国立歴史民俗博物館・山下優介・鷲頭桂編『REKIHAKU 特集・恵みの雨、災いの雨 遺跡に残る洪水と対峙した人びと』(国立歴史民俗博物館)

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6月下旬刊行予定です。

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国立歴史民俗博物館・山下優介・鷲頭桂編
『REKIHAKU 特集・恵みの雨、災いの雨 遺跡に残る洪水と対峙した人びと』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-86766-127-7 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信

国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

特集は「恵みの雨、災いの雨 遺跡に残る洪水と対峙した人びと」。
遺跡に残された洪水痕跡や、洪水を克服しようとした人びとの営為に考古学的に迫り、洪水がもつ二面性や、それに対峙した過去の人びとの姿を描き出す。

降水量に恵まれた日本列島の人びとは、いつの時代も河川とともに暮らしてきた。水と人の共生の歴史において、弥生時代は重大な契機となった。水田稲作を基礎とした生活は豊かな水によって支えられ、人びとは米を手に入れたが、同時に、洪水や干ばつの影響もより深刻になっただろう。

過去の自然環境の変化はどうだったのか。遺跡から出土した木製品からは何がわかるのか。気候変動が社会にどれほどの影響を与えたのか。維持されたムラと放棄されたムラ、移り住む者と残る者、洪水の影響は遺跡ごとに異なる。

洪水と絶えず向き合ってきた人びとは、様々な手段で危機を乗り越えてきた。選択の一つ一つが歴史を次代へつないだそれらの様相を明らかにしていく。

特集執筆は、岡田憲一、大庭重信、篠原和大、中塚 武、村上由美子、宮﨑幹也、田中元浩、石井智大、若林邦彦、篠崎鉄哉。

特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。

歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

●特集趣意文

 本号が刊行される六月頃は、梅雨入りしている地域も多いだろう。近年はゲリラ豪雨や、線状降水帯による集中豪雨が引き起こす突発的な被害もあるが、大雨によってあふれた河川の洪水は、私たちの生活に密着した災害である。鬼怒川の氾濫が特に大きな被害を与えた関東・東北豪雨(二〇一五年)や、中国・四国地方をはじめ各地に甚大な影響を及ぼした西日本豪雨(二〇一八年)はいまだに拭いきれない災害の記憶といえる。

 一方で、雨がもたらす恩恵もまた大きい。降水量に恵まれた日本列島の人びとは、いつの時代も河川とともに暮らしてきた。水と人の共生の歴史において、弥生時代は重大な契機となる。水田稲作を基礎とした生活は豊かな水によって支えられ、人びとは米を手に入れた。しかし同時に、洪水や干ばつの影響もより深刻になっただろう。本特集は、「遺跡」と「洪水」をキーワードに、洪水がもつ二面性や、それに対峙した過去の人びとの姿を描き出す。

 まず、遺跡に残された洪水痕跡や、洪水を克服しようとした人びとの営為に関する考古学的な成果をみていこう。ここで注目する一つが、弥生時代の水田遺構である。生活空間を覆いつくした洪水被害だけでなく、河川の恩恵を受けながら営まれ続けた水田、またそこに生まれた治水・利水の技術や工夫を確かめ、雨や河川とともに生きた人びとの実態に迫る。

 次に、人びとをとりまく自然環境の変化に話題を転じよう。本テーマでは、二〇二〇年以降、学界で高い関心を集める酸素同位体比年輪年代法による古気候復元の研究をとりあげる。過去二六〇〇年間にわたる降水量変動が、高精度な年代値を伴って明らかになったことで、各地のムラを襲った洪水が決して局所的な災害ではない可能性が示されている。さらに、環境をとらえるもう一つの視点として、遺跡から出土した木製品に着目する。文献記録に残る多雨や洪水に応じた土木工事の内容を手がかりにしながら、木製品を通じてみえてくる、人と森林のかかわり方について思考をひろげてみたい。

 最後は、「集落の変化」と「土器の移動」という現象を題材に、洪水災害、あるいは洪水を引き起こした気候変動が社会にどれほどの影響を与えたか、最新の成果を踏まえて研究の到達点を示す。維持されたムラと放棄されたムラ、移り住む者と残る者、洪水の影響は遺跡が置かれる環境に大きく左右されるため、遺跡ごとに異なる対応が選択された。本特集の役割は、洪水と絶えず向き合ってきた人びとが、様々な手段で危機を乗り越えてきたことを再確認することである。選択の一つ一つが歴史を次代へつないだのである。(山下優介)

