川端康成学会:川端康成学会第50回記念大会(2024年6月30日(日)10:15(総会10:00)〜、専修大学神田校舎(140年記念館)3F黒門ホール)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら

https://tinyurl.com/3uurchye
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

【開催趣旨】
 川端康成が世を去って既に50年が経過した。川端生前に発足した川端康成学会(当時川端文学研究会)の大会も今回で記念の50回を迎えることになった。その記念の会に相応しく、今回は盛りだくさんの企画を準備した。
 昨今アダプテーションの議論が喧しいが、川端の場合には何回もアダプテーションが繰り返される作品が多く、しかもそのアダプテーションが多様なジャンルに亘っている、ということが特徴的であり、まさしく川端にこそアダプテーション研究というアプローチが有効に思われる。本学会でも2年前の大会で「川端文学の21 世紀―アダプテーションの地平―」というテーマを扱ったが、今回は「片腕」一作に絞り、あの不思議な短編が、様々なジャンルにおいて、多様な翻案が繰り返されていることの意味を探ってみたい。「片腕」を原作としたアダプテーション作品には2024年5月末時点で7編が確認されるが、未公開の映像や上演記録を製作者ご本人から提供いただいたりすることで、その全ての作品を鑑賞することを可能にした。
 この貴重な機会にそれらの比較鑑賞を通して、アダプテーションされたそれぞれの作品の持つ批評性を探りながら、そうしたアダプテーションを促す原作「片腕」の魅力に迫ってみたい。その延長に「片腕」のみならず川端文学の中にあるだろう、アダプテーションを促すような要素を見定めるべく、会場に参加されたすべての方を巻き込んで議論を深めてみたい。

【プログラム】
Ⅰ 川端康成学会令和6年度総会(10:00~10:15)

Ⅱ 川端康成学会第50回大会「7本の片腕―「片腕」アダプテーションの諸相―」(10:15~17:30)

開会の辞 (総合司会)川端康成学会事務局長:日本大学非常勤講師 青木 言葉
1.基調講演
「〈片腕〉を呼ぶ幻想/「片腕」が喚ぶ幻想」武蔵野大学元教授 原 善

2.「片腕」アダプテーションの鑑賞(解説と上演・上映)
 午前の部(11:00~12:10)
  (1) 映画「片腕 ONE ARM」   解説 東北大学大学院准教授 赤井 紀美
  (2) TVドラマ「妖しき文豪怪談・片腕」
                解説 米子工業高等専門学校助教 辻 秀平
  (3) 映像演劇「片腕」 解説 高崎商科大学短期大学部非常勤講師 細島 大

午後の部(13:00~17:30)
  (4) 幻燈舞台「頬づえ」    解説 立命館大学博士後期課程 吉野 莉奈
  (5) 舞台「片腕」       解説 東北大学大学院准教授 仁平 政人
  (6) イマーシブ・ダンス・パフォーマンス「ONE ARM」
               解説 昭和女子大学大学院教授 福田 淳子
  (7) アニメーション「片腕」(杉井ギサブロー監督) 
                解説 専修大学非常勤講師 長谷川 徹

3.シンポジウム「アダプテーションされた「片腕」/アダプテーションされる「片腕」」
               進行:東北大学大学院准教授  仁平 政人
                  東北大学大学院准教授  赤井 紀美
                  昭和女子大学大学院教授 福田 淳子
                  映画監督 杉井 ギサブロー
                  演出家  佐藤香聲
                  映画監督・映像作家   奥 秀太郎
閉会の辞          川端康成学会会長:鶴見大学教授 片山 倫太郎

