本を運び、売る。出版社が地域のイベントに参加すること。(文学通信・松尾)

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 これまで文学通信は神保町ブックフリマ、神保町ブックフェスティバル、不忍ブックストリートとさまざまなイベントに参加してきました。これらに並ぶ思い出深いイベントの一つが、2024年11月に参加した「熊野古道一箱古本市」(三重県尾鷲市)です。
 文学通信にとって初の一箱古本市参加であったことに加え、このイベントの寄付金で市に寄贈される本の一冊として、弊社刊行の『開講!木彫り熊概論』が選ばれたこともとても嬉しい出来事でした。

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「寄付金活用、本10冊送る 古本市実行委、尾鷲市教委に」(『伊勢新聞』2025/02/19)
https://www.isenp.co.jp/2025/02/19/124875/

文学通信
北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室・
田村実咲[編]
『開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する』(文学通信)
ISBN978-4-86766-054-6 C0070
四六判・並製・368頁・口絵カラー
定価:本体2,200円(税別)

これから一箱古本市や遠方でのイベントへの参加を考えている皆様に、当日の準備や選書、どのくらい売れたのかなど、ちょっとした参考にお読みいただけますと幸いです。

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▲会場の熊野古道センター

●1日目
今回、東京駅で参加出版社の皆さんと待ち合わせる予定でしたが、ホームにたどり着くまでに想定外、本当に想定外の事態が重なり、予約していた新幹線を逃します。ここから会場の三重県尾鷲市まで単独行動に。一人ならまだしも団体行動で乗り遅れるなんてと落ち込みつつ、しかし乗り換え時間に余裕はあるので名古屋駅で合流できるはず、と安心していた矢先に乗車中の東海道新幹線が大雨の影響で止まります。ようやく運転再開し、大混乱の名古屋駅を経て特急「南紀」へ。尾鷲駅に着いたのは到着予定から3時間後の15時半頃でした。

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▲遅めのお昼ご飯、さんま寿司。

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▲特急「南紀」の車窓から。

尾鷲は大雨です。ここのあたりでは、雨粒が地面から激しく跳ね返るほどの雨が降ることも珍しくなく、「尾鷲の雨」と呼ばれています。

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傘を差しながら向かったのはトンガ坂文庫さん。
いろんな面で今回の旅をお助けいただいており、出版社一同で一箱古本市に参加できたのもトンガ坂文庫さんのおかげ。お店は尾鷲市九鬼町の細い路地にあり、くねくねと階段を上ってたどり着きます。

トンガ坂文庫HP

●2日目
熊野古道一箱古本市の会場は、熊野古道や周辺の自然・歴史・文化を深く理解するための案内所、三重県立熊野古道センター。

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▲目の前の山々。

本は事前に発送しました。地方史研究協議会編集シリーズ「地方史はおもしろい」を刊行している出版社として、地域の歴史をテーマにしたものを中心に選書しました。さらに「文学通信」が出版社であることを知っていただけるよう、ポストイットにコメントを書いて貼ったりしています。荷物は控えめに、机に敷く布、ブックスタンド、ポストイット、養生テープ、ゴミ袋、文学通信缶バッジ。机と箱は現地でお借りしました。
書店員をしていた際、書店にとって「棚があること」を意識するのは大事なのかもしれないと漠然と思っていましたが、一箱古本市に初めて参加し、机や台、箱はやはり不可欠な存在なのだと改めて面白く感じました。

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▲手前から文学通信、青土社、法政大学出版局、青弓社のブース。

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▲今回は「旅のしおり」係でした。旅行スケジュールとともに参加出版社の皆さんから募ったエッセイも冊子にしました。

持って行った32冊のうち12冊ご購入いただきました。

一箱古本市終了後は、トークイベント「出版社の仕事とは?――本をつくり、届ける現場」を開催。今回の古本市には4社で参加しています。「なぜライバルであるはずの出版社同士が一緒に古本市に参加するのか?」が大きなテーマになりました。

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▲イベント会場。トンガ坂文庫・本沢さんと青土社営業・榎本さん。

●3日目
朝から海や山を散策したのち尾鷲に別れを告げ、特急「南紀」に乗り、津駅で下車。そこから奥山銘木店さんへ。

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津駅から快速「みえ」で名古屋駅、行きと同じく東海道新幹線に乗り、無事に東京駅に帰ってきました。

●まとめ
 出版社が地域のイベントにお邪魔する際、どのように場に馴染み、どう振るまえばよいのか。当日まではそんなことを考えていました。しかし会場では、以前から弊社を知る方々に「このままの意志で本づくりを続けてほしい」「マニアックさは維持してほしい」と励まされ、初めての方には「こんな本があったのか!」と驚き喜んでいただき、非常に有難い限りでした。 よく言われることではありますが、SNS以外で多くの方の声が聴けるのはこうした対面販売イベントの良さです。噛みしめました。そして、規模やジャンルの異なる出版社が集まり、本を販売する場所を作れたのは、やはり、核となる「トンガ坂文庫」さんの存在があったからこそです。地域に書店という軸があることの大切さを実感しました。今後も書店とともに、いろんな場所に本を運んでいくことができたら嬉しいです。
 そして、今回は文学通信・松尾の退職記念記事です。在職中は大変お世話になりました。書店から出版社へ仕事の場を移し、右も左もわからない時期から、皆様のご厚情に支えていただきましたこと、心より感謝申し上げます。