東洋大学日本文学文化学会:日本文学文化学会 2024年度大会(2024年7月20日(土)13:30〜、東洋大学白山キャンパス 6317教室)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://nichibungakkai.blog.fc2.com/blog-entry-81.html
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

【日時】 2024年7月20日(土)13:30より 開催
【会場】 東洋大学白山キャンパス 6317教室

~大会プログラム~

●開会の辞● 13:30
   会長 東洋大学日本文学文化学科教授 野呂 芳信

●研究発表● 13:35
・「火星の女」における女性登場人物のアダプテーション考──映画『夢野久作の少女地獄』をめぐって
   谷 美映子(大学院博士後期課程)

・須賀敦子の翻訳に見る日本文学紹介―戦後のミラノで―
   藥師寺 美穂(校友・東京女子大学大学院博士後期課程)

・「教養」(Bildung)の語史――明治~昭和前期の独和・和独辞典の検討
   松井 健人(東洋大学文学部日本文学文化学科助教)

●講演● 15:50
 「伊勢商人の蔵書形成」
   東京大学大学院総合文化研究科准教授 青山 英正

●閉会の辞● 17:20
   東洋大学日本文学文化学科 第1部学科長 高松 亮太

●総会● 17:30より
 ※会員の方のみ御出席ください。

●懇親会● 18:10より 4号館1階 ステラ
 ※参加希望の方は、受付にて懇親会費(3,000円)をお支払いください。
 ※当日受付では、年会費のお支払いはお受けしておりません。


【研究発表概要】

「火星の女」における女性登場人物のアダプテーション考──映画『夢野久作の少女地獄』をめぐって (谷 美映子)
 一九三六年刊行の夢野久作の小説集『少女地獄』は、そのうちの一編「火星の女」のみ、一九七七年、日活株式会社の小沼勝監督により『夢野久作の少女地獄』として映画化された。原作「火星の女」と、映画『夢野久作の少女地獄』との主な相違点は、映画版の甘川歌枝が大食いなこと、アイ子が歌枝に堕胎を迫ること、歌枝とアイ子が心中することである。映画版でのこれらのショットは、原作との乖離を示す。久作の小説の語り手からは、性的客体化への拒否が顕著に現れており、その小説内には、シスターフッドとも言うべき関係が散見されるからだ。
 本発表は、「火星の女」のアダプテーションを通じて、原作と映画上映当時の女性同性愛受容を確認する。そのうえで、原作と映画版の乖離とその要因について論ずる。以上を踏まえて、「火星の女」登場人物である甘川歌枝を軸に、久作の小説内でのシスターフッドを考察する。

須賀敦子の翻訳に見る日本文学紹介―戦後のミラノで― (藥師寺 美穂)
 須賀敦子の海外体験の中心はイタリア・ミラノにあったコルシア・デイ・セルヴィ書店(通称コルシア書店)で、その設立と活動に携わった亡夫ペッピーノをはじめとするメンバーは、帰国後に書かれた『コルシア書店の仲間たち』などに作品中の人物としても登場する。「書肆」としての性格が残る書店は文化活動の拠点で、須賀はここで「翻訳」に巡り合った。本発表では、須賀が1960年代に主として行った翻訳を「独立行政法人国際交流基金日本文学翻訳作品データベース」で確認し『Narrativa giapponese: Cent'anni di traduzioni(イタリア語になった日本文学:100年のあゆみ)』(アドリアーナ・ボスカロ編,Cafoscarina Stamperia Cetiol, Venezia,2000)などを照合しながら、戦後のイタリアにおける日本文学の受容の歴史の中でどのように位置づけられるのか再評価を試みたい。書店での体験は須賀が帰国後に発表する作品につながり、本研究ではその経緯も明らかにできると考える。

「教養」(Bildung)の語史――明治~昭和前期の独和・和独辞典の検討 (松井 健人)
 本研究は、「教養」という語が近代日本においてどのように用いられ始めたのか、この点を明らかにすることを目的とする。そのために、明治大正期における独和・和独辞典における「Bildung」、「Erziehung」、「Kultur」の項目の記述に着目し書誌的考察を行う。「教養」という言葉の語史については進藤咲子や筒井清忠らに代表される先行研究が存在するが、ドイツ語と日本語の対応に焦点化して、明治から大正期の独和・和独辞書に関して書誌的検討を行った研究は管見の限り存在しない。本稿では、網羅的にこの書誌的検討を行うことで「Bildung」を「教養」と訳出する語句の対応関係がいつ頃誕生したのか、あるいは「教養」という言葉が「Bildung」以外にも対応するドイツ語を有していたのか、これらの点を明らかにする。


【講演者紹介】

青山 英正

●略歴:東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は19世紀日本の文学・書物文化史。編著書に『幕末明治 移行期の思想と文化』(共編著、2016年)、『幕末明治の社会変容と詩歌』(2020年)、『緒方洪庵全集 第三巻(上) 和歌 書 著作(その二)』(共編、2023年)、『石水博物館所蔵 岡田屋嘉七・城戸市右衛門他書肆書簡集』(2024年)などがある。

●講演概要:江戸時代の人々はどのように書物を入手していたのか。この時代、たとえ財力のある商人であっても望みの書物を手に入れるのは必ずしも容易なことではなかった。伊勢商人を代表する木綿問屋の川喜田家宛書簡を読み解きながら、蔵書家が書物に関する情報をどのように交換し、また複数の本屋をどのように使い分けて蔵書形成を図っていったのかを浮かび上がらせたい。