新入社員週報第5回「これからを考えて(最終回)」(松尾彩乃)

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新入社員週報も最終回を迎えました。京都へ送り出したピクミンも無事に帰ってきました。今回は、第4回で取り上げなかった「送料無料で届く本たち」(第3回)をもう少し考えたいと思います。

読者として「送料無料」は非常に助かるサービスです。自分の住んでいる地域に書店がない、すぐに手に入れたい本がある...「送料無料」の記載があるだけで、気軽に利用できると思います。教科書の通信販売に送料がかかってしまう現実に頭を悩ませたことは前々回お伝えしましたが、2020年4月のコロナ禍、書店から見えた景色は次のようでした。

・首都圏の大型書店は次々と休業
・生活必需品の配送優先で大型ネット通販サイトでも本の流通が滞る(こちらは私も予想外の事態でした)
・直接販売可能な独自の通販サイトを立ち上げる出版社の増加

大型ネット通販サイトに本が入荷されなくなり、出版社は直販サイトを立ち上げ、送料無料で、読者に本を届けました。書店が閉店中でも大型通販サイトが利用しづらくなっていても送料無料で読者に本が届く...送料必須な書店にいたものとしては「この先、書店はどうあるべきか」を自然と突きつけられた出来事でした。

以下、出版社と書店との関係や送料無料、「無料」自体に言及した記事や本です。

・内沼晋太郎さん「本の送料と、お金が取り戻したかもしれないもの
「町の本屋さん」をアマゾンから守れ! フランスが配送"実質無料"禁止へ新法
・『ゲンロン12』特集「無料とはなにか」
・『ユリイカ 2019年6月臨時増刊号 総特集◎書店の未来―本を愛する全ての人に』

「本の送料と、お金が取り戻したかもしれないもの」内で指摘された通り、送料は無料ではありません。そこには届ける人たちがいます。企業はサービスとして利益を還元し、送料を負担しています。

当事者でなくなった今、すでに、書店について語ってはいけないこともあると思うので、言葉は非常に慎重になりますが、文学通信を知らない人が文学通信の本を手に取ることができる場所は書店です。

書店にいたときに「本を読んでも空腹はおさまりません。それでも人文書と出会ってほしいし、人文書を売ります」と取材で答えてしまったことがあります。(自らの経験や書店に立って見えたことから出た言葉でした。)とてもとても仰々しいですが、今でも大事にし続けたい軸です。

これから出会うはずの多くの皆さまと、国文学をはじめ、人文学の世界とを繋げられるような、そして、その出会いを支えられるような仕事ができるよう励んで参ります。

ここまでお読みいただき、本当に有難うございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


新入社員週報第1回「転々としながらも決まっていたかのように
新入社員週報第2回「呟きは慎重にして(大学構内での書籍販売について)」
新入社員週報第3回「送料無料で届く本たち
新入社員週報第4回「歩かずに見つける史跡(ゲームと学問をめぐって)」