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【編者紹介】

国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

山下 優介(やました ゆうすけ)YAMASHITA Yusuke

国立歴史民俗博物館テニュアトラック助教(日本考古学) 【著書・論文】「文京区小日向台町遺跡出土炭化穀類の年代と出土土器圧痕調査」(共著、『東京大学構内遺跡調査研究年報』17、2025年)、「弥生・古墳時代移行期における近江系土器の移動とその背景」(東京大学大学院人文社会系研究科博士学位申請論文、2021年) 【趣味・特技】登山・土器づくり(挑戦中)

鷲頭 桂
(わしず かつら)WASHIZU Katsura

国立歴史民俗博物館准教授(日本絵画史) 【著書・論文】「並笛図屛風」(『国華』1566、2025年11月)、「秀頼版以降の帝鑑図―九州国立博物館所蔵「帝鑑図屛風」について」(『国華』1552、2025年2月)、「集められた扇絵」(『源氏絵研究の最前線』勉誠出版、2024年) 【趣味・特技】お気に入りの食器と酒器(ほとんど頂き物)での晩酌

【目次】

特集 恵みの雨、災いの雨 遺跡に残る洪水と対峙した人びと

【洪水が水田にもたらす恵みと災い】
水害に遭おうとも水田を営み続けた奈良盆地の弥生の人々(岡田憲一)

【気候の変化は水田の変化にあらわれる】
弥生時代水田の灌漑システムとその変化(大庭重信)

COLUMN【洪水とともにある遺跡の成立と盛衰】
登呂は安倍川の賜物――静岡県登呂遺跡を襲った洪水災害(篠原和大)

【弥生時代の考古学的年代観を刷新する】
酸素同位体比年輪年代法は弥生時代の理解をどう変えるか?(中塚 武)

【木材利用は広葉樹から針葉樹へと大転換した】
正倉院文書にみる木材移送と降水量変動との関わり(村上由美子)

COLUMN【遺跡発掘調査からわかる過去の水害事象】
琵琶湖と水害(宮崎幹也)

【環境変化に対する社会の対応とその克服】
環境変化は弥生社会に転換をもたらしたのか?(田中元浩)

【人の移動の多面性を列島史のなかに位置づけるために】
土器の移動から「避難民」がみえるか?(石井智大)

【環境要因と社会要因はどちらが変化の主役なのか】
降水量変動と古代以前の社会変化(若林邦彦)

COLUMN【過去の洪水を読み解く「ものさし」】
現代の水害研究から先史時代の洪水を考える(篠崎鉄哉)

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たかが歴史 されど歴史
条約は英語で書かれていた?――幕末外交の意外な事実(福岡万里子)

博物館マンガ 第16回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館
博物館のホームページとSNS(鷹取ゆう)

石出奈々子のれきはく!探検 第17回
れきし、はぎとられし(石出奈々子)

フィールド紀行
土地に刻まれた「記憶」を探る
~小城・三原・坂井~
第2回 アナログとデジタルの共演~広島県三原市本郷町の調査~
(土山祐之)

誌上博物館 歴博のイッピン
華やかな色紙帖をひもとく
実隆筆蹟色紙手鑑(高松宮家伝来禁裏本)
(鷲頭 桂)

歴史研究フロントライン
人・モノ・自然シンポジウム「同位体が拓く 自然史・人間史」
(坂本 稔)

EXHIBITION 歴博への招待状
企画展示「アイヌ民族と博覧会―150年の経験―」
(内田順子)

SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
同位体を武器に歴史を研究する
(若木重行)

これが私の仕事道具
アートナイフと質量分析装置
(齋藤 努)

くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の朝顔」のご案内

博物館のある街
愛知県豊田市
モノと記憶の展示
~2024年開館の豊田市博物館の常設展について~
(山田佳美)

くらしの由来記
長崎のネコと日蘭貿易
(松尾恒一)

研究のひとしずく
縄文人の考え方を知るために 
第3回●なぜ石棒を対照的な色にするのか
(中村耕作)

海外の日本研究から
知られざるサムライ
大英博物館「Samurai」展(2026.2.3-5.4)への道程とこれから
(ロジーナ・バックランド)

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