尾形 大『「文壇」は作られた 川端康成と伊藤整からたどる日本近現代文学史』(文学通信)

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4月上旬刊行予定です。

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ISBN978-4-909658-74-6 C0095
四六判・並製・256頁
定価:本体2,000円(税別)

明治期以降、ジャーナリズムの発達・拡張にともなって、文学者たちのなかに文壇という〈場〉が共同的に創り上げられていく。1920年代に文学上の出発を果たした川端康成と伊藤整。彼らは文壇をどのように意識し、参入し、そしてそれぞれの文学を生み出していったのだろうか。
彼らが見据え研究し、距離を測りながらかかわりつづけた文壇という場を明らかにしつつ描く、日本近現代文学史。

【1950年にチャタレイ裁判の被告人となった伊藤は、全文壇人を代表する立場で法廷に立ち、粘り強く闘い抜いた。また同じ時期に『日本文壇史』の連載を開始して文芸批評家、文学研究者としても活躍するようになる。60年代には日本近代文学館設立運動の中心として、文壇の世話役、かじ取り役として尽力している。そして伊藤が深くかかわっていく文壇の中心には、いつも川端康成がありつづけた。伊藤と川端の文学上の関係性は1930年前後を起点としながら、その後40年近い歳月をかけてゆるやかにかかわり合い、からみ合いながら紡がれていく。】......はじめにより





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【著者プロフィール】

尾形 大(おがた・だい)

1978年神奈川県横浜市生。専門は日本の近現代文学。研究対象は伊藤整を中心とする1920〜50年代の文学場。博士(文学)。早稲田大学・日本大学大学院を経て、現在山梨大学大学院総合研究部教育学域人間科学系(言語教育講座)准教授。

【目次】

はじめに

【文学史と文壇史、そして伊藤と川端】
第1章 「文壇」は作られた
1 「文壇」という言葉の定義
2 『日本文壇史』のなかの文壇像
3 歴史の作られ方―文学史と文壇史
4 文壇へ参入するには
5 戦後文壇の中心:川端康成と伊藤整
6 ノーベル文学賞受賞と川端の戸惑い
7 川端と伊藤が向き合った文壇

【二人はどのようにデビューしていったのか】
第2章 文壇への参入と戦略―『感情装飾』と『雪明りの路』の作者たち
1 それぞれの文壇参入
2 川端の〈孤児意識〉
3 伊藤の〈捨児意識〉
4 詩壇から評価される伊藤
5 同人雑誌『椎の木』に集った文人たち
6 梶井基次郎との出会い、そして川端への執筆依頼

【文壇に食い込むために】
第3章 雑誌を創刊する伊藤―『文藝春秋』をモデルとした『文藝レビュー』
1 上京と瀬沼茂樹との出会い
2 モデルとしての『文藝春秋』
3 文学者とカネの問題
4 詩から小説への移行
5 海外文学の窓口
6 文壇参入に足掻く伊藤

【西洋のモダニズムはいかに摂取されたか】
第4章 フロイトの精神分析学とジョイス『ユリシーズ』の受容
1 フロイトとジョイスの輸入
2 創作への影響
3 川端による絶賛と伊藤の行き詰まり
4 「無意識」を描く
5 『ユリシイズ』共訳と方法としての「意識の流れ」
6 類似する物語構造
7 海外文学の受容

【文学の「正しい道」を模索する】
第5章 文学史の構築と「心理小説」の発見
1 1930年代の「歴史意識」と文学場
2 「新」しい心理を「新」しい方法で表現する「新」しい文学
3 伊藤が考えた文学の「正しい道」と「新心理主義文学」
4 「心理小説」を軸とする文学史の発見
5 同伴者・瀬沼茂樹

【文学の伝統を刷新する】
第6章 拡張される「純文学」概念―「父母への手紙」と「生物祭」
1 1930年代の純文学の諸相
2 ジッド受容と「メタ小説」の系譜
3 川端のメタ小説「父母への手紙」
4 自伝的情報の書き込みと共有
5 創作上の窮地に陥る伊藤
6 「生物祭」の読まれ方
7 純文学を拡張する試み

【多くを語り得ない社会状況のなかで】
第7章 プロレタリア文学に向き合う―小林多喜二の死から「幽鬼の街」へ
1 モダニズム文学=反プロレタリア文学?
2 「誰だ? 花園を荒らす者は!」
3 プロレタリア文学への態度
4 小林多喜二虐殺事件
5 伊藤の〈沈黙〉
6 多喜二と芥川の「幽鬼」が語るもの

【食い扶持を稼ぐ】
第8章 作家活動の裏事情―大学講師と代作問題
1 作家の生活とカネ
2 日大芸術科講師に着任
3 文芸雑誌『新潮』への定期的な掲載
4 「原稿執筆させていただきます」
5 作家志望者に向けた『小説論』
6 ジェイムズのThe Making of Literature
7 書簡に残された代作の内情 147
8 The Making of Literatureの露骨な引き写し
9 代作問題の複雑な様相

【協調か沈黙か】
第9章 戦争と文壇―戦時下の「私」の行方
1 戦時下の文学と文学者たちの動き
2 「生きている兵隊」と『麦と兵隊』
3 従軍に殺到する作家たち
4 〈従軍ペン部隊〉に求められたもの
5 戦時下の川端の創作活動
6 北條民雄文学へのまなざし
7 国策に協調的だった文壇活動
8 『得能五郎の生活と意見』と『得能物語』の「私」像

【戦後にそれぞれが担った役割】
第10章 文壇の戦争責任と再建―『鳴海仙吉』と『雪国』
1 終戦後の文学者の再出発
2 文学者と文壇の戦争責任
3 伊藤の執筆活動
4 長編小説『鳴海仙吉』が抱え込んだ同時代的な問題意識
5 〈向こう側〉から〈こちら側〉に帰ってくる物語構造
6 鎌倉文庫からの文壇の再建

【法廷の内外で語られた言葉とは】
第11章 文壇の団結と再出発―チャタレイ事件と『舞姫』
1 「性」をあつかった小説の思想と意義
2 削除版と無削除版
3 チャタレイ事件はどのように読み取られてきたか
4 小説『裁判』がもたらした効果
5 文壇との共闘
6 川端の無言と『舞姫』の発表
7 改稿前後の『舞姫』
8 『舞姫』による応答

【「文壇」の中心へ】
第12章 日本近代文学館設立からノーベル文学賞受賞へ
1 「チャタレイ事件」時の伊藤整の活動
2 近代文学の研究会との関わり
3 近代文学資料の復刻と蒐集
4 日本近代文学館設立へ
5 文学館設立の目的と意義
6 相次ぐ展覧会
7 「文学史」を形づくる場と行為
8 ノーベル文学賞と川端をめぐりあわせたもの
9 「文壇」の誕生と終焉
10 文壇は広がっていく

おわりに

関連年表