民族藝術学会 第178回研究例会「テーマ: 芸能の伝承におけるサウンド・アーカイヴの可能性」(2025.10.12(日)、Zoom によるオンライン開催)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
https://mg-gakkai.org/2025/08/03/1117/
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

■ 日時: 2025年10月12日(日曜日) 13:30〜15:30

■ 会場: Zoom によるオンライン開催

* 参加ご希望の方は、コチラ より10月9日(木)までにお申込みください。例会前日迄にZoomのリンクをお送りいたします。

■ テーマ: 芸能の伝承におけるサウンド・アーカイヴの可能性

人口減少や地域のつながりの希薄化、さらには予測不能なパンデミックの影響によって、伝統行事の機会を失って継承の危機に直面している地域芸能が少なくない。一方で、過去に研究者等が記録・保存した録音資料を対象地域のソース・コミュニティへ還元し、芸能の継承や復興の一助とする実践的研究も生まれている。本例会では、日本の地域や民族の芸能を対象とした複数の事例を通して、サウンド・アーカイヴの活用が芸能の伝承においてどのような可能性をもつのか、音楽学研究者の立場から考える。

■ 内容:

13:30〜13:40
テーマ説明 岡田 恵美(音楽学・国立民族学博物館)

13:40〜14:10
研究発表1 古謝 麻耶子(音楽学・沖縄県立芸術大学)
「沖縄県立芸術大学所蔵東京藝術大学民俗音楽ゼミナール収集音源資料の活用 --⺠俗芸能ウシデークの約40年前の映像やインタビュー録音音源を伝承地の人々と鑑賞する中で見えてきたもの」

本発表では、東京藝術大学民俗音楽ゼミナール(⼩泉ゼミナール)が 1982 年に沖縄県の宮城島、伊計島の⺠謡調査時に記録した⺠俗芸能ウシデークの映像やインタビュー⾳源を、伝承地の人々と資料作成に携わった研究者が共に視聴する「上映会」を開催することで得られたインパクトを紹介するとともに、こうした資料が今後地域でのどのように活⽤され得るのかついて考察する。
42 年前のウシデークの記録映像を視聴した経験を持つ⼈は地域にはほとんどおらず、上映会は企画の段階から多くの人々の関⼼を集めた。発表者は、研究者と地域の人々の間に立ち、両者と意⾒を交わしながら準備を進めた。約 40 年前の⾳や映像が、多様な⽴場、年代の人々の個々の五感にどのように響いたか、認識のしかたの違いにも着目しながら、こうしたアーカイヴの価値と今後の活用について考える。

14:10〜14:40
研究発表2 薗田 郁(音楽学・大阪大学中之島芸術センター)
「『河内にわか』の声 --サウンド・アーカイヴとしての実践と応用の試み」

大阪の南河内地域には、即興的な滑稽芸である「河内にわか」が伝承されている。「にわか」は、現在も祭りの奉納芸能として各地域で披露されているものの、昭和の半ばごろまでは、奉納芸能としてだけでなく、様々な催しでより日常的な風景として存在していた。本発表では、現在の「にわか」伝承のなかで、そうした状況を地域に伝え、広げていく試みとして、サウンド・アーカイヴが関わる事象を紹介する。アーカイヴ資料としての「にわかの声」が、単に芸能上演のための資料としてだけではなく、地域の人々が「にわか」に関わる声を共有できる方法として、実践的かつ応用的に活用されていることを示したい。

14:40〜15:10

研究発表3 甲地 利恵(音楽学・北海道博物館アイヌ⺠族文化研究センター)
「アイヌ音楽資料の公開と活用をめぐって」

20世紀後半、アイヌ文化復興の機運とともに芸能の復興と継承も各地でさまざまに試みられていた。過去の録音資料を使いたいという当事者の要望や期待は以前からあったものの、各地各機関に散在する資料情報の集約や公開利用に必要な手続きの整備など、問題は山積していた。そのような中、旧・北海道立アイヌ民族文化研究センターが1994年に開所する。職員による採録資料が蓄積していく一方、それら原資料を、話者の個人情報や人権を守りつつ、いかに整理・公開するかが課題となった。本発表では、旧センターによる「ほっかいどうアイヌ語アーカイブ」開設までを概観すると同時に、音楽学者としての立場でいかに伝承への貢献に関わっていくべきかの模索過程を共有することで、本研究会テーマの議論に参加・貢献したい。

15:10〜15:30  質疑応答

■ 担当理事: 岡田 恵美

* 本例会は科研費(24K03460)との共催になります。