史学会:第122回史学会大会(2024年11月9日(土)13:00~17:00、11月10日(日)10:00~、東京大学文学部 法文2号館1番大教室)※要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://www.shigakukai.or.jp/annual_meeting/schedule/#122
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

第122 回大会情報
本年の史学会大会は、11月9日(土)・10日(日)に、会場での対面開催で実施いたします(事前申込制)。1日目は公開シンポジウム、2日目には日本史、東洋史、西洋史各部会の研究発表を行います。申込方法等は、後日ご案内いたします。

【1日目】 ≪公開シンポジウム「障害者と歴史学」≫
日時

2024年11月9日(土)午後1時~5時

会場

東京大学文学部 法文2号館1番大教室


 障害者は歴史上どこにでもいる人々である。だが、歴史研究において彼らの姿が常にわれわれの目にとまるとは必ずしもいえない。その理由は、第一に、障害者は往々にして隔離され、視線を逸らされることによって、周縁化されてきたからであろう。第二に、障害者自身が不利な境遇におかれ、しばしば表現能力にハンディを抱えるために、その意志をおおやけにする機会を制限されてきたからであろう。この二つの理由から、われわれ研究者は総体としては、障害者を歴史学においてどのように取り上げることができるのかについて、十分な議論を重ねてきたとはいえないように思われる。
 しかし、障害者がどこにでもいるということ自体からいって、歴史研究において彼らに割かれる関心はより大きくてもよいはずである。論ずべきことは多い。歴史上、障害者のおかれた立場には、社会規範、家族、医療、市民運動、国家による身体の管理など、多様な事項が関係してきた。どういう人が「障害者」に区分けされるのかということ自体が、これらの事項と深く絡み合った歴史的産物である。したがって、「障害者と歴史学」というテーマは領域横断的な議論との親和性が高いといえよう。また、障害者のあり方について考えることは、歴史(学)上の「主体」についての理解を深めるためにも大きな意味をもつ。自己表現に制約をもつ人々が、自分の力で、また周囲の人々とともに歴史の中を生きてきた、その姿に向き合うことは人文学としての歴史学の課題であろう。
 幸いなことに、歴史学における近年の方法論上の深化も反映しつつ、個々の研究者はすでに自身の仕事において障害者の姿に向き合ってきた。最近の動きだけを紹介すると、2020年3月には日本近世史の高野信治を中心として『障害史研究』(九州大学大学院比較社会文化研究院)が創刊され、現在まで4冊が刊行された。各号、主に日本史・日本文化史における障害(者)について、数点の論文が掲載されている。同年12月には『障害学研究』誌で「障害の歴史」特集が組まれ、中野智世が20世紀前半ドイツの身体障害者の自助運動、大谷誠が第二次世界大戦後のイギリスにおける知的障害児親の会、藤原哲也が第二次大戦後アメリカの戦傷病者の社会復帰支援、鈴木晃仁が昭和戦前期の脳病院の女性患者について、充実した論文を寄せた。2021年には北村陽子『戦争障害者の社会史――20世紀ドイツの経験と福祉国家』(名古屋大学出版会)が刊行された。
 彼らをはじめとする研究者から協力を得ることによって、「障害者と歴史学」をめぐる現況の一端を理解し、幅広い地域・時代について豊かな議論を行なうことができるだろう。歴史の中の障害者の姿にあらためて向き合うことは、現在に対するわれわれのまなざしをより深めることにもつながるのではないだろうか。

趣旨説明
池田嘉郎(東京大学)

報告
1.北村陽子(東京大学)
2.高野信治(九州大学名誉教授)
3.大谷誠 (同志社大学)

コメント
小浜正子(日本大学)
中野智世(成城大学)

【2日目】 各部会
10:00~

日本史 古代史部会

1 楊  丹丹 東アジアにおける玄蕃寮の成立――南朝起源説の再検討――
2 横井 裕人 平安初期の陰陽寮に関する試論――嵯峨太上天皇の「遺詔」と卜占をめぐって――
3 堀井佳代子 『年中行事』の基礎的検討――行事の項目を中心に――
4 阿部 栞央 平安時代における皇親出家と処遇の転換期に関する一考察

13:30~

日本史 中世史部会

1 George Wollaston  鎌倉期春日社の社司集会
2 羽田 友生 南北朝期安芸国における国人と守護
3 李  淳楠 室町期東寺文化圏における表象と実態――賭博する「付喪神」像を生み出す都市空間――
4 山口 啄実 中世後期の禅宗における祖師遠忌について

13:30~

日本史 近世史部会

1 川路 祥隆 初期幕藩関係にみる「役」と「奉公」――公儀普請を事例に――
2 堀  智博 慶長・元和期における大坂落人対策
3 増田 琴子 享保元年御林吟味の意義――幕府領山間地域を対象として――
4 久保堅大朗 江戸近郊「抱屋敷」政策の再検討

13:00~

日本史 近現代史部会

1 劉  奕賢 明治初期の下意上達の実態――東京再幸中止請願を例として――
2 王  潔琳 明治初期における博覧会政策と民間出品者――出品資金の貸与を中心に――
3 田中  佑 初期議会期における枢密院と条約改正問題
4 進藤悠佳理 日本陸軍の主要人事と学歴の関係性――陸軍大学卒業生のキャリアパスに関する基礎的研究――
5 大薗 佳純 1920年代日本の総力戦体制構想と陸軍経理組織――食糧問題への対応を中心に――
6 角 英里華 戦時下の地方文化団体――会津文化協会を中心として――

10:00~

東洋史部会

1 佐川 英治 北魏の「子貴母死」と「皇后無子」――古代末期の婚姻の機能をめぐって――
2 朱  智立 唐初期の漠北支配について
3 彦山 明志 漢人世侯と投下領主の消長――モンゴル帝国期の済寧路を例に――
4 賈  亦実 元代文化史における色目人の貢献――薩都剌を中心に――
5 李  子鵬 明代中前期における銭禁政策と私鋳銭の関係性――貨幣構造の転換期の銭鈔政策について――
6 劉  明鍇 南明初期の海外貿易政策と対日通商
7 林  暁萍 「分」と「合」の狭間――孫袁と民国初期による「聯日」外交の試み(1912-1915年)――
8 宮脇 雄太 第一次世界大戦後の国際交通諸条約形成をめぐる北京政府外交
9 何  文琳 文明批判の可能性――第一世界大戦後の中国アナキズムと暴力――

10:00~

西洋史部会

1 胡  昶旭 6世紀中葉の東ローマ帝国における聖職者追放――追放先としてのエジプトに着目して――
2 横川 大輔 1356年に皇帝カール四世は神聖ローマ帝国の改革を目指したのか――政治コミュニケーション史からの再検討――
3 楠田 悠貴 フランス革命期・ナポレオン統治期にイギリス革命史を読む、書く
4 中山  俊 七月王政期における宗教的記念物の管理とカトリック――用途と信心の観点からの考察――
5 吉田眞生子 「国民」と言語をめぐるフィンランド知識人の議論と1869年議会法
6 中川  翼 ブリテン帝国および君主をめぐる戦間期アイルランドの国制論争