア文明言語研究科修士。筑波大学文芸言語研究科博士課程修了、博士(学術)。

主な著書・論文は『福爾摩沙與扶桑的邂逅:日治時期台日文學與戲劇流變』(國立臺灣大學出版センター、2023年)、『帝国幻想と台湾:1871-1949』(共著、花鳥社、 2021年)、『真杉靜枝與殖民地台灣』(聯經出版、2013年)、「松本清張「或る『小倉日記』伝」と「両像・森鷗外」、そして知られぬ森鷗外の台湾体験」(『松本清張研究』二四号、2023年3月)、「女性解放と恋愛至上主義との間――大正・昭和期のコロンタイ言説の受容」『女性と闘争 雑誌「女人芸術」と一九三〇年前後の文化生産』(青弓社、2019年)など。

【目次】

凡例

序章
 1 まえがき
 2 作家・田村俊子の足跡
 3 先行研究
 4 問題意識と研究目的
 5 本書の構成

I ドメスティック・イデオロギーへの挑戦―田村俊子にみるジェンダーの諸問題

第1章 女学生世界=ノ・マンズ・ランド―田村俊子の『あきらめ』について
 1 はじめに
 2 女学生世界の形成
 3 女学生世界から自立の道へ
 4 女学生世界の崩壊
 5 おわりに

第2章 一九一〇年代の日本における「女性同性愛」言説―「青鞜」同人を中心に
 1 はじめに
 2 セックス・ジェンダー・セクシュアリティをめぐる「青鞜」同人周辺の言説
 3 少年同性愛のパロディ―平塚らいてうと尾竹紅吉
 4 おわりに

第3章 ドメスティック・イデオロギーからの脱出願望―田村俊子の〈書く女〉と〈演じる女〉について
 1 はじめに
 2 ドメスティック・イデオロギーからの逸脱者たち
 3 「女しか書けない女」と「女しか演じられない女」の戦略―女性作家と女優の登場
 4 植民地と海外へ脱出する願望の探求―『あきらめ』の三輪から『波』の花井豊子まで
 5 おわりに

II カナダのバンクーバーにおける思想的変遷―日系社会を描く作品群をめぐって

第4章 〈渡米熱〉〈堕落女学生〉と〈写婚妻〉―一八九〇年代後半の〈渡米熱〉と『大陸日報』にみる〈写婚妻〉像
 1 はじめに
 2 一八九〇年代後半の〈渡米熱〉と女子同伴の殖民政策
 3 もう一つの〈堕落女学生〉像―「女学生上がり」の写婚妻の表象
 4 〈女学生〉、 〈新しい女〉 そして〈写婚妻〉言説の形成とその相関性
 5 『大陸日報』 における俊子の婦女欄―〈写婚妻〉言説を中心に

第5章 ナショナル・アイデンティティとジェンダーの揺らぎ―佐藤俊子の日系二世を描く小説群にみる二重差別構造
 1 はじめに
 2 日系社会内部の「差別構造」の発見―日系二世のまなざしをとおして
 3 大和撫子か?New Womanか?―「カリホルニア物語」にみる二世女性のディレンマ
 4 おわりに

第6章 佐藤俊子の人種問題への認識と社会主義的立場―「小さき歩み」三部作を軸として
 1 はじめに
 2 同時代の人種問題への認識―ユージン・オニール、ポーリン・ジョンソンをめぐって
 3 無国境で超人種とされる「社会主義」―「小さき歩み」三部作をめぐって
 4 内包される反戦メッセージ―「小さき歩み」にみる反戦的立場の社会主義者たち
 5 おわりに

Ⅲ インターナショナル・フェミニストの連携―上海時代の佐藤(田村)俊子と中国女性問題

第7章 上海時代(一九四二―四五)佐藤(田村)俊子と中国女性作家・関露―中国語女性雑誌『女聲』をめぐって
 1 はじめに
 2 コスモポリタンとしての佐藤俊子の形成―カナダにおける国際女性労働運動の体験
 3 俊子と関露の「女性解放論」―『女聲』の評論欄をめぐって
 4 第二回大東亜文学者大会にみる佐藤俊子と関露の連帯関係
 5 おわりに

第8章 日本占領下の上海における女性問題の変容―プロパガンダ誌の女性文学と『女聲』の読者欄をめぐって
 1 はじめに
 2 『女聲』の「読者投書欄」にみる女性問題
 3 日本占領下の上海文壇で活躍した女性作家たち―張愛玲と蘇青が描く女性問題
 4 占領下の上海における〈女性問題〉―張愛玲文学と『女聲』「読者投書欄」の共通点
 5 おわりに

結章
 1 本書のまとめ
 2 本書の成果
 3 今後の課題

参考文献
図版出典一覧
初出一覧
あとがき
索引