「梶井基次郎と"神隠し"の京都」~幻の「檸檬(れもん)」草稿、丸善に見参!~【座談会・棚田 輝嘉氏(実践女子大学国文学科)×河野 龍也氏(実践女子大学国文学科)11月23日(土)2部制 丸善京都本店B2催事会場 ※要申し込み】(東京展・2019年11月13日(水)~11月19日(火)丸善丸の内本店 1F入口横展示スペース、京都展・11月23日(土)~12月7日(土))丸善京都本店B2催事会場)
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※座談会申し込みは、上記公式サイトをご確認ください。
開催の経緯・概要
2019年5月10日、源氏物語を中心とする日本文学の研究に長い伝統を有する実践女子大学・実践女子大学短期大学部と、京都創生を進める京都市は、事業連携・協力に関する協定を締結しました。その最初の取り組みとして企画されたのが、今回の「梶井基次郎と"神隠し"の京都」東京展・京都展です。実践女子学園創立120周年(1899年創立)・実践女子大学文学部国文学科創設100周年(1920年創立)、丸善150周年(1869年創業)の記念展となります。
京都の文学的風土としての厚みは古典に限らず、近代においても名作を生み出しました。その筆頭に挙げられるのは、梶井基次郎(1901-1932)の短篇「檸檬」(『青空』1925.1)でしょう。「えたいの知れない不吉な塊」に心を押さえつけられた主人公は、苦しい現実を超越しようと、京都の街中をひたすら歩きまわります。位置感覚や方向感覚をあえて狂わせて見慣れた景色を一新しようとするこの作品の想像力のドラマは、碁盤の目のような町割りを持つ京都ならではの町歩きの感覚にもとづいていることから、これを〝神隠し〟にたとえて今回の展覧会を命名しました。
展示内容は、梶井の代表作「檸檬」の下書きを含む79枚の直筆原稿(1924年秋執筆、通称「瀬山の話」)、梶井の遺品の「やかん」、生前唯一刊行された作品集『檸檬』(1931.5、武蔵野書院刊)の初版本ほか関連書籍などの貴重な実物資料を展示し、パネルでは2011年に発見されたこの原稿の研究成果や、大正京都の町歩きの記憶を、古地図や写真から掘り起こしていきます。
本展示は、東京展・京都展の二会場巡回展示です。展示会場の丸善は、今年創業150周年(1869年創業)を迎えました。丸善京都店は、主人公が寺町二条の果物店(実在した青果店「八百卯」)で買ったレモンを爆弾に見立てて仕掛けていく作品の舞台で、1872年開設後、1907年に三条通麩屋町に再オープン、1940年に河原町通蛸薬師に移転し、2005年に一度閉店しましたが、2015年、河原町通三条BAL内で営業を再開しました。梶井が通ったのは三条麩屋町店舗時代ですが、現代の丸善店舗にも、文学ファンが時々レモンを置きにきて、梶井を偲んでいます。
座談会:2019年11月23日(土)
第1部 14:00~15:00、第2部 16:00~17:00(同内容)
会場:丸善京都本店 B2催事会場
出演者:棚田 輝嘉教授(実践女子大学国文学科)・河野 龍也教授(実践女子大学国文学科)
定員:第1部=30名様、第2部=30名様(応募者多数の場合は抽選)
参加費:無料
関連書籍を刊行、会場にて販売予定。
(「梶井基次郎「檸檬」を含む草稿群--瀬山の話--」2019年11月13日発行予定。武蔵野書院。予価未定)
座談会概要
京都展では、11月23日初日の開幕式のあと、座談会を予定しています。出演は、日本近代文学研究者の棚田輝嘉と河野龍也(ともに実践女子大学文学部国文学科教授)です。
棚田教授は、梶井文学の要素に「彷徨系」と「対母系」の二つの柱があることを指摘して、梶井の一見複雑な創作構想の絡み合いと展開を明快に分析した業績があります。マンガ等サブカルチャーに関しても該博な知識を持ち、また自身が学生時代を過ごした京都での生活体験などもふまえながら、梶井の魅力について語ります。
河野教授は、2011年に実践女子大学が入手した「瀬山の話」が多様な断片的構想の集合体であることを明らかにしました。そして、「分身小説」構想のねじれが中篇構想に破綻をもたらし、結果的に短篇「檸檬」の誕生につながったとする新説を提唱しています。また、「檸檬」の成立前には、都市幻想と郊外幻想のコントラストから主人公の孤独が照射される構想があったとし、「檸檬」の誕生の陰で忘れられた郊外小説の魅力を「瀬山の話」の中に発見しています。原稿にまつわる研究秘話を紹介します。