群馬歴史資料継承ネットワーク(ぐんま史料ネット)【関東】★『地域歴史文化継承ガイドブック』全文公開
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群馬歴史資料継承ネットワーク
(ぐんま史料ネット)
【団体情報】
設立年●2020年
事務局所在地●〒370-1193 群馬県佐波郡玉村町上之手1395-1 群馬県立女子大学 群馬学センター 簗瀬大輔研究室
電話番号●0270-65-8511(代表)
メールアドレス●gunmasiryo@gmail.com(代表)
Twitter●https://twitter.com/gunmasiryonet
Facebook●https://www.facebook.com/GunmaSiryoNet
【活動地域】
群馬県および近接地域
【参加方法】
入会●入会金・会費は無料です。申込みは入会フォーム(https://t.co/X3yfQTxuaz?amp=1)より。
寄付●歴史資料の保全と次世代への継承のために、寄付を募集しています。申込みフォーム(https://forms.gle/nZyzU9GxcCznQwMd7)より。
【設立の経緯】
文●長谷川明則
令和元年東日本台風(台風19号)で大きく意識が変わる
群馬歴史資料継承ネットワーク(ぐんま史料ネット)は、2020年(令和2)7月に発足しました。群馬県では、ここ数十年は地震や台風による大きな被害が発生しておらず、県民の間にも自然災害が少ない地域だという意識が強くあります。そのため、歴史学の研究者の間でも、それまで組織的に歴史資料の保全に取り組もうという動きはありませんでした。
そういった意識が大きく変わる契機となったのが、2019年の令和元年東日本台風(台風19号)です。群馬県内にも大雨特別警報が出され、土砂崩れなどの被害がありましたが、近隣の長野県や栃木県では、多くの歴史資料が危機にさらされました。本県からも、有志が歴史資料の保全活動に協力させていただきましたが、こういった活動に参加する中で、本県の文化財関係者の間でも歴史資料の危機が目の前のものとして意識されました。
2020年5月、このような課題意識を持つ有志10名が集まり、ぐんま史料ネットの設立準備会が立ち上がりました。新型コロナウイルスの感染拡大により社会全体が先行きの見えない不安に包まれる中、思うように設立準備が進められない面もありましたが、風通しのよい会場で実施した3回の対面での会合と何度かのオンライン協議を重ね、同年7月12日に前橋市内で設立総会と記念報告会を開催しました[❷]。代表には、設立準備会の呼びかけ人でもある簗瀬大輔さん(群馬県立女子大学群馬学センター准教授)が就任し、設立趣意書や規約などの議案が承認されました。設立趣意書では、次の五つの活動方針を掲げています。
❷設立総会・記念報告会の様子(2020年)
(1)自然災害等で消失の危機にある歴史資料の救出・保全・記録作成
(2)次世代に継承していくべき歴史資料の把握
(3)県内及び周辺地域の住民への歴史資料防災の啓発や歴史研究活動の支援
(4)歴史資料の防災、歴史資料の保存、災害史などに関する研究
(5)全国の歴史資料ネットワークとの交流と相互支援
設立総会に続いて行われた記念報告会では、原田和彦さん(長野市立博物館)から、「令和元年東日本台風と信州資料ネットの設立」と題して基調講演が行われました。続いて、小宮俊久さん(太田市教育委員会文化財課)から「太田市の被災史料」、軽部達也さん(藤岡市教育委員会文化財保護課)から「史料救済担い手の育成について─県立吉井高等学校職業体験を通じて─」、樋美沙樹さん(嬬恋郷土資料館)から「新鹿沢温泉・鹿澤館 閉館に関わる取り組み」と、県内の事例が報告されました。
