伝承文学研究会 第503回東京例会(2025年6月21日(土) 14:00より、國學院大學渋谷キャンパス 若木タワー5階・0508演習室)

研究会情報です。
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内容:
《輪講》
『直談因縁集』1-50話「行基ト智光ノ事 マフクダ丸ノ事〔尓時文殊師利〕」
岩井 哲治氏
《研究発表》
題目:『筆結の物語』に見える故実伝承―馬術の作法に関する言説をめぐって―
二本松 泰子氏
要旨:
『筆結の物語』は、尊経閣文庫にのみ所蔵される孤本の御伽草子である。奥書によると、文明12年(1480)に石井康長(法名は彜鳳(いほう))が著し、永正14年(1517)に十河六郎源儀重が書写したものという。擬人化された狸を主人公とする異類物ではあるが、物語の大半は、問答形式で語られる神祇・仏法・芸道・礼法などの知識によって構成されている。このことから、『筆結の物語』は、武士に必要な教養を童幼向けに啓蒙する作品として、先学において評されてきた。
そもそも『筆結の物語』に関するこれまでの研究は、異類物という特徴や問答形式の文体に焦点を当てた総論的な研究が主に進められてきた。今後は、個々の言説に関する各論的な考察も併せて深化してゆく必要があろう。
そこで、今回の発表では、『筆結の物語』の中から馬術の作法に関する言説を取り上げ、その特徴について分析する。というのも、当該の言説は、『筆結の物語』が参考図書として挙げている『今川大双紙』のそれとは若干齟齬が見られるのである。このような特異な様相を持つ言説をめぐって、『今川大双紙』よりも『筆結の物語』に近い叙述を有する書物群を分析し、それらの言説との比較検討を試みる。それによって、『筆結の物語』に見える故実伝承の具体相のひとつを明らかにし、この作品を読み解く新たな視座の手掛かりとして提示としたい。
*Zoomによる中継配信はありません。