山陰歴史資料ネットワーク(山陰史料ネット)【中国】★『地域歴史文化継承ガイドブック』全文公開

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山陰歴史資料ネットワーク
(山陰史料ネット)

【団体情報】
設立年●2000年11月23日
旧名称●鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク(2001年まで)
事務局所在地●〒690-8504 島根県松江市西川津町1060 島根大学法文学部(板垣研究室)
電話番号●0852-32-6197(板垣貴志)
メールアドレス●titagaki@soc.shimane-u.ac.jp(板垣貴志)
Facebook●https://www.facebook.com/sanin.siryou.net/
【活動地域】
島根県・鳥取県・隣県支援
【参加方法】
入会●連絡先あるいはFacebookページへのメッセージ。


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❶ひの歴史フォーラム(2001年)

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❷広島豪雨(2018年)


【設立の経緯】
文●小林准士

2000年(平成12)10月6日に発生した鳥取県西部地震を機に、神戸の歴史資料ネットワークの呼びかけを受けて同年11月23日に設立されました。設立時の呼称は鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワークでしたが、当初から略称を山陰史料ネットとしており、その後団体名を略称に合わせて山陰歴史資料ネットワークに改称しました。

【活動の特徴】
文●小林准士

鳥取県西部地震(2000年10月)の発生後、震源地に近い鳥取県西部の日野町、溝口町、岸本町、西伯町、会見町、米子市、境港市、島根県東部の伯太町などで被災史料の保全活動を行いました。被害の大きかった地域における巡回調査や、日野町歴史研修会などの地元団体関係者の方の情報をもとに、歴史資料の安否確認を行い、必要と判断された場合には資料を搬出し、一時保管と整理に当たりました。搬出を伴う保全活動は2001年(平成13)8月まで行い、その後は預かった資料の整理に従事しました。

2001年9月16日に日野町公民館で「ひの歴史フォーラム」を開催し、鳥取県西部地震発生以来の保全活動について地元住民の方々に報告しました[❶]。

その後、2016年(平成28)10月21日に発生した鳥取県三朝町を震源とする鳥取県中部地震にあたっては、関係者による協議の上、鳥取地域史研究会と連携することとし、保全活動を行う場合には鳥取県立博物館を拠点とすることになりました。しかし結局、この際には山陰史料ネットとして保全活動を行うことはありませんでした[❸]。

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❸鳥取県中部地震(2016年)

また2018年(平成30)4月9日に発生した島根県西部地震では、島根県大田市と連携して現地の被災状況を見回るなどしましたが、保全活動を行うまでの事案は確認できませんでした[❹]。

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❹島根県西部地震(2018年)

同じく2018年7月5日からの豪雨(西日本豪雨)によって江の川が氾濫したために、島根県江津市、川本町、美郷町を巡回調査し被害状況等を確認しました。この調査により美郷町港の旧家所蔵の古文書に浸水被害が確認されたため、美郷町と連携しつつ保全し同町役場で乾燥させるなどの応急保存措置を行いました[❷]。

西日本豪雨の後は毎年のように梅雨から夏の時季にかけて水害が発生し、特に江の川の氾濫が繰り返し起きているため、島根県教育庁文化財課を通じて各自治体に保全の呼びかけを行ってもらっています。

連携しながら保全活動を進める
2021年(令和3)3月に島根県教育委員会は『島根県文化財保存活用大綱』を策定しました。この大綱の「第4章 防災・防犯及び災害・犯罪被害等発生時の対応」には「島根県文化財救済ネットワーク」の構築が書き込まれることになり、山陰歴史資料ネットワークも構成団体として位置づけられています。これによれば、山陰史料ネットは、市町村文化財担当部局・島根県建築士会・しまねミュージアム協議会、県内の大学(研究室)などともに構成団体として、事務局をつとめる島根県との間で日頃から情報共有を図るとともに、災害時には互いに連携しながら保全活動を進めることになっています。

この大綱に「島根県文化財救済ネットワーク」の構築が盛り込まれたことを受け、同ネットワークの規約案が現在検討されています。この規約には、平常時からの県内所在文化財等の調査、普及啓発活動、保護・保全活動に加え、災害時の被災情報の収集、文化財の保全などが盛り込まれる見込みです。

【連携団体】

なし
【活動がわかる主な文献リスト】
1●小林准士「時評 鳥取県西部地震と山陰史料ネットの活動」『日本史研究』463、2001年3月
2●小林准士「鳥取県西部地震後における被災史料の救出活動」『日本歴史学協会年報』17、2002年3月
3●小林准士「鳥取県西部地震後の史料保全活動と今後の課題」『歴史科学』169、2002年6月
4●小林准士「山陰史料ネットの活動について」『歴史評論』633、2003年1月
5●竹永三男「災害と資料保存(2)鳥取県西部地震と旧製糸場遺構の救出保全活動─被災した産業遺構の救出保全事例」『歴史評論』668、2005年12月
6●小林准士「山陰地方の過疎地における史料保存の課題」『災害・復興と資料』2、2013年
7●小林准士「過疎化が進む地域と資料のゆくえ─山陰地域における資料保存の課題」、奥村弘編『歴史文化を大災害から守る─地域歴史資料学の構築─』東京大学出版会、2014年
8●板垣貴志「西日本豪雨での山陰歴史資料ネットワークの対応」『史料ネット News Letter』89、2018年10月