民族藝術学会 第179回研究例会(2025年12月20日(土曜日) 14:00〜16:45、大阪市立東洋陶磁美術館・地下講堂)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
https://mg-gakkai.org/2025/10/16/1143/
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

日時: 2025年12月20日(土曜日) 14:00〜16:45

会場: 大阪市立東洋陶磁美術館・地下講堂
    〒530-0005 大阪市北区中之島1-1-26

※対面のみでの開催です。ご参加の方は、美術館南側通用口からご入館いただき、警備窓口で参加の旨を伝えて入館登録をお願いします。なお、展示室の観覧は有料となりますので、ご希望の方はエントランスホール受付にてチケットをお求めください。

交通:
①京阪中之島線「なにわ橋」駅1号出口すぐ
②Osaka Metro 御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅1号出口
③Osaka Metro 堺筋線・京阪本線「北浜」駅26号出口各駅から約400m(大阪市中央公会堂東側)

テーマ:「陶磁器の修復―再生と創造」

陶磁器は文化財の中でも堅牢で、伝世品や出土品が良好に残るため歴史的資料として貴重である。しかし破損のリスクも高く、その貴重さゆえに修復を経て再び用いられた例も知られる。近年世界的にも注目される「金継ぎ(Kintsugi)」は、陶磁器の伝統的修復の一つであるが、同時に破損を美へと転じる創造的側面をも有し、現代の持続可能な価値観とも親和性が高い。本例会では、異なる三つの視点から、陶磁器修復の再生と創造の諸相を多角的に検討する。

内容:

14:00〜14:20 趣旨説明
   「古陶磁の修復をめぐって」
   小林仁(陶磁、大阪市立東洋陶磁美術館)

14:20〜15:00 研究発表1
   「志賀直哉旧蔵朝鮮白磁大壺の特質とその修復」
   鄭銀珍(陶磁、大阪市立美物館)

小説家の志賀直哉(1883-1971)旧蔵の朝鮮白磁大壺は、韓国で「タルハンアリ(満月壺)」と称される朝鮮時代の白磁の粋を示す作例で、雄大な造形と雪のような色調を特色とする。志賀から親交のあった東大寺管長・上司海雲(1906-1975)に贈られ、長く塔頭の観音院に飾られていたが、1995年の盗難未遂で粉々に破損した。その後、大阪市立東洋陶磁美術館に破片の状態で寄贈され、約半年の修復を経て蘇った「奇跡の壺」である。本発表ではその歴史的意義と位置づけ、修復の経緯を踏まえつつ、本作品の特質と修復の意義を検討する。

15:00〜15:10 休憩

15:10〜15:50 研究発表2
   「令和のいま、美術品修復はどうあるべきか」(オンライン発表 [会場にて映写])
   繭山悠(美術古陶磁復元師、繭山晴観堂)」

近年、様々な分野の進歩により、美術品における歴史的あるいは科学的な研究が多くの新事実を明らかにする中、修復は今後どのように時代に沿うべきか、修復が必要なもの、または必要でないものとはどこで判断するべきかなど新しい基準となる位置を探すことが求められるようになっている。
現在、美術品の修復が情報公開やメディアによって注目を集めつつあると同時に、旧時代に修復されたものの経年劣化が表面的にも進行している現実があり、今後の美術館展示や美術品コレクターへのアプローチの方法がますます問われる時期にさしかかっている。
また修復を施すにあたり、修復箇所の判別がつくものとつかないものなど80年近くの業務実績から紹介したい。

15:50〜16:30 研究発表3
   「陶片の手触り|石黒宗麿と八瀬陶窯」
   中村裕太(現代美術・工芸文化論、京都精華大学)

石黒宗麿(1893-1968)は、1936年に京都市左京区八瀬に「八瀬陶窯」を築窯し、晩年までこの地を拠点に陶器作りを続けてきた。石黒は、1955年に鉄釉陶器の技法による重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されるなど、中国や朝鮮の古陶磁に肉迫しつつも、独自のエスプリを持った陶芸家として知られる。ところが、石黒の手によってこの土地に捨て去られた陶片からは、陶器作りに苦心する新たな一面を見出すことができる。
本発表では、2020年に京都国立近代美術館にて開催した「ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ_?」展を取り上げる。作家・視覚障害のある方・学芸員が協働し、手や耳の感覚を研ぎ澄ませ、壺のなかに入ったひとつひとつの陶片に触れる新たな鑑賞方法の実践について考察していく。

16:30〜16:45 質疑応答

担当理事: 小林仁(大阪市立東洋陶磁美術館)