国立歴史民俗博物館・樋浦郷子・中村耕作編『REKIHAKU 特集・性/生のルールを考える』(国立歴史民俗博物館)

6月下旬刊行予定です。
国立歴史民俗博物館・樋浦郷子・中村耕作編
『REKIHAKU 特集・性/生のルールを考える』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-86766-091-1 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信
国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。
特集は「性/生のルールを考える」。
歴史が始まって以来、男性も女性もその体を持って生まれただけなのに、みなしんどいことがあるだろうと思います。それはみな同じ「しんどい」ではなく、全員に個別なしんどさがあるのではないでしょうか。
性は多かれ少なかれ当時の社会の背景や特定の考えが入り込んで区分されてきたものです。だとすれば、時代それぞれの社会的な区分やその区分にもとづいて作られる性のルールのもとで、みないかにして生き抜いてきたのでしょうか。個別の悩み、受容、妥協やあきらめや闘いを、先史時代から現代まで見て、考えていきます。
特集は、「「女犯」をめぐる中世宗教と現代科学」「江戸時代の性と生----避妊と捨て子から問う」「月経をめぐる民俗----明治・大正・昭和」「女学生と登山」「衛生用品の世界史」といった論考を収録したほか、現在進行形で生理用品と向き合う、花王株式会社の「ロリエ」宣伝開発メンバーとの座談会「現代史としてのロリエ史」も掲載。そこで感じられる苦労やタブー、現在進行系の変化も伺いました。
それぞれの社会での性の区分やそこで求められるしきたりや習慣、不文律はどう変遷してきたのでしょうか。
執筆は、光本 順、斎藤夏来、沢山美果子、関沢まゆみ、高嶋 航、張 思銘、廣瀬祐一(花王株式会社)、手島佑梨(花王株式会社)、松永沙都子(花王株式会社)、樋浦郷子。
特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。
歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!
●特集趣意文
二〇二四年夏のパリ・オリンピックで、ボクシング女子競技で六六キロ級と、五七キロ級でそれぞれ金メダルを獲得したイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と林郁婷選手(台湾)がトランスジェンダーではないか、と疑われネットで詮索されたり、中傷されたりしました。二人は、特定のホルモンの数値が高くなる「性分化疾患」ではないか、とも報道されました。
この騒ぎは、いくつもの問題を投げかけています。まず、トランスジェンダーへの差別や詮索の問題。次に、性別を決めるのは自分以外では誰なのかという主体の問題、それから、筋肉の量や速さに勝るものが勝つという近代オリンピックはじめスポーツ競技に共有される価値観。さらに、男女には分かちづらい「多様な性」と男女の性別を前提としている競技団体の問題、あるいは個人の性やホルモンの値はどんな場合にどこまで公表されうるのかという倫理の問題、などです。
一七世紀頃までは、西洋学術の世界では性別をどう把握するのかという考え方が、現在とはずいぶんと異なっていました。男性は金脈(痔のことです)や鼻血で不定期に体液を排出し、女性は血液や母乳などを周期的に体液を排出する存在と理解されており、身体の外形的特徴が男女を必ずしも区分するものではなかったという指摘があります(姫岡とし子『ジェンダー史10講』岩波書店、二〇二四年)。一八世紀以降にヨーロッパで医学や生物学が発達するにつれて、生殖器によって男か女かが判断されるようになりました。例えば、子宮を持つ者は女性、精巣を持つ者は男性、といったように。一九世紀後半から本格的に日本にこういった考え方が入ってきましたが、二一世紀のこんにちでは、すでにそのような区分の方法ではうまく現実をとらえられなくなっていると、冒頭のオリンピックの事例は教えてくれているように思います。
性は多かれ少なかれ当時の社会の背景や特定の考えが入り込んで区分されてきたのではないでしょうか。そうだとすれば、時代それぞれの(身体的ではなく)社会的な区分やその区分にもとづいて作られる性のルールのもとでいかにして生き抜くか、個別の悩み、受容、妥協やあきらめや闘いがあったのだろうと想像します。
先史時代から現代まで、それぞれの社会での性の区分やそこで求められるしきたりや習慣、不文律がどう変遷しているのかということを学んでみたいと思い、今回の特集を企画しました。(樋浦郷子)
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https://books.rakuten.co.jp/rb/18261197/
