東アジア恠異学会第144回定例研究会/第18回オンライン研究会(2023年9月30日(土)15:00〜、園田学園女子大学+zoom)※要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://kaiigakkai.jp/

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※詳細は上記サイトをご確認ください。


東アジア恠異学会
 第144回定例研究会/第18回オンライン研究会
 日時:2023年9月30日(土)15:00〜
 場所:対面・オンライン併用
   (園田学園女子大学またはzoom)
*対面・オンライン併用での実施を予定しております。


内容:
○「紀昀『閲微草堂筆記』「殷桐」を推理する」
 ー福田素子氏(聖学院大学非常勤講師)

【要旨】

 紀昀『閲微草堂筆記』には、一つの復讐譚が遺されている。
 ある瞽者が、衛河のほとりで十年余「殷桐」という名の者をさがし続け、復讐を遂げ仇の肉を食らうという話である。
この話には、大きな欠落がある。殷桐は、瞽者は何者なのか、二人の間には何があったのか、何故衛河という場が選ばれたのか、文中では示されていない。「殷桐」には、岡本綺堂による日本を舞台にした翻案「利根の渡」(小説集『青蛙堂鬼談』所収)があり、舞台を江戸時代の利根の渡しに写した上で、原作にあった欠落を埋めている。
 岡本が「利根の渡」を芝居にするに当たって「あと先もない方が面白いのであるが、芝居としては然うは行かない」と述べているとおり、「殷桐」はその欠落が魅力である。しかし現代日本人は、乾隆帝時代の衛河がどんな場所なのか、盲人がどんな暮らしをしていたのか、紀昀や紀昀が想定した読者ほどは知らない。「利根の渡」の手法も参考にしながら、「殷桐」の欠落を埋めるのが本発表の試みであり、この試みを通して、社会の中で運河が担う役割や瞽者の生活について新しい知見を加えられれば幸いである。