現在、全国各地で数多くの資料ネットが活動していますが、ぐんま史料ネットの特徴は、正式名称に「継承」が入っていることです。設立趣意書の言葉を借りれば、「歴史資料は地域の先人の、その時その時の情熱や愛情、使命感と努力、そして偶然によって、今ここに奇跡的に存在している」のであり、「継承」という名称には、私たちの活動によって、「次世代への継承という新たな奇跡につなげ」たいという決意が込められています。
【活動の特徴】
文●長谷川明則
「予防ネット」として活動を模索
ぐんま史料ネットは、直近の災害から歴史資料を守るために発足したわけではなく、いわゆる「予防ネット」として誕生しました。そのため、設立準備の段階から、発足したとして、まずはどのような活動をしていくのかを模索してきました。現在は、「群馬方式」の確立に向けて、四つの活動を中心に取り組んでいます[❶]。
❶「予防ネット」の確立に向けた四つの活動
一つ目が、「ネットワークの整備・拡充」です。設立と同時にメーリングリストを開設しており、情報発信を随時行っています。メーリングリストの会員はウェブ上の入会フォームから随時募集しています。平時には活動報告や県外の資料ネット等の情報を発信していますが、有事には歴史資料の救出・保全ボランティアの参加者募集の手段として機能することを期待しています。
二つ目が、「群馬の歴史資料次世代継承事業」です。この事業は文化庁の文化芸術振興費補助金(地域文化財総合活用推進事業)の交付を受けて実施しています。2020年度は「予防ネット」の起動事業として、①歴史資料防災啓発テキスト『群馬の歴史資料を未来へ─歴史資料ネットワーク事始め─』の編集・刊行[❸]、②古地図を活用した地域学習活動の支援、③古地図を活用した歴史資料防災コンテンツの制作・公開を行いました。①は、文化財保護行政や歴史資料収集・保管業務に従事する方々をはじめ、多くの県民に資料ネット活動の意義を理解していただくため、全国各地で活動する資料ネットの皆さまや群馬県内のさまざまな現場で歴史資料の保全と継承に携わる方々に原稿を寄せていただきました。②③は、見慣れた風景の中に石造物や建造物などの歴史資料が潜んでいることを地域住民に認識してもらう一助となることを期待し、古地図を活用したウェブコンテンツ「ぷらっと館林」「ぷらっと玉村」を制作・公開しました。2021年度は、大字単位で地域の歴史を把握する取り組みとして、県内の玉村町で活動する地元の歴史愛好団体(玉村歴史塾)と協働で「大字誌角渕プロジェクト」を行っています[❹]。年度内の「大字誌」刊行を目指して、月1回のペースで玉村歴史塾との合同勉強会を開催しています。
❸『群馬の歴史資料を未来へ─歴史資料ネットワーク事始め─』
❹大字誌プロジェクトの様子(2021年)
三つ目が、「情報の発信と交流」です。現在、ツイッターとフェイスブックで情報発信を行っています。今後は、それ以外にもホームページの開設やウェブ版ニューズレターの発行も行いたいと考えています。
四つ目が、「地域史料防災に関する研究」です。団体の事務局を置いている群馬県立女子大学群馬学センターの簗瀬研究室の研究である「地域史料防災の総合的研究」の研究パートナーとして、同センターのリサーチフェロー制度を活用し、歴史資料所在調査、歴史資料防災・保全活動、災害史に関する研究を行っています。
歴史資料を未来へ継承していくために
ここまで紹介してきた四つの活動は多岐にわたりますが、目指す目標は一つ、貴重な歴史資料が消滅するような事態に備えて、それを救出・保全し、次世代に継承するための協力関係を構築することです。今後も全国の先進的な取り組みに学びながら「群馬方式」を模索しつつ、歴史資料を未来へ継承していくための活動を行っていきます。
【連携団体】
群馬県立女子大学群馬学センター、群馬県文化財保護課、群馬歴史文化遺産発掘・活用・発信実行委員会
【活動がわかる主な文献リスト】
1●群馬歴史資料継承ネットワーク編『群馬の歴史資料を未来へ─歴史資料ネットワーク事始め─』群馬歴史文化遺産発掘・活用・発信実行委員会、2021年
2●群馬歴史資料継承ネットワーク(井坂優斗)「群馬歴史資料継承ネットワーク(ぐんま史料ネット)の設立と展望」『群馬文化』341、2020年