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【編者紹介】
国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)
千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/
樋浦郷子(ひうら・さとこ)HIURA Satoko
国立歴史民俗博物館研究部准教授(近代教育史) 【著書・論文】『신사・학교・식민지 지배를 위한 종교-교육(神社・学校・植民地 支配のための宗教―教育』(韓国高麗大学出版文化院、2016年)、「帝国日本の清潔と清潔感」、国立歴史民俗博物館・花王株式会社『<洗う>文化史 「きれい」とは何か』(吉川弘文館、2022年)など 【趣味・特技】顔ハメ看板には、はまるタイプです
中村耕作(なかむら・こうさく)NAKAMURA Kousaku
国立歴史民俗博物館准教授(縄文時代の儀礼・葬送・象徴、土器からみた社会関係の研究) 【著書】『縄文土器の儀礼利用と象徴操作』(アム・プロモーション、2013年) 【趣味】旅行、最近は少々キャンプ 【X(旧Twitter)・Facebook・YouTube】中村耕作で検索。展覧会や遺跡の見学記、縄文×音楽ワークショップの動画など
【目次】
特集・性/生のルールを考える
【異性愛はあたりまえの現象だったのか?】
ジェンダー・セクシュアリティの視点から見る先史時代(光本 順)
【自身の生と性を改めて考える切り口】
「女犯」をめぐる中世宗教と現代科学(斎藤夏来)
【性と生の実態を史料からどう読み解くか】
江戸時代の性と生----避妊と捨て子から問う(沢山美果子)
【血穢とされた長い歴史とその変化】
月経をめぐる民俗----明治・大正・昭和(関沢まゆみ)
【「女人禁制」が解かれた山へ】
女学生と登山(高嶋 航)
【月経処置の歴史とその変遷を探る】
衛生用品の世界史(張 思銘)
【特集座談会】
現代史としてのロリエ史(廣瀬祐一×手島佑梨×松永沙都子×樋浦郷子)
現在進行形で生理用品と向き合う人々は
どんな苦労やタブー、その変化を感じているのか?
これからの生理用品はどうなっていくのか聞いてみた
テーブルの上に出されてこなかったものを明らかにしたいという欲望
「生理用品」の概念の転換
制約だらけのナプキンのCM
社内の男女比は?
生理用品のトレンドと今後──保守的な傾向のある日本市場
ナプキンを分解してみたら
生理用品を仕事にしていて感じるタブー
「職場のロリエ」の活動を通して気づくこと
おむつの技術開発との共通点・相違点
花王株式会社サニタリー研究所・廣瀬さんに聞く
[基礎知識!]生理用品の技術と開発(文学通信編集部)
吸水性高分子を初めて使用したロリエ
ナプキンに求められる基本性能
ナプキンの構造
ナプキンの吸収機構
ナプキンの製造方法
生理用品(製品)の開発
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たかが歴史 されど歴史
近代の夫婦関係、筑豊炭鉱の夫婦関係
(佐川享平)
博物館マンガ 第14回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館
色んな人が楽しめる体験学習!
(鷹取ゆう)
石出奈々子のれきはく!探検 第14回
貴族様、五十六億年後まで埋めましょう
(石出奈々子)
フィールド紀行
沈黙を破る 島々の歴史証言
─八重山・宮古・奄美─
第2回 書かれていない歴史の島
(村木二郎)
誌上博物館 歴博のイッピン
象徴的な儀礼具と考えられる二個一対の異形台付土器
(中村耕作)
歴史研究フロントライン
高齢多死社会における生前から死後の移行に関する統合的研究
(山田慎也)
EXHIBITION 歴博への招待状
特集展示「生田コレクション 鼓胴」
(日高 薫)
SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
近世日本とメキシコを繋いだ屛風
(鷲頭 桂)
歴史デジタルアーカイブ事始め 第13回
メディア芸術データベース(MADB)
(橋本雄太)
くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の朝顔」のご案内
博物館のある街
千葉県市原市
市原歴史博物館の誕生と活動
(鷹野光行)
くらしの由来記
ぴったりブルマーが滅びるまで
(樋浦郷子)
研究のひとしずく
年輪から読む人と木の歴史
第4回(完)●三万年の眠りから醒めた栂
(箱崎真隆)
海外の日本研究から
稲作伝播と弥生時代の人口変動を数理考古学で探る
(エンリコ・リュウノスケ・クレーマ)
歴博友の会 会員募集
英文目次