范淑文 編『漱石と〈時代〉―没後百年に読み拓く―』(台湾大学出版センター[台大出版中心])
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范淑文 編『漱石と〈時代〉―没後百年に読み拓く―』
日本学研究叢書26
(台湾大学出版センター[台大出版中心])
ISBN978-986-350263-0
A5判・上製・296頁
NTD760元
¥3,200(税別)
※日本では文生書院で販売中
https://www.bunsei.co.jp/itemlist/sales-agent/nihongaku/#26meisai
歳月を経てもその作品がなおも広く愛読される作家は限られる。明治の大文豪夏目漱石はその好例である。日本型近代化が一段落した20世紀初頭に誕生した漱石文学は、当時の社会問題や時代の思潮、さらには作家自身が抱える悩みなどを切実に紡いでいる。それが故、隠喩表現も多く奥が深い。
だが、当時不可視的とされたものも時代が変われば、可視的になる。時代を越え異なる価値観を持つ読者や、空間の異なった異文化の読者は、創作時と異なった視点より読み解くため、新たな捉え方は無限にあり得るだろう。本書は百歳を超えた漱石文学のメッセージを21世紀の世に向けた指針として新たな視座、新たな捉え方で読み拓こうとする画期的な力作である。
【目次】
序文 漱石と〈時代〉―没後百年に読み拓く―╱范淑文
第一章 漱石と近代・漱石と現代╱石原千秋
第二章 『坊っちやん』の<兄><弟> と『三四郎』の<兄><妹>―明治時代の家族―╱仁平道明
第三章 漱石漢詩の一側面―「観楓」「太平洋」「幽居」を通して―╱朱秋而
第四章 代助と三千代の恋――『それから』に語られている〈時代〉╱范淑文
第五章 ことばの観察者 夏目漱石╱田島優
第六章 近代日本語の確立者としての漱石―文章構成の視点から―╱落合由治
第七章 漱石作品の外来語╱林慧君
第八章 漱石のテキストに見られる「どうせ」の使い方╱黃淑燕
第九章 夏目漱石文学と観相学╱坪井秀人
第十章 オリエンタリズムと分裂する主体―『彼岸過迄』における主人公の機能―╱生方智子
十一章 韓国における夏目漱石の受容―翻訳を通して考える―╱李漢正人名索引
事項索引
編集者略歴
執筆者略歴
編集者
范 淑文(ハン シュクブン)
1954 年、台湾・桃園県生まれ。2010年御茶ノ水女子大学人文科学研究科博士号取得。台湾大学日本語文学科教授。専門は近現代文学。著作には『文人の系譜――王維~田能村竹田~夏目漱石』(三和書籍、2012 年)、『日本学研究叢書 3 日本近現代文学に内在する他者としての「中国」』編著(台湾大学出版社、2012 年)などがある。