日本近代文学会東海支部 第78回研究会(2024年12月15日(日)14時~17時10分、愛知淑徳大学 星が丘キャンパス 5号館3階 53A教室)
Tweet公式サイトはこちら。
https://nihonkindaibungakukai-tokai.blog.jp/archives/30273073.html
-----------------------------------------------------------
立冬の候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、日本近代文学会東海支部では12月15日(日)14時より、第78回研究会を下記のとおり開催いたします。全面対面での開催ですので、多くの皆様が会場まで足を運んでくださると幸いです。なお、当日の資料や会場案内図は、開催の週にメールにて改めてご案内いたします。
また、東海支部では支部会員以外のご参加も歓迎しております。ぜひご所属先等でもご周知くださいますようお願い申し上げます。
***
日本近代文学会東海支部 第78回研究会
【日 時】 2024年12月15日(日)14時~17時10分
【会 場】 愛知淑徳大学 星が丘キャンパス 5号館3階 53A教室
※全面対面での開催
-----------------------------------------------------------
◯14時05分~15時00分
・市川遥(名古屋大学大学院人文学研究科 博士研究員)
「「労働者」としての兵士 プロレタリア文学における「癈兵」表象をめぐって」
コメンテーター:魏晨(岐阜大学)
【発表の要約】
日露戦争で傷病を受けて帰還した兵士たちは当時「癈兵」と呼ばれた。生活に困窮した彼らが手を出した行商行為は社会問題化したほか、1920年代~30年代にかけて、癈兵たちは待遇改善を求めて団体を結成し、断食祈願等の社会運動も盛んに行った。同時代、反戦・厭戦の傾向を持つ文学作品が多く生まれる中で、帰還後の生活に苦しむ癈兵たちの姿が、複数のプロレタリア作家によって描かれてきたことはすでに指摘されている。
作品に描かれた労働者と癈兵との間には、苛酷な労働を強いられ疲弊した存在としての共通点を見ることができ、時に「共闘」の可能性も読み取れるが、一方で癈兵は国家から称揚される「名誉の負傷者」であるという意識を強く持っていることから、そこには無視することのできない隔たりも存在している。
本報告では、金子洋文「癈兵をのせた赤電車」(1922年)、吉田金重「敗残者の群れ」(1923年)、松山文雄「廃兵」(1929年)など、複数の癈兵を描いた小説や詩を取り上げながら、作品の描いた「労働者」としての兵士と労働者との関係性の諸相を整理するとともに、その可能性と限界について論じる。
◯15時10分~16時05分
・食野真太郎(名古屋大学人文学研究科 博士後期課程2年)
「太宰治『人間失格』に見られる薬物表象の変容」
コメンテーター:黒田翔大(岐阜聖徳学園大学)
【発表の要約】
本発表では、太宰治『人間失格』の薬物表象に注目し、作中で描かれる睡眠薬やモルヒネがどのような役割を持つ存在であるのかを考察する。作品発表当時、薬物をめぐる状況には大きな変化があった。それは1945年の終戦に伴ってそれまでいわゆる〈外地〉で流通していた阿片がGHQによって徹底的に規制されたこと、そして終戦後に戦地で使用されていた覚醒剤等の阿片以外の薬物が流行したことである。この薬物状況の変化は当時の文学作品上にも反映されている。特に、太宰治は薬物中毒になったことや自殺に薬物を使用しようとしたことがある点で薬物との関係は深く、彼はその経験を作品にしている。その一例が『人間失格』である。本発表では『人間失格』と同時期に発表され、阿片が登場する『斜陽』を比較対象にすることで、二作品における薬物の用途、役割の差異を検討する。そして、薬物の役割を明らかにした上で、『人間失格』を薬物表象の点から考察する。
◯16時15分~17時10分
・劉文超(名古屋大学人文学研究科 修士2年)
「占領とマスキュリニティの亀裂――村上龍『限りなく透明に近いブルー』を読む」
コメンテーター:広瀬正浩(椙山女学園大学)
【発表の要約】
①先行研究の主軸を没主体論・占領小説論・主体成立論三つに分け、没主体論と占領小説論のホモソーシャル・ナショナルな側面を指摘する。
②ネイティブ男性とネイティブ女性の関係をマスキュリニティの傷と回復の視点から読み直し、ヨシヤマ・ケイとオキナワ・レイ子の関係を考察する。
③擬態(ミミクリー)をめぐるネイティブ男性と占領者男性のマスキュリニティの傷を考察する。アメリカを擬態(ミミクリー)するネイティブ男性と黒人米軍がアメリカに欲動しつつ排除されるものであることを指摘し、擬態(ミミクリー)に潜むマスキュリニティの傷を指摘する。
④リュウはネイティブ男性・ネイティブ女性・占領者男性のどちらかにも同一化できないと指摘した上、彼がどのようにマスキュリニティの亀裂を応答したかを考察する。リュウにおける主権者―男性性回復の欲望を指摘し、その欲望がいかに脱ぎ捨てられたかを考察する。
-----------------------------------------------------------
※東海支部では、例会での発表者を募集しています。
研究発表を希望なさる方は幹事(kindaiiin2014@gmail.com)までご連絡下さい。