【座談会】痛みはどんなにおいがするか、って?~ウクライナの戦争証言集から言葉の『現在』を問う~【登壇者:オスタップ・スリヴィンスキー/桐野夏生/平野啓一郎/ロバート キャンベル】(2024年1月19日(金曜日)19時、日比谷図書文化館コンベンションホール)※要申込

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公式サイト・お申し込みはこちら。
https://jp.surveymonkey.com/r/M3DBSQX

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開催概要
タイトル:座談会 痛みはどんなにおいがするか、って?
~ウクライナの戦争証言集から言葉の『現在』を問う~

日時:2024年1月19日(金曜日)19時開始(18時半開場)
会場:日比谷図書文化館コンベンションホール (東京都千代田区日比谷1-4)
参加:参加無料・事前登録制(定員200名)※定員に達し次第受付終了
言語:日本語(逐次通訳)
登録:https://jp.surveymonkey.com/r/M3DBSQX
主催:国際交流基金(JF)
協力:日本ペンクラブ

座談会 痛みはどんなにおいがするか、って?
~ウクライナの戦争証言集から言葉の『現在』を問う~
国際交流基金(JF)はウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキー氏を招き、2024年1月19日(金)午後7時から、日比谷図書文化館で座談会「痛みはどんなにおいがするか、って?~ウクライナの戦争証言集から言葉の『現在』を問う~」を開催します。スリヴィンスキー氏は戦時下のウクライナで避難者や市民の証言を聞き取り、1冊の文芸ドキュメント『戦争語彙集』にまとめられました。日常的に私たちが使う言葉の意味が、戦時下でどのように変容してしまったのか。日本ペンクラブ協力のもと、登壇者に同会長で作家の桐野夏生氏、作家・平野啓一郎氏、日本文学研究者で、『戦争語彙集』を日本語訳したロバート キャンベル氏を迎えて、戦時下で変容していく言葉の「現在」について話し合います。

――痛み БІЛЬ――
 痛みはどんな臭いがするか、って?臭いのバリエーションは、一度緊急避難車両に乗ればたいがい分かるもんだよ。
 まず何よりも、市場の精肉売り場の臭い。解体したての肉の臭い。血液の、甘く、わずかに金属っぽさの混じった臭いだな。
 痛みは、汗とか、何日も洗っていない体の臭いもするし、アルコール、ヨウ素溶液、塩素の臭いなんかも付け加えられるね。
 この臭いの束を仕上げるのは、戦場の煙とコーヒー、そしてタバコの臭い。
 痛みの臭いは、忘れられるもんじゃない。
――アンドリー リヴィウ在住      
『戦争語彙集』(岩波書店)より

戦争は、人が言葉に抱く意味を変えてしまいます。暴力を前に言葉は武器ともなり、人を守るシェルターともなります。
 この度初めて来日するウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキー氏は、ロシアの全面的侵攻に際して、ボランティアとしての支援活動を行うかたわら、日々使われている言葉の変化に気づき、避難した多くの人々の声に耳を傾けました。避難者による証言77篇を一冊の辞書に見立てて編み、文芸ドキュメントとして出版しました(СЛОВНИК ВІЙНИ、2023年5月刊)。2022年から欧州を中心に10数か国語に翻訳され、暮れには日本語でも読めるようになります(『戦争語彙集』岩波書店、12月22日発売)。
 この座談会にはスリヴィンスキー氏を招き、日本の書き手と共に戦時下の言論と言葉の変わりようについて語り合います。司会は昨年ウクラナイを訪ね、日本語訳を担当したロバート キャンベル。
戦争の言葉、と聞いてあなたはどんな語彙を想像しますか?
―― 日本文学研究者 ロバート キャンベル

登壇者
オスタップ・スリヴィンスキー 詩人
詩人、エッセイスト、翻訳家、文芸評論家、研究者。1978年リヴィウ生まれ、在住。リヴィウ大学スラブ言語文学研究所で博士課程を修了。これまで5冊の詩集と、ロシアによるウクライナ侵攻下で避難者ら市民の証言を聞き取りまとめた文芸ドキュメンタリー『戦争語彙集』を出版。ウクライナ・ブルガリア語詩集アンソロジー『Ukrainian Poetic Avant-Garde』(2018)、現代エッセイ集『The Ark Named Titanic. 20 essays about humanity of AD 2020』(2020)、近現代ウクライナ詩集『Among Sirens. New poems of War』(2023)の編者を務めた。ウクライナペンクラブ副会長。ウクライナ・カトリック大学文芸学科准教授。

桐野夏生 作家、日本ペンクラブ会長
1998年『OUT』で第51回日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で第121回直木賞、2003年『グロテスク』で第31回泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で第17回柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で第5回婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で第44回谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で第19回紫式部文学賞、『ナニカアル』で2010年第17回島清恋愛文学賞と2011年第62回読売文学賞、2021年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2023年『燕は戻ってこない』で第64回毎日芸術賞と第57回吉川英治文学賞など多くの文学賞を受賞。2015年秋には紫綬褒章を受章。多くの作品が英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、インドネシア語等に翻訳され、映画化、TVドラマ化されている。国際的評価が高く、現代日本の文学界を代表する作家である。

平野啓一郎 作家、日本ペンクラブ国際委員長
1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。40万部のベストセラーとなる。以後、一作毎に変化する多彩なスタイルで、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書に、小説『葬送』、『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』、『マチネの終わりに』、『ある男』等、エッセイに『私とは何か「個人」から「分人」へ』、『「カッコいい」とは何か』、『死刑について』等がある。近年、作品の映像化が続く。最新小説は『本心』。2023年、構想20年の『三島由紀夫論』を遂に刊行し、第22回小林秀雄賞を受賞。

ロバート キャンベル 日本文学研究者
近世・近代文学を専門とする日本文学研究者。文学博士。早稲田大学特命教授、早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)顧問、国文学研究資料館前館長、東京大学名誉教授。『新日本古典文学大系明治編3漢文小説集』(共編著、岩波書店)、『よむうつわ』上下(淡交社)、『井上陽水英訳詞集』(講談社)、『日本古典と感染症』(編著、角川ソフィア文庫)など編著書多数。