ご挨拶●新たな学の創成に向けて(久留島 浩)★『歴史情報学の教科書』全文公開
Tweetご挨拶 ● 新たな学の創成に向けて
久留島 浩(国立歴史民俗博物館 館長)
平成28(2016)年度より、国立歴史民俗博物館では「総合資料学の創成」事業を開始した。この事業は、大学や博物館などにあるさまざまな歴史資料を、多様な研究分野から分析することで、個々の資料に新たな情報を付与して新しい研究資源にするとともに、研究資源化した大学の博物館の歴史資料をネットワークで結ぶことで共有しようとするものである。この新しい学問を構築するために、わたしたちは、人文情報学と協業すること、文・理および文・文という異分野間の研究連携を図ること、この研究成果を地域における教育に活かすことを三本柱として設定し、これらを連携させるべく努力している。本書はこの3つの柱のうち、特に人文情報学との協業に関わって、人文情報学がどのように総合資料学という新しい歴史資料学(あるいは歴史情報学)に寄与しうるのか、そのことで人文情報学自体が学としての内容を豊かにすることができるのか、ということを示そうと試みて編集した「教科書」である。新たな学問を学問として成り立たせるためには、新たな人材の教育方法を考案することが必須であり、目的意識的かつ持続的にその教育を行う(あるいは自ら学ぶ)ことができなければ学問とはいえない。その意味では、どのようなカリキュラムを組めば、その学問の輪郭を明確にすることができるのか、という点が最も重要であると考える。
国立歴史民俗博物館では、現在、大学共同利用機関として、大学の研究機能強化に資するような共同研究の推進にとどまらず、教育面での機能強化に寄与しうる教育プログラムの考案と実践にも力を入れている。ほかの関連する事業とともに、総合資料学が大学で必要とされる教育(学習)プログラムとして成り立つように、多くの大学と協定を結んで連携を進めようとしている。本書が、こうした活動の第一歩となれば幸いである。
「総合資料学の創成」公式サイト:https://www.metaresource.jp/
総合資料学情報基盤システム「khirin」
公式サイト:https://khirin-ld.rekihaku.ac.jp/
日本歴史資料をさまざまな側面から見ていくため、また日本にある/日本の歴史資料をゆるく総合的に見るためのシステムとして作られました。歴博及び歴博と連携をしているさまざまな機関の資料データ、歴史研究のデータを検索できます。
詳しくは本書68頁をご覧ください。
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【全体目次】
ご挨拶○新たな学の創成に向けて(久留島 浩)
はじめに(後藤 真)
chapter1 人文情報学と歴史学
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
chapter2 歴史データをつなぐこと―目録データ―
山田太造(東京大学史料編纂所)
chapter3 歴史データをつなぐこと―画像データ―
中村 覚(東京大学情報基盤センター)
●column.1 画像データの分析から歴史を探る―「武鑑全集」における「差読」の可能性―
北本朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
chapter4 歴史データをひらくこと―オープンデータ―
橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
chapter5 歴史データをひらくこと―クラウドの可能性―
橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
chapter6 歴史データはどのように使うのか―災害時の歴史文化資料と情報―
天野真志(国立歴史民俗博物館)
●column.2 歴史データにおける時空間情報の活用
関野 樹(国際日本文化研究センター)
chapter7 歴史データはどのように使うのか―博物館展示とデジタルデータ―
鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)
chapter8 歴史データのさまざまな応用―Text Encoding Initiative の現在―
永崎研宣(人文情報学研究所)
chapter9 デジタルアーカイブの現在とデータ持続性
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
●column.3 さわれる文化財レプリカとお身代わり仏像―3Dデータで歴史と信仰の継承を支える―
大河内智之(和歌山県立博物館)
chapter10 歴史情報学の未来
後藤 真(国立歴史民俗博物館)
おわりに