国立歴史民俗博物館監修 後藤 真・橋本雄太編『歴史情報学の教科書 歴史のデータが世界をひらく』全文公開サイト

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2019年3月30日公開!

※本書(この記事)は CC BY-SA のもとで公開しています。
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9784909658128_bb-1.jpg人文学に必要なこれからの情報基盤の作り方とは。
複数の手段を用いて、新たな歴史像に迫るために。情報を共有して課題を解決するプラットフォームを構築するために。情報を可視化して、社会の深層にコミットしていくために。
人文学は社会そのものを考え、社会のあるべき姿を考える学問である。その可能性を追求するために、強力な援軍となっている歴史情報学の現在と未来を解説し、学問の基盤の今後を問いかけ、参加を促す。歴史情報学で出来ることを、まずは知るところからはじめよう!
人文学研究者はもとより、行政機関、図書館・博物館等の学術機関などにだすさわる方必携の書。
執筆は、後藤 真、橋本雄太、山田太造、中村 覚、北本朝展、天野真志、関野 樹、鈴木卓治、永崎研宣、大河内智之。

【人文学は社会そのものを考え、社会のあるべき姿を考える学問である。そして、これらの人文学の成果が社会に展開されないということは、社会的な矛盾や課題を解決できないということにもつながる。場合によっては、光が当てられなければならないマイノリティなどが圧殺されるような事態につながり得る恐れすらある。そのように考えれば、人文学や社会科学は人の生命を、それも大量の人の生命の維持を担う学問であるといってよい。
 人文学や社会科学は、社会を支える必須の学問であるとともに、「可能性」を持っているのだ。わたし自身は、そのような人文学の「可能性」にかけている。可能な限り「人文学を可視化」させるための研究の基礎に、人文情報学が貢献することを切に願うものである。】......後藤真「はじめに」より


■全編ダウンロード
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ISBN978-4-909658-12-8 C0020 A5判・並製・208頁 定価:本体1,900円(税別)
https://bungaku-report.com/blog/2019/03/post-445.html


【目次】

ご挨拶○新たな学の創成に向けて(久留島 浩)

はじめに(後藤 真)
1.瀬戸際の人文学/2.人文学の「可能性」にかける/3.学問自体を「場」として設定する/4.本書の読み方

chapter1 人文情報学と歴史学
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに―人文情報学とは何か/2.日本における歴史情報学・人文情報学の研究状況/3.情報を得るために人文情報に関わる学会とその傾向/4.どのような研究があるか―ツールとデータベース/5.おわりに

chapter2 歴史データをつなぐこと―目録データ―
山田太造(東京大学史料編纂所)
1.はじめに/2.目録を整理していく/3.東京大学史料編纂所所蔵史料/4.史料を分類していく/5.目録を階層化していく/6.目録を記述する/7.記述要素を拡張していく/8.周囲の歴史データを関連付けていく/9.おわりに

chapter3 歴史データをつなぐこと―画像データ―
中村 覚(東京大学情報基盤センター)
1.はじめに/2.画像データの基礎/3.IIIF(International Image Interoperability Framework)/4.まとめ

●column.1 画像データの分析から歴史を探る―「武鑑全集」における「差読」の可能性―
北本朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
1.文字と非文字/2.差読とは?/3.画像ベース差分検出/4.「武鑑全集」プロジェクト

chapter4 歴史データをひらくこと―オープンデータ―
橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに/2.オープンデータ普及の背景/3.ライセンス/4.機械可読性/5.人文学資料のオープンデータ化がもたらす可能性/6.歴史学・人文学分野のオープンデータ/7.オープンデータの普及に向けた諸課題/8.おわりに

chapter5 歴史データをひらくこと―クラウドの可能性―
橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに/2.クラウドソーシング登場の背景/3.学術領域に広がるクラウドソーシング/4.市民との協働手段としての「クラウドソーシング」/5.クラウドソーシングの諸課題/6.おわりに

chapter6 歴史データはどのように使うのか―災害時の歴史文化資料と情報―
天野真志(国立歴史民俗博物館)
1.災害と歴史文化資料/2.歴史データを活用した災害対策/3.災害対策に求められる情報とは/4.歴史文化資料を対象としたデータ活用は可能なのか

●column.2 歴史データにおける時空間情報の活用
関野 樹(国際日本文化研究センター)
1.歴史データのための空間情報基盤/2.空間情報を用いた歴史研究/3.歴史データのための時間情報基盤

chapter7 歴史データはどのように使うのか―博物館展示とデジタルデータ―
鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに/2.展示は資料を見る最良の手段ではない/3.資料の画像の撮影と管理/4.「江戸図屛風」の超拡大コンテンツ/5.超拡大コンテンツを用いた展示/6.超拡大コンテンツ技術の可能性-準3次元表示を例に/7.超拡大コンテンツをインターネットで楽しむ時代にあって/8.おわりに

chapter8 歴史データのさまざまな応用―Text Encoding Initiative の現在―
永崎研宣(人文情報学研究所)
1.デジタルテクストの特徴を活かすには?/2.TEI登場のコンテクスト/3.TEIガイドラインとは/4.アップデートされるTEIガイドライン/5.TEIガイドラインの活用事例/6.マークアップの深さをどう考えるか/7.テクストデータやツール・ノウハウを共有するには/8.どうやってマークアップするか/9.おわりに

chapter9 デジタルアーカイブの現在とデータ持続性
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに/2.「アーカイブズ」と「デジタルアーカイブ」/3.「デジタルアーカイブ」とは/4.「デジタルアーカイブ」の現在/5.「デジタルアーカイブ」の持続性/6.デジタル「アーカイブ」を考えるために

●column.3 さわれる文化財レプリカとお身代わり仏像―3Dデータで歴史と信仰の継承を支える―
大河内智之(和歌山県立博物館)
1.はじめに/2.さわれる文化財レプリカによる博物館展示のユニバーサルデザイン化/3.「お身代わり」仏像による盗難被害防止対策/4.おわりに

chapter10 歴史情報学の未来
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
1.はじめに/2.ディープラーニング?-古文書OCRの研究から考える/3.データプラットフォーム-歴史情報データの未来/4.歴史情報に関わるデータや情報の持続性/5.研究成果のアウトプット/6.これまでと違う未来?-情報学の手段として歴史学を使う/7.総合資料学と歴史情報学の未来/8.歴史情報学の未来・歴史学の未来

おわりに

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執筆者一覧