東京大学ヒューマニティーズセンター オープンセミナー「文学研究と美術研究の越境―明治小説の口絵・挿絵を考える―」(2019年11月25日(金)、東京大学伊藤国際学術研究センター3階 中教室)
Tweet講演会情報です。
●公式サイトはこちら
https://hmc.u-tokyo.ac.jp/ja/open-seminar/2019/literature-arts-cross-border/
--------------------
日時:2019年11月25日(金)17:30 - 19:30
場所:東京大学伊藤国際学術研究センター3階 中教室
入場無料
事前登録不要
報告者:出口智之(総合文化研究科・准教授)
従来、文学研究と美術研究は異なる方法を持つ学問領域として、別個に研究されるのが通例でした。しかし「源氏物語絵巻」の昔から、日本では伝統的に文学作品を絵と組合わせ、セットで受容することが広く行われてきました。特に江戸期の一般庶民向けの書物では、俳書のような例を除き、非常に多くの口絵や挿絵が用いられています。そして江戸の戯作者たちは、それらの絵にみずから下絵を描き、その絵の周りに本文を書入れる形で版面の全体を構成していたのでした。
そのような習慣は、明治維新を経た文明開化の時代を迎え、一掃されてしまったのでしょうか? いいえ、実は尾崎紅葉や樋口一葉、泉鏡花、島崎藤村、田山花袋といった近代の作家たちも、みな自作に附される口絵や挿絵の下絵を描いたり、あるいは描くべき内容を文章で指示したりしていたのです。だとすれば、小説の本文だけを読んでいては、彼らの作品は十分に理解できないのではないでしょうか。また逆に、一点ものの肉筆画や、著名な浮世絵ばかりを美術作品として研究していては、絵と文をセットとして作り上げてきた日本文化の重要な側面を見落してしまうのではないでしょうか。
今回は、近代作家たちが口絵や挿絵にいかに関わり、何を試み、そしてそこには近代出版と関わるどのような問題があったかを概観しつつ、文学研究と美術研究の双方が見過してきた問題について探ってみたいと思います。
形式:単独講演(司会・コメンテーター・ディスカッサントなし)、スライドと配付資料を併用)