立命館大学日本文学会 第166回立命館大学日本文学会研究例会(2025年9月14日(日)、立命館大学衣笠キャンパス清心館009号室)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://ritsnichibunkai.blog.fc2.com/blog-entry-254.html
--------------------
※詳細は上記サイトをご確認ください。

日  時:9月14日(日)13:00~16:45(14:45~15:00)
 発表形式:対面  場所:立命館大学衣笠キャンパス清心館009号室

※ 本学会の大会および例会には会員に限らず会員外の方でもご参加いただけます。不明な点がございましたら、立命館大学日本文学会事務局(nichibun★gst.ritsumei.ac.jp)までご連絡ください。←★を半角「@」に変えてください。


  ***** 題目・要旨 *****

◆久米歌「ウダノタカキニ」歌後半部の解釈について
 本学大学院博士課程後期課程  砂田和輝

 久米歌「ウダノタカキニ」歌の後半部「コナミガナコハサバ」以降については、従来、『記』・『紀』ともに歌の前に記される「饗」と関連付けて宴の場における肴を歌った戯笑的な性質をもつものとして解釈されてきたが、宴という要素以外には散文と歌の関連について言及されてこなかった。本発表では、『記』・『紀』ともに歌の前に記される「賜」という語に注目し、前妻と後妻とで差をつけて実を与えることを詠んだ歌を記載した意味について考察する。

◆鷗外の妻と妹が描いた世界―森志げと小金井喜美子の比較研究―
 本学大学院博士課程後期課程 鈴木ちよ

 森鷗外の妻・森志げと妹・小金井喜美子の文学作品を比較分析することで、両者の文学的特性について検証する。
これまで注目されることの少なかった喜美子の小説を志げ作品との比較の文脈から取り上げ、
それぞれ妻と妹として鷗外から大きな影響(生活的にも文学的にも)を受けてきた二人の作家の小説を比べ、
各人の特徴を明らかにするとともに、鷗外からの影響や鷗外作品との違いなども分析したい。
それらの分析を通じて、改めて森 志げ作品の同時代の女性作家と比較した際の独自性を論じていきたい。

◆『源氏物語』頭中将の人物造型―「笑い」に注目して
 本学大学院博士課程前期課程 大栢夕依

 これまで『源氏物語』における「笑い」の研究は、「ゑむ」「笑ふ」の違いや恥との関わりなど、様々な角度から検証されてきた。しかし、「頭中将と笑い」という関係ではほとんど注目されておらず、近江の君を論じる中で部分的に触れられるにとどまる。頭中将は、末摘花及び源典侍をめぐった光源氏との滑稽譚で知られるように、基本的には「笑われる」存在として物語に位置付けられていると言える。一方で、常夏巻以降、近江の君に対しては繰り返し「笑う」様子が注目される。そこで、本発表では頭中将を「笑う」「笑われる」両方の立場から検証することで、彼の人物造型における「笑い」の意義を多角的に考察する。特に頭中将が「笑う」行為に加え、「人笑はれ」を恐れる心理やその社会的背景に目を向けることで、彼の自己意識や、光源氏との対比的な立ち位置がより明瞭になることを示す。


◆川端康成『虹いくたび』論
 本学大学院博士課程前期課程 堀井萌々香

 川端康成『虹いくたび』は、雑誌「婦人生活」に一九五〇年三月から翌年四月まで十四回にわたり連載された。先行研究では虹の象徴的意味や百子と死者との繋がり、銀の乳碗が表す啓太の母恋、戦争の傷跡などが論じられた。しかし、主な舞台である京都の必然性までは明らかにされていない。描かれた京都は生と死という主題と関わって作品世界を構築している。そこで本発表では京都を切り口に、百子の妊娠と堕胎後に果される異母姉妹の邂逅と拒絶された盃の意味に迫りたい。

◆『浜松中納言物語』巻五における擬似異母兄妹―吉野の姫君に注目して―
 本学大学院博士課程前期課程 石垣梨紗

 『浜松中納言物語』巻五の中納言は、吉野の姫君の出自を自身の異母妹として、周囲の人々へ言い繕う。従来、この言い繕いは、物語の構想論や中納言の人物論のなかで取り上げられてきた。本発表では、先行論で指摘される中納言像を踏まえつつ、吉野の姫君側の動向に再注目し、姫君の人物像の変化について論じていく。中納言と姫君のあいだに、世間や家族に認められる異母兄妹という関係性が生じることで、二人の精神的紐帯にどのような影響がもたらされるのか考察する。

◆穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』論
 本学大学院博士課程前期課程 佐々木凛

 穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』は2001年に刊行された穂村弘の第三歌集である。本作は一人称の文学とされる短歌というジャンルにおいて、「まみ」という架空の少女に成り代わって編まれた異色歌集として高く評価されている。しかし、歌集における代表歌の鑑賞・研究は進んでいるものの、歌集全体としての研究は未だなされていない。そこで本発表では、主人公「まみ」の表象に注目しながら、歌集の主題を明らかにすることを目的とする。