全訳『男色大鑑』予告的あらすじ公開!★巻3の2「嬲りころする袖の雪(なぶりころするそでのゆき)」
Tweet井原西鶴が1687年に描き出した、詩情あふれる華麗・勇武な男色物語『男色大鑑』を現代に甦えらせるプロジェクトが始動します。
『男色大鑑』の、若衆と念者の「死をも辞さない強い絆」は、作品中、常に焦点となっている三角関係の緊張感とともに、長い間、誠の愛を渇望して止まぬ人々の心を密かに潤し続けてきました。
そんな作品群を、分かりやすい現代語と流麗なイラストによって新たに世に送り出します。
ここでは、そんな『男色大鑑』のあらすじを予告編的に紹介していきます。今回は巻三の二を紹介いたします。
※あらすじの一覧は以下で見ることができます。
https://bungaku-report.com/blog/2018/07/post-235.html
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■巻三の二
嬲りころする袖の雪(なぶりころするそでのゆき)
雪責めしたのは、ただお前だけだと言ってほしかったから......。
伊賀の国守のお小姓組の一人に山脇笹之介(やまわきささのすけ)という才覚優れた者がいた。清少納言にも劣らない機転の持ち主で、国守の寵を得、国元で気ままにくらしていた。ある日仲間と追い鳥狩(とがり)に出かけた笹之介は運よく雉(きじ)を捕らえるが、実はその雉は、笹之介に心を寄せる家中の伴葉右衛門(ばんのはえもん)が用意した雉であった。事情を知った笹之介は程なく葉右衛門と衆道の契りを結ぶ。
ところが春の盛りに花見の宴が開かれた折、五十嵐市三郎(いちさぶろう)という美しい若衆に引き留められて酒を飲みかわす葉右衛門の姿を見た者が、それを笹之介に知らせてしまう。嫉妬に胸を焦がす笹之介は帰ってきた葉右衛門を庭に閉じ込め、雪が降りしきる中に立たせたままにする。葉右衛門はさまざまに釈明を試みるが、笹之介は葉右衛門を丸裸にし、ひたすらに嬲り続ける。やがて息も絶え絶えになった葉右衛門は、笹之介が「ありがたやの御弔い(おんとむらい)やな」と鼓に合わせて歌いかけたところで、ついにむなしくなってしまう。
笹之介は驚き、その場で葉右衛門の後を追い、切腹して果てる。笹之介の死後に寝間(ねま)を見ると、そこには枕の二つ並んだ整えられた床と酒が用意されていた。嬲り殺すまで愛した男への心配りがこれほどのものであったとは......それを見た者は皆心を打たれたのだった。
嫉妬がいかに人の行動をエスカレートさせていくのか―相手が下手に出れば出るほど相手を嬲り、ついに死にいたらしめてしまう笹之介。その抑えられないほどの昂ぶりと、葉右衛門を待ち焦がれていた心を最後の寝間の描写が映し出している。
★杉本紀子(すぎもと・のりこ)東京学芸大学附属国際中等教育学校主幹教諭。
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■編集部より
2018年11月に、『男色大鑑』八巻中、前半の武家社会の衆道に取材した作品四巻までを収録した〈武士編〉を刊行し、後半の四巻を〈歌舞伎若衆編〉として、2019年6月に刊行します。
イラストに、あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ、といった豪華な漫画家陣が参加。現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。
このプロジェクトが気になった方は、ぜひ以下の特設サイトをご覧下さい。
また本書の詳しい紹介はこちらです。ご予約受け付け中です!
●2018.11月刊行予定
染谷智幸・畑中千晶編『全訳 男色大鑑〈武士編〉』
ISBN978-4-909658-03-6 C0095
四六判・並製・192頁 定価:本体1,800円(税別)
※ご予約受付中!
amazonはこちら https://www.amazon.co.jp/dp/4909658033/