西法太郎『三島由紀夫は一〇代をどう生きたか あの結末をもたらしたものへ』(文学通信)
西法太郎『三島由紀夫は一〇代をどう生きたか あの結末をもたらしたものへ』(文学通信)
ISBN978-4-909658-02-9
C0095
四六判・上製・358頁
定価:本体3,200円(税別)
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数々の、三島由紀夫に関するスクープを連発してきた著者による渾身の評伝。
昭和一〇年代に風靡した『日本浪曼派』、『文藝文化』の文芸思潮が、ちょうど一〇代を生きていた三島少年を包み擁していたさまを、膨大な資料と、独自の取材により描き出す。あの結末をもたらした、その文学と思想の源泉とは一体何だったのか。
東文彦、保田與重郎、蓮田善明の三者と、それらを横軸でつなぐ神風連を中心に、一〇代の三島とその生涯の秘密を探り出す。
なお本書冒頭のプロローグにて、三島由紀夫の墓所に関するスクープを掲載しています。
「ひとたび自分の本質がロマンティークだとわかると、どうしてもハイムケール(帰郷)するわけですね。ハイムケールすると、十代にいっちゃうのです。十代にいっちゃうと、いろんなものが、パンドラの箱みたいに、ワーッと出てくるんです。だから、ぼくはもし誠実というものがあるとすれば、人にどんなに笑われようと、またどんなに悪口を言われようと、このハイムケールする自己に忠実である以外にないんじゃないか、と思うようになりました。」(『図書新聞』昭和四五年一二月一二日号、同四六年一月一日号)
【死は生の埒外にあるのではない。生をうけるとともに死もうけている。その生は死をもって完結する。この生々しいありさまを〝三島由紀夫〟という稀有の生命体をとおして本書に描いてみた。】...おわりにより
【著者紹介】
西法太郎(にし・ほうたろう)
昭和31(1956)年長野県生まれ。 東大法学部卒。総合商社勤務を経て文筆業に入る。
著作に、『死の貌 三島由紀夫の真実』(論創社、2017年)。おもな寄稿に、「文藝春秋」(潮っ気にあふれた若者たちの魂よ)(三島由紀夫わが姉の純愛と壮絶自決現場)、「週刊新潮」(新資料発掘―歴史に埋もれた「三島由紀夫」裁判記録)(「影の軍隊」元機関長が語る「自衛隊」秘史)、「新潮45」(「A級戦犯靖国合祀」松平永芳の孤独)、「表現者」(三島由紀夫の処女作「花ざかりの森」肉筆原稿)(三島由紀夫―聖セバスチァンのポーズに籠めたもの)、「週刊ポスト」(歴史発掘スクープ 三島由紀夫「処女作」幻の生原稿独占入手)(三島由紀夫「封印された全裸像」)、『三島由紀夫研究⑱』鼎書房(MAKING OF 「花ざかりの森」)、「JAPANISM」(ノーベル賞受賞を巡る二人の作家のエピソード 川端康成と三島由紀夫『眠れる美女』へのこだわり)などがある。
参考
※三島由紀夫「処女作」幻の生原稿を独占入手(週刊ポスト記事)
https://www.news-postseven.com/archives/20161114_465730.html
【目次】
[凡例]
プロローグ―三島由紀夫がさだめた自分だけの墓所
序章 結縁―神風連 〈しんぷうれん〉
「約百名の元サムライ」の叛乱/日本の火山の地底/志士の遺墨/〝櫻園の大人〟/宇気比のこと/宣長の思想と櫻園/神風連の遺跡を巡る/「恐ろしき一夜」/「〝日本人の神髄〟を考えたい」/手段=目的、目的=手段/天皇は「一般意志」の象徴/無償の行動/喪った「故郷」の発見
