日本近代文学館:特別展「日本をゆさぶった翻訳―明治から現代まで」(2020年10月3日(土)〜12月19日(土))

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展覧会情報です。

●公式サイトはこちら
https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/cat-exh_current/12442/

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開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
観 覧 料 一般300円(団体20名様以上は一人200円)
中学生・高校生100円

編集委員 高橋修(共立女子短期大学教授)
武藤康史(評論家、日本近代文学館理事)


媒介者(メディア)としての翻訳----東西文化の懸け橋

翻訳の文化形成に関わる力は大きい。それはいつの時代にも当てはまることだが、とくに未知の新しい他者である西洋的知見と遭遇した明治期には、われわれの想像を超える大きな役割を担った。物質文明から精神世界にいたるまで、翻訳行為は東西の言語共同体を「媒介」し、受けとめる側の発想の枠組みを組み替えるだけでなく、われわれが拠って立つシステムを映し出す鏡にもなっていたと思われる。
しかし、発信者のメッセージを受けとめるべきことばも概念も持ち合わせていなかった明治の翻訳者たちは、原文の意味するところそのままに再現すべくもなかった。洋の東西を跨ぐのは容易なことではなく、そこには彼らの時に大胆で時に繊細な悪戦苦闘の歴史が刻み込まれている。「翻訳」とは、閉じられた空間に攪乱(かくらん)と葛藤をもたらす媒介行為であり、問いと反問によって対話を巻き起こすパフォーマティブな実践ということができる。そうした翻訳営為を読み解くには、ことばの意味と運用にとどまらないメディアの情勢・ジャンルの記憶・政治的なイデオロギーに分け入らなければならない。
この展示では、明治から昭和に至る、翻訳をめぐる苦闘の歴史の一端を示している。

(編集委員 高橋修)


●部門構成
第1部 冒険小説の時代
明治期に翻訳されたジュール・ヴェルヌの『新説八十日間世界一周』やダニエル・デフォーの『絶世奇談魯敏孫漂流記』などの冒険小説には西洋的な経済観や時間観念が表され、読者に大きな衝撃を与えました。『欧洲奇事花柳春話』『小公子』など、同時期の恋愛小説や家庭小説とあわせてご紹介します。

第2部 異境のしらべ
西欧の詩をいかに日本語に移し替えるか、さまざまな工夫や苦心の末に訳され、日本の近代詩に多大な影響を与えた作品を関連資料と共に展観します。

第3部 火の洗礼--ドストエフスキー『罪と罰』
ドストエフスキーの作品は、ロシアの批評家ベルジャーエフに「火の洗礼」と称されるほどのインパクトをもたらしました。二葉亭四迷から米川正夫まで、その魅力を伝えようとした訳者の系譜をご覧いただきます。

第4部 社会思想の翻訳--関東大震災前後
関東大震災をきっかけに出版を取り巻く状況も大きく変化しました。この時期に文学・思想に湧き上がった動きを当時刊行された社会思想の翻訳を通して考えます。

第5部 世界文学への一歩
川端康成や谷崎潤一郎、三島由紀夫らの作品が海外に紹介されていく軌跡を、エドワード・G・サイデンステッカーやドナルド・キーンとの書簡のやり取り、翻訳原稿などからご紹介します。

※同時開催 川端康成の新聞小説