没後50年・日本近代文学館開館55周年「川端康成展―人を愛し、人に愛された人―」(2022年4月2日(土)~6月11日(土)開催)

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展覧会情報です。
詳細は以下URLより。
https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/13574/


開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
観覧料 一般300円
中学生・高校生100円
休館日 日曜日、月曜日、第4木曜日
編集委員
特別協力

坂上弘(当館前理事長)・中島国彦(当館理事長・早稲田大学名誉教授)
公益財団法人川端康成記念会


■本展について
 川端康成の日記、作品のためのノート、残された数々の手紙からは、「人を愛し、人に愛された人」としての川端康成の姿が浮き彫りにされてきます。「新感覚派」「ノーベル文学賞」「日本の美」という川端につきまとう標語からはうかがえない、人間川端康成の姿です。本展では、肉親を失った体験の中で、人とのつながりを追い求め、言葉をつむいだ川端の姿に、照明を当てたいと思います。
 戦中の日記のなかに、「また手紙で夜が明ける」という一節があります。作品を書く時間も惜しまず、夜を徹して手紙を書いていた川端の姿がうかがえます。手紙が届き、返事を書き、それにまた手紙が届くというやりとりが、人と人をつなぎます。横光利一、林芙美子ら多くの友人や知人のほか、小説家を目指す読者との交流を示す手紙も残されています。川端に献呈された本も、太宰治をはじめ何冊も残されています。転居を繰り返したにもかかわらず、それらを手離さなかったということも、特筆すべきことです。
 また、「葬式の名人」とも呼ばれた川端は、生涯数多くの「弔辞」を記しました。秀子夫人の回想記『川端康成とともに』(1983)によれば、友人、知己の死の知らせを受けた川端は、その人の作品を片端から読み返し、その期間中、身体が痩せるほど力の限り、「弔辞」に思いを綴ったといいます。「弔辞」は、川端からの亡くなった人と残された人に向けた思いの集積です。
 人のために惜しまずに手を貸す、あるいは自分の思いを伝える、という川端の心の現われこそ、今、改めて見直したいと思います。そうした川端のあり方が、日本近代文学館を築いたと言えるのではないかと思います。
 川端の一生を示す資料のどこからでもうかがえる、「人を愛し、人に愛された人」という素顔を、感じ取っていただければ幸いに存じます。
(編集委員 中島国彦)

●部門構成
第1部 若き日の体験――生い立ちと創作の原体験
第2部 小説の実験室――掌の小説と「文藝時代」
第3部 作品の成熟――新進作家への眼差し
第4部 作品生成の魔術――「雪国」
第5部 証言者の眼――「名人」
第6部 一つの転機――「故園」「哀愁」
第7部 戦後の社会に生きて――「山の音」「みづうみ」から「眠れる美女」へ
葬式の名人
書簡・書籍に見る交流
◆刊行物
「没後50年・日本近代文学館開館55周年 川端康成展―人を愛し、人に愛された人―」図録
館内受付、WebShopにて発売予定