東奥日報(2023.5.11)文化面で、『土偶を読むを読む』(文学通信)が紹介されました「土偶の正体、現実的に検証」

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東奥日報(2023.5.11)文化面で、『土偶を読むを読む』(文学通信)が紹介されました「土偶の正体、現実的に検証」。

本書の詳細は以下より。

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望月昭秀編『土偶を読むを読む』(文学通信)
ISBN978-4-86766-006-5 C0021
四六判・上製・432頁
定価:本体2,000円(税別)

「土偶の正体」は果たして本当に解き明かされたのか?
竹倉史人『土偶を読む』(晶文社)を大検証!

考古学の実証研究とイコノロジー研究を用いて、土偶は「植物」の姿をかたどった植物像という説を打ち出した本書は、NHKの朝の番組で大きく取り上げられ、養老孟司ほか、各界の著名人たちから絶賛の声が次々にあがり、ついに学術書を対象にした第43回サントリー学芸賞をも受賞。

「『専門家』という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、『これは〇〇学ではない』と批判する"研究者"ほど、その『○○学』さえ怪しいのが相場である。『専門知』への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている」(佐伯順子)と評された。

しかし、このような世間一般の評価と対照的に、『土偶を読む』は考古学界ではほとんど評価されていない。それは何故なのか。その理由と、『土偶を読む』で主張される「土偶の正体」、それに至る論証をていねいに検証する。

考古学の研究者たちは、今、何を研究し、何がわかって、何がわからないのか。専門家の役割とは一体なんなのか、専門知とはどこにあるのか。『土偶を読む』を検証・批判することで、さまざまな問題が見えてくる。本書は、縄文研究の現在位置を俯瞰し、土偶を読み、縄文時代を読む書でもある。

執筆は、望月昭秀、金子昭彦、小久保拓也、佐々木由香、菅豊、白鳥兄弟、松井実、山科哲、山田康弘、吉田泰幸。

【『土偶を読む』の検証は、たとえれば雪かきに近い作業だ。本書を読み終える頃には少しだけその道が歩きやすくなっていることを願う。雪かきは重労働だ。しかし誰かがやらねばならない。(望月昭秀)...はじめにより】

編者によるメッセージ
『土偶を読むを読む』という書籍を出します。 - 縄文ZINE_note
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★望月昭秀編『土偶を読むを読む』より、「はじめに」を公開します


★望月昭秀編『土偶を読むを読む』より、「おわりに」を公開します


★『土偶を読む』はどうメディアで取り上げられてきたか──『土偶を読むを読む』編集余滴


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【編者紹介】

望月昭秀 (もちづき・あきひで)

『縄文ZINE』編集長。1972年、静岡県静岡市生まれ。ニルソンデザイン事務所代表。書籍の装丁や雑誌のデザインを主たる業務としながら、出来心で都会の縄文人のためのマガジン『縄文ZINE』を二〇一五年から発行し編集長をつとめる。著書に『縄文人に相談だ』(国書刊行会/文庫版は角川文庫)、『蓑虫放浪』(国書刊行会)、『縄文ZINE(土)』、『土から土器ができるまで/小さな土製品をつくる』(ニルソンデザイン事務所)など。現代の縄文ファン。

編者によるメッセージ
『土偶を読むを読む』という書籍を出します。 - 縄文ZINE_note
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【執筆者】

望月昭秀、金子昭彦、小久保拓也、佐々木由香、菅豊、白鳥兄弟、松井実、山科哲、山田康弘、吉田泰幸

【目次】

はじめに

 はたして本当に土偶の正体は解明されたのか?

検証 土偶を読む(望月昭秀)