第一章 邂逅―東文彦 〈あずまふみひこ〉
先輩からの賛嘆の手紙/至福の拠り処/永福門院と「三熊野詣」/「幼い詩人」/東文彦の死、至福のときの畢り/遺稿集『浅間』/文彦と三島のニーチェ/ハイムクンフトとハイムケール /『城下の人』受賞のかげに三島の強力な推輓/『春の雪』冒頭に塗りこめられたもの/戦いを勝利にみちびいた真清の決死行/「得利寺付近の戦死者の弔祭」の写真は実在している/一対の作品集
第二章 屈折―保田與重郎 〈やすだよじゅうろう〉
一〇代の思想形成/日本浪曼派/保田と満洲事変/昭和一〇年代の保田の魔力/『近代の終焉』/〝思想戦〟をたたかっていた/時局迎合のアジテーターではなかった/「誤認される原因の種子をみずから蒔いた」保田/堂々男子は死んでもよい/日本美術院院歌/禁忌の象徴/晦渋な文章ばかりではない/ヘルダーリンとの相似性/「アイロニーを解決するただ一つの方法」/国体思想は「変革の思想」/「欧化としての近代化」批判/三島の韜晦/謡曲の文体はつづれ錦/保田への素直な思い/三島を襲った精神的危機/忘却の所以/敗戦直後奈良の保田を見舞った三島/「保田與重郎ノート」/立原道造と日本浪曼派/絶望と精神的デカダンズ/『批評』昭和四三年夏季号/保田への愛憎(リーベ・ハーツ)/終生の友となった伊沢甲子麿/文学的出自のトラウマ/「会計日記」でわかる三島の鬱屈/〝浪曼的衝動〟/召集にまつわるそれぞれのふるまい/三島へのオマージュがちりばめられた『天の時雨』/「日本文学の持つ眩い光と、もっとも深い闇」/ヤマトタケルノミコト/保田と三島の結び目/滅びのあわれさ
第三章 黙契―蓮田善明 〈はすだぜんめい〉
田原坂公園の歌碑/「神風連のこころ」/『興国百首』/「神風連はひとつの芸術理念」/秘蔵されていた「花ざかりの森」直筆原稿/ペンネーム「三島由紀夫」/行方知れずになった原稿/原稿発掘の経緯/「三島由紀夫」誕生の瞬間/「てうど」/処女小説集『花ざかりの森』出版/種田山頭火との出会い/〈恋闕のこころ〉/「前に立てるもの」/運命的な黙契/激越な慷慨家/「自分の文章はきたなくて、きたなくて」/文学と行動/「日本人のいのちを大事に」/「夢野の鹿」/右手に軍刀を按じ、左手に古典/『鴎外の方法』と『仮面の告白』/『有心』/黄菊と蜜柑/戦後善明を忌避した伊東/〈みやびが敵を討つ〉/みやびあるこころ/「おらびうた」/靉靆の雲を慕う/安部公房と蓮田/「肉体と言葉をへだてる、底なしの奈落めがけて、あらたな跳躍をこころみようとしているのか」/「思想を自分に殉じさせた」/「その死の上に、時はとどまり、当分過去にはなってくれそうもない」/和歌は神随の国ぶり/詩的秩序による領略/『日本文学小史』第五章の重要さ/「次に私は、物語における文化の亭午について語らねばならない」/死に吾を死なしめた大津皇子/ひとたび叛心を抱いた者の胸を吹き抜ける風/蓮田と三島の古今観/行動の理念と言葉の理念の縫合/言葉だけしか信じられなくなった/紙屑になった現実/「雷」「雷鳴」「稲妻」/伊東静雄への屈折した想い/遺されたアポリア、〈日本への回帰〉/〝蓮田善明〟から見返されることになった三島/保田より蓮田に「結縁」/「如何に死すべきか」と「凶ごと」/保田與重郎と蓮田善明の究極の違い/「死ぬ時が恵まれていた」/「蓮田さんは知識人に怒っていたんだ」/「蓮田善明は、おれに日本のあとをたのむといって出征したんだよ」
おわりに