俳文学会東京研究例会:第471回例会(2024年5月25日(土)14:30~17:00、江東区芭蕉記念館)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://haibuntokyo.cside.com/prg/inf7.cgi
--------------------
※詳細は上記サイトをご確認ください。

●研究発表

蕉門と嗅覚表現 ―記憶の回路を巡って― /稲葉 有祐氏

【要旨】
佐伯昭市氏「芭蕉・発句の世界 嗅覚表現」(『国文学解釈と鑑賞』第41巻3号)によると、芭蕉の嗅覚表現は元禄以降に著しく増加し、観念的な句から写実的な句へと移行する傾向があるという。芭蕉にとって、嗅覚表現は興味関心・試行錯誤の一つであったと受け取ることができる。また、佐伯氏は、素材とされることの比較的多い梅・菊・蘭の香気について、「嗅覚表現の句にあっては、蕉風の原点」となるものだとも述べている。では、蕉門の俳諧において、嗅覚はいかに知覚され、表現されたのであろうか。本発表では、梅を起点とし、記憶の回路に注目しながら、俳諧における嗅覚の世界について考察する。

●研究発表
濁子追跡 『おくのほそ道』成立のキー・パーソンの一人 /深沢 眞二氏

【要旨】
「『おくのほそ道』の松島の条で、語り手の「予」は素堂の詩、原安適の和歌、それに杉風と濁子の発句を袋から取り出して「こよひの友とす」と言う。それはつまり、素堂・安適・杉風・濁子の四人こそが、芭蕉にとって『おくのほそ道』をまず読ませたい人々だったことを示してはいないか。」(深沢稿「『野ざらし紀行』画巻について」より、『国語国文』2023/11)。濁子は美濃大垣藩の江戸詰家老、中川甚五兵衛である。芭蕉との交流を中心に濁子の事跡を追い、濁子が『おくのほそ道』の成立に深く関わっていたことを考察する。