1 カックウ(中空土偶)、合掌土偶――クリ
 1‒1 カックウ(中空土偶)
  全然そっくりじゃないカックウとクリ
  恣意的な資料の選択の豊作
 1‒2 合掌土偶
  屈折像土偶あれこれ
  クリというメジャーフード
  「イコノロジー×考古学」は正しいふれこみか?
2 ハート形土偶――オニグルミ
 土偶の前後左右
 クリやオニグルミの利用範囲と重なっていない土偶の方が圧倒的に少ない
3 山形土偶、ミミズク土偶、余山貝塚土偶――貝
 3‒1 山形土偶
  書を捨てよ、考古館へ行こう
  ハマグリと山形土偶の分布範囲
  ハマグリとは関係のないところで山形土偶は出来上がる
 3‒2 ミミズク土偶
 山形土偶とミミズク土偶の中間は存在するが、ハマグリとイタボガキの中間は存在しない
 髪型か貝殻か
 食用利用されていないイタボガキ
 貝の加工工場、中里貝塚
 「世紀の発見」に成功した人類学者
 3‒3 余山貝塚土偶
4 縄文のビーナス――トチノキ
 カモメラインという新たな分類
 顔の造形について
 顔よりも尻派
 ほとんど重ならないトチノミ利用
5 結髪土偶、刺突文土偶――イネ、ヒエ
 5‒1 結髪土偶
  引用元に話を聞いてみる
  結髪土偶はどうやって成立したか
 5‒2 刺突文土偶
  ヒエを栽培していた証拠もない
6 遮光器土偶――サトイモ
 遮光器土偶の中心地点ではサトイモは
 徐々に大きくなる遮光器土偶の目
 縄文ルネサンス
 自家中毒的な認知バイアス
7 土偶を読む図鑑
 7‒1 縄文の女神
 7‒2 仮面の女神
 7‒3 始祖女神像(バンザイ土偶)
 7‒4 三内丸山遺跡の大型板状土偶
 7‒5 縄文くらら
検証まとめ
 参考文献

「土偶とは何か?」の研究史(白鳥兄弟)

1 本稿の目的と内容
1‒1 土偶研究の「通説」
1‒2 本稿の内容
2‒1 第1期 明治期 ◎1868~1912年
2‒2 第2期 大正~昭和戦中期 ◎1912~1945年
2‒3 第3期 昭和戦後期 ◎1946~1988年
2‒4 第4期 平成期以降 ◎1989~2020年
3 まとめ
3‒1 各説の内容
3‒2 おわりに
 参考文献

〈インタビュー〉今、縄文研究は?(山田康弘)

発想の面白さはある
批判で自由な議論はできなくなる?
民族誌と考古学との接続の問題
理化学で前進している考古学研究
人骨と土器でわかること
男性の世界観と女性の世界観
似ているということ
つくりあげられた考古学者のイメージ
考古学の担い手たち
専門家の役割とは? 疲れてしまう取材
土偶研究の次のステップは
 参考文献

物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう(松井実)

 参考文献

土偶は変化する。――合掌・「中空」土偶→遮光器土偶→結髪/刺突文土偶の型式編年(金子昭彦)

はじめに
1 東北地方北部・縄文時代後期後半~晩期初めの土偶の変遷
2 遮光器土偶および関連土偶(東北北部・晩期前半土偶)の変遷
3 屈折像 B 類と結髪土偶の変遷
4 刺突文土偶の変遷
 参考文献

植物と土偶を巡る考古対談(佐々木由香・小久保拓也・山科哲)

考古学会は閉鎖的で強権的?
日本考古学会は男性社会で、土偶は男性のおもちゃ?
土偶については誰も答えられない、何もわかっていない、そして土偶の専門家はいない?
専門知について
土偶を読むをどう読む?
データの恣意性― クルミ、トチノキ、クリ、サトイモの痕跡をデータから考える
イコノロジーという手法
型式学というものさし
考古学は学際的な研究から孤立しているのか
土偶って一体何?
土偶研究があり得るとすれば、その今後は?
なぜ評価されたのか、その土壌を考える
 参考文献

考古学・人類学の関係史と『土偶を読む』(吉田泰幸)

加速させる人類学、減速させる考古学
人類学者の説を吸収する考古学者たち
社会へも取り込まれる人類学者の縄文理解
二〇二〇年代の考古学の「叩かれ方」
たとえ「穴だらけ」でも
 参考文献

実験:「ハート形土偶サトイモ説」(望月昭秀)

ついに土偶の謎を解きました!
ハート形土偶サトイモ説
雨乞いの儀式と土偶
『となりのトトロ』の雨乞いのシーン
実験(解読)を終えて
 参考文献

知の「鑑定人」――専門知批判は専門知否定であってはならない(菅豊)

はじめに
考古学者たちの冷たいあしらい
『土偶を読む』の評価にあらわれる専門知への疑念
専門家が言うことはあてにならない
パブリック・アーケオロジーの知見
考古学者が『土偶を読む』に向き合わなかったいくつかの理由
知の「品質管理」
まとめ― 「ポスト真実時代」の専門知の役割
 引用・参考文献

おわりに
感謝に次ぐ感謝

【執筆者紹介】(順不同)

