国立歴史民俗博物館・川村清志・樋浦郷子編『REKIHAKU 特集・カメラ越しの世界』(国立歴史民俗博物館)

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10月下旬刊行予定です。

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国立歴史民俗博物館・川村清志・樋浦郷子編
『REKIHAKU 特集・カメラ越しの世界』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-86766-059-1 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信

国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

特集は「カメラ越しの世界」。
カメラが発明されて200年。感光板からフィルムへ、モノクロからカラーへ、アナログからデジタルへと展開してきましたが、本特集では、博物館や研究分野における写真をめぐる今日的な課題と意義を、主に資料としての写真、道具としての写真、そして表現としての写真という側面から迫っていきます
 写真のなかには、時には現実としては受け入れがたいものであったり、逆に現実であると錯覚させたりするものもあります。画像のデジタル化や加工技術の発達によって、現実とフィクションの境界は、ますます曖昧なものとなっています。その意味で私たちは、写真を正しく読み取るためのリテラシーが今、必要とされています。
 私たちの日常に溢れる写真は、一体何なのか。想像以上に広がりを持つその奥行きを見ていきます。

特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。

歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

●特集趣意文

 カメラが発明されてから約二〇〇年になります。日本にもたらされたカメラは、真実を写すものとして、〈写真〉と呼ばれました。かつての写真は、特定の人たちが操作するものであり、対象を記録する主体と撮影される客体との間には、大きな溝がありました。写真で撮ることができるものも、初期においてはかなり限られたものでした。高速で移動する対象や暗い場所は記録しにくく、色彩やディテールが写真で再現されるまでには、長い時間がかかっています。
 カメラは感光板からフィルムへ、モノクロからカラーへ、アナログからデジタルへと展開していきます。近年では、一般の人が容易にアクセスし、利用できるツールへと進化しています。携帯電話にも当たり前のように写真機能は組み込まれ、撮影や記録はもちろん、インターネットを通じて家族や友人と共有したり、広く公開したりすることも可能になりました。
 同時に写真は、より迫真の現実、より多様な現実、より未知の現実を記録し、表象するために発達してきました。写真を通して私たちは、自分では見たことのない、あるいは見ることができない遠い世界の出来事や現象を現実として捉えるようになったのです。写真のなかには、時には現実としては受け入れがたいものであったり、逆に現実であると錯覚させたりするものもあります。画像のデジタル化や加工技術の発達によって、現実とフィクションの境界は、ますます曖昧なものとなっています。その意味で私たちは、写真を正しく読み取るためのリテラシーを今、必要とされているのです。
 この特集では、博物館や研究分野における写真をめぐる今日的な課題と意義を、主に資料としての写真、道具としての写真、そして表現としての写真という側面から迫っていきます。
 資料としての写真では、博物館やアーカイブズ研究の立場から過去の写真資料の保存の問題について検証します。劣化したネガの保存の問題や、アナログの資料をデジタル化することで写された内容を保存する際の可能性と課題について取り上げたいと思います。道具としての写真は、未知の場所でのフィールドワークやジャーナリストによる現場写真の特質、記録された写真の特徴について考えていきます。記録された画像を地域社会に還元することで、写真に写された当時の記憶や背景を呼び起こすためのツールとしての写真にも注目していきます。最後に表現としての写真では、歴史的社会的な出来事を記録する写真の意義、撮る/撮られるという写真資料にまとわりつく非対称的な関係性を問い直す試み、さらには写真資料を基礎としつつ、歴史資料や美術資料を再現する実践について検討していきます。
 もっとも、ここで取りあげる写真の特質は、調査・研究の現場や博物館の展示において、重層的に関わり合うものです。各々の論考では、写真の特質の一つだけを扱うのではなく、それらが重なり合って生じる課題や可能性を提示してもらいます。そこから私たちの日常に溢れる写真の奥行きに、もう一度、目を凝らしていただければと思います。(川村清志)

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【編者紹介】

国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

川村清志(かわむら・きよし)

国立歴史民俗博物館准教授(文化人類学・民俗学) 【著書】『明日に向かって曳け』(民俗研究映像、監督、2016年)、「民俗文化資料のデジタルアーカイブ化の試み─文化資源化と研究分野の更新に向けて」(『国立歴史民俗博物館研究報告』214、2019年)【趣味・特技】料理、釣り、句作、アニメ鑑賞

樋浦郷子(ひうら・さとこ)

国立歴史民俗博物館研究部准教授(近代教育史) 【論文】「韓国併合直後の公立普通学校―『草渓公立普通学校沿革誌』を手がかりとして」(『教育史フォーラム』16、2021年6月)、「從臺南市新化區的學校史觀察臺灣的[御真影]」(『歴史臺灣』17、国立台湾歴史博物館、2019年5月) 【趣味・特技】顔ハメ看板には、はまるタイプです

【目次】

特集対談
写真は何を物語るのか
----MINAMATA・アジア・食----

(森枝卓士・川村清志)

1 「公開」と「利用制限」のバランスをどうとるか●COLUMN
地域に残された写真の保存と活用の今
(蓮沼素子)

2 ステレオ写真のデジタル化で見えてくるもの●COLUMN
富士山の古写真を読み解き、展示する
(井上卓哉)

3 写真資料の持つ可能性(チカラ)を考える●COLUMN
写真のチカラ
(島立理子)

4 忘れられた地域の記憶をよみがえらせる●COLUMN
写真資料を用いたフィールドワークの地域還元
──写真と現場の往復作業を通して──

(柴崎茂光)

5 写真から3Dデータへの変化は何をもたらすのか
記録メディアとしての3Dデータ
(上野祥史)

6 戦後沖縄の記録者・阿波根昌鴻●COLUMN
写真の価値と可能性──阿波根昌鴻写真の軌跡──
(高科真紀)

7 沖縄写真をめぐる意義と課題●COLUMN
沖縄写真の今日
(比嘉豊光)

8 創作者の立場から模写と写真との関係を考える
絵画を模写すること──写真との関係──
(正垣雅子)

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博物館マンガ 第12回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館
収蔵庫内の資料の取り扱い方(鷹取ゆう)

石出奈々子のれきはく!探検 第12回
かみさま全包囲網(石出奈々子)

フィールド紀行
加耶の史跡を探訪する
第3回(完) 
飛躍を遂げた大加耶の王都、高霊
(高田貫太)

誌上博物館 歴博のイッピン
丹後半島の漁を支えたチョロと磯見漁具
(松田睦彦)

歴史研究フロントライン
映像の共有による、歴史と文化の研究のために
(内田順子)

EXHIBITION 歴博への招待状
特集展示「歴史の未来―過去を伝えるひと・もの・データ―」
(後藤 真)

SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
外国船の修造から日本近代造船業を考える
(賀 申杰)

歴史デジタルアーカイブ事始め 第11回
城端別院善徳寺オンライン古文書収蔵庫
(橋本雄太)

くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の古典菊」・「冬の華・サザンカ」のご案内

博物館のある街
野球殿堂博物館 文京区後楽で六五年
(関口貴広)

くらしの由来記
キノコの季節に潜む闇
(川村清志)

研究のひとしずく
年輪から読む人と木の歴史 
第2回●杉のいた場所
(箱﨑真隆)

Kaleidoscope of History A Photographic Introduction to Items from the Collection "Shini-e"
-- Portraits of the Deceased

(YAMADA Shin'ya)

歴博友の会 会員募集
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