Ⅲ 懇親会(18:00~)
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【発表要旨】
*原善「〈片腕〉を呼ぶ幻想/「片腕」が喚ぶ幻想」(武蔵野大学元教授)
 「片腕」(「新潮」1963・8~64・1)は、川端康成の晩年の名作短編であるだけでなく、〈神秘的な〉作風を大きな特徴とする川端康成が沢山ものした幻想作品の中でも傑出し たものである。それのみならず、幻想文学の名作を集めたアンソロジーには必ずと言ってもいいほど収められている、日本の(あるいは世界の)幻想文学の傑作である。
 旧稿「「片腕」論―そのフェティシズムの構造を中心に」(『川端文学への視界1』教育出版センター、1985・1。後『川端康成の魔界』有精堂、1987・4)では、副題どおりに〈フェティシズムの構造〉として、その幻視の在りようを明らかにしたが、本発表ではさらに発展させて、「片腕」の持つ幻想の複層性について論じてみたい。
 そうした幻視・幻想とも関わるが、作者川端における〈腕〉フェチといったレベルだけでないところでの「片腕」を生み出した川端文学の源流をも探ってみたい。
 「片腕」は多くの現代作家によってオマージュ作品が捧げられているが、さらにはジャンルを異にしたところでの翻案であるアダプテーション作品も多く作りだされている。本発表ではそうした翻案の派生を促す要因を、上に見た作品そのものの持つ幻想の特質の中に探ってみたい。

【上映・上演作品紹介】
1 映画「片腕ONE ARM」 
 2008年6月1日にCINEMA DEMANCHE(日曜シネマ倶楽部)で上映された15分の短篇映画。監督・脚本:Akemi Tachibana。出演:岡本裕輝、おうのあき、はしもとまさや。2008年のロードアイランド国際映画祭で「最優秀実験映画」部門の第二位を受賞しており、2010年にはブルックリン映画祭に「実験映画」として出品されている。

2 TVドラマ「妖しき文豪怪談・片腕」
 2010年8月23日に、NHK・BSハイビジョンにて放送されたテレビ番組。原作「片腕」のドラマ・パート(44分)と、ドラマの制作過程や作品の背景に関するドキュメンタリー・パート(30分)からなる2部構成作。ドラマ監督は映画『パラサイト・イヴ』やドラマ「世にも奇妙な物語」で知られる落合正幸。出演は平田満、芦名星ほか。

3 映像演劇「片腕」
 2023年12月9日、10日に、大田文化の森ホールで開催された馬込文士村空想演劇祭2023に「映像演劇」として上演された23分の作品。映像ディレクター・編集:米本直樹。構成・演出:斉木和洋。出演:劇団山の手事情社(谷洋介、名越未央、松永明子、渡辺可奈子、有村友花)。

4 幻燈舞台「頬づえ」
 2023年1月14日、15日、28日、29日に藝術工場◎カナリヤ条約(大阪市)で開催された「幻燈舞台2023」にて上演。25分の舞台作品。演出:佐藤香聲。出演:夜想過劇団(東はな、桜輝いちの、久保萌実、舟橋綾香、皆川楓)

5 舞台「片腕」(川端康成三部作) 
 台湾・日本国際共同企画「川端康成三部作」(山縣美礼プロデュース)の第2作である、約50分の舞台。2012年12月に台北、東京でワーク・イン・プレグレスショーイング公演(初演)が行われた後、2014年4月に東京にて本公演、同年12月に上海にてツアー公演が行われた。演出・脚色:ノゾエ征爾。 出演(本公演):菊沢将憲、中川晴樹、Jane Chen。

6 イマーシブ・ダンス・パフォーマンス「ONE ARM」
 映画監督・映像作家の奥秀太郎が演出を手がけ、義足のダンサー・大前光市を中心にしたイマーシブスタイルのファンタスティック・ダンス・ムービー。東京芸術劇場プレイハウスの舞台では、映像上映と大前のライブ・ダンス・パフォーマンスにより空間演出がなされた。
 映像には大前のほか美波、海音らが出演。音楽は大友良英、MERZBOW他が担当。

7 アニメーション「片腕」(杉井ギサブロー監督)
 2018年頃におよそ1年の期間で制作され、諸事情で一般未公開のままとなっている30分の短編アニメ映画。監督:山本暎一、杉井ギサブロー。 プロデューサー:丸山正雄、真木太郎。美術:深井国。出演:朴璐美、三木眞一郎。2019年度のアヌシー国際アニメーション映画祭に出品するべく準備された。