小久保拓也 (コクボ タクヤ)
1976年、埼玉県生まれ。八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館学芸員。同館での展示・史跡整備・世界遺産を担当。主な論文として「縄文時代の漆」『JOMON』7特定非営利活動法人 国際縄文学協会(2018)、「青森県における縄文時代墓の諸様相」『列島における縄文時代墓制の諸様相』縄文時代文化研究会(2019)、「土偶(青森県風張1遺跡出土)」『國華』1496國華編輯委員会(2018)、「是川石器時代遺跡での保存・活用、地域との協働」『文化遺産の世界』40 NPO法人文化遺産の世界(2022)がある。

山田 康弘 (ヤマダ ヤスヒロ)
1967年、東京都生まれ。国立歴史民俗博物館教授を経て、東京都立大学人文社会学部教授。専門は先史学。縄文時代の墓制を中心に当時の社会構造・精神文化について研究を行う一方で、考古学と人類学を融合した研究分野の開拓を進めている。著書に『縄文人も恋をする! ?』(ビジネス社、2022)、『縄文時代の歴史』(講談社、2019)、『縄文時代の不思議と謎』(実業之日本社、2019)がある。

佐々木 由香 (ササキ ユカ)
金沢大学古代文明・文化資源学研究所考古科学部門特任准教授。明治大学黒耀石研究センター客員研究員。主な著者に「縄文人の植物利用―新しい研究法からみえてきたこと―」工藤雄一郎・国立歴史民俗博物館編『ここまでわかった!縄文人の植物利用』新泉社(2014)、「植物資源利用からみた縄文文化の多様性」『縄文文化と学際研究のいま』雄山閣(2020)がある。

山科 哲 (ヤマシナ アキラ)
1973年、北海道生まれ。茅野市尖石縄文考古館勤務。同館の企画展『ちっちゃい土器の奥深い世界』(2017年)、『あさばち 縄文人のうつわの作り分け』(2018年)、『背中から見る土偶』(2021年)などを通じて、これまであまり取り上げられなかった角度から資料を紹介、来館された方々にちょっとした新たな発見をしてもらいたいと思っている。主な論文「霧ヶ峰黒曜石原産地における黒曜石採掘と流通」(『移動と流通の縄文社会史』、雄山閣)がある。

白鳥兄弟 (ハクチョウキョウダイ)
1971年、フィリピン生まれ。横浜ユーラシア文化館主任学芸員、東京都公認ヘブンアーティスト。専門は骨角器、特に銛頭など狩猟漁撈具。博物館で考古学の学芸員として勤務するかたわら、土偶マイムのパフォーマンスを行っている。主な著書に、横浜市歴史博物館監修『おにぎりの文化史』(河出書房新社、2019)がある。

松井 実 (マツイ ミノル)
1988年、岐阜県岐阜市生まれ。東京都立産業技術大学院大学助教。専門は工業設計と文化進化としているが難しいことはわからない。千葉大学特任研究員、富士通デザイン、フリーランスウェブデベロッパーを経て現職。博士(工学)。https://xerroxcopy.github.io

金子 昭彦 (カネコ アキヒコ)
1964年、静岡県生まれ。(公財)岩手県文化振興事業団岩手県立博物館学芸第三課長。専門は縄文時代・土偶。主な著書に「遮光器土偶」『縄文時代の考古学11心と信仰』(同成社、二2007)、『遮光器土偶と縄文社会』(同成社、2001)、編著に『月刊考古学ジャーナル』No.745「特集今日の土偶研究」(ニューサイエンス社、2020)がある。

吉田 泰幸 (ヨシダ ヤスユキ)
1975年、愛知県生まれ。盛岡大学文学部社会文化学科准教授。専門は縄文考古学、縄文と現代、考古学の民族誌。主な論文に"Archaeological Practice and Social Movements: Ethnography of Jomon Archaeology and the Public"(共著 Journal of the International Center for、Cultural Resource Studies, Kanazawa University, Vol.2, 2016)、"Approaches to Experimental Pit House Reconstructions in the Japanese Central Highlands: Architectural History, Community Archaeology and Ethnology"(共著 EXARC Journal, 2021/4, 2021)がある。

菅 豊 (スガ ユタカ)
1963年、長崎県生まれ。東京大学東洋文化研究所教授。専門は民俗学。主な著書に『「新しい野の学問」の時代へ―知識生産と社会実践をつなぐために―』(岩波書店、2013)、『鷹将軍と鶴の味噌汁―江戸の鳥の美食学』(講談社、2021)、編著に『パブリック・ヒストリー入門―開かれた歴史学への挑戦―』(勉誠出版、2019、北條勝貴との共編著)がある。