日本グループ・ダイナミックス学会:日本グループ・ダイナミックス学会第70回大会 大会準備委員企画シンポジウム「怪異を心理学モデルで「理解」できるか 定量的怪異研究の意義を「本場」との対話を通して考える」(2024年8月22日(木)、立教大学新座キャンパスN312教室)※要申し込み

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

講演会情報です。

●公式サイトはこちら

https://www2.rikkyo.ac.jp/web/jgda70th/04symposium.html
--------------------

※詳細は上記サイトをご確認ください。

企 画 者 石黒格(立教大学)・須山巨基(安田女子大学)
話題提供者 須山巨基(安田女子大学)
話題提供者 佐藤浩輔(筑波大学・バンダイナムコ研究所)
話題提供者 廣田龍平(法政大学)
話題提供者 小山聡子(二松学舎大学)
司   会 石黒格(立教大学)
 
 超常なるもの、すなわち超自然的能力、霊、妖怪、あるいは怪異といった存在は、心理学、特に社会心理学において、否定され、排除されるべきものだった。超常現象をはじめとする俗信の否定は、歴史的に見ても社会心理学の重要な課題の1つであった。超心理学は努力を積み上げてきたが、例外でしかない。その超心理学的研究は再現性問題の発火点ともなったのだが、大規模サンプルを分析して統計的に有意な結果が得られたという報告に対して、「あのネタ」でなければ同じ事態は起きていたのだろうか。かの「事件」は、再現性問題以前の社会心理学者でも、超心理学的な研究に対してだけは、かように批判的になれることを示してもいた。
 一方で、存在しないなにものかを認識し、語り合う行為はヒト以外にはなしえない。超常に関わるヒトの振る舞いを理解することは、ヒトの認知、ヒトの社会行動の重要な一側面を理解することに他ならない。近年、パレイドリアなどのロバストな認知現象や進化理論を基盤として、超常を定量的心理学研究の俎上にあげる試みが活発である。そこでターゲットとされるのは超心理学が追究する超常の実在性ではなく、超常に関わる知覚と認知の特徴、意味概念、そして、それらが物理的・社会的環境と応答しながら変容し、収斂する社会心理学的メカニズムの理解である。また、超常は常に一定の社会的機能を果たしてきた。超常の理解は、現代社会におけるヒトの心理と、ヒトを取り巻く環境を理解する上でも欠かせないピースである。
 本シンポジウムでは超常の中でも霊や妖怪などの怪異を題材として、その認識を支える知覚・認知的基盤(須山氏)、その社会的機能(佐藤氏)について、心理学的な説明モデルを紹介する。
 一方、怪異研究の中心は心理学ではない。怪異研究を担ってきたのは、民俗学、歴史学、宗教学などの領域である。これらの領域で伝統的に用いられてきた方法の中心は事例と資料の収集・分析といった定性的なものだったし、進化理論や定量的分析を使うときでも、その目的も作法も異なっている。私見であるが、そこには事実と個別性への緊密な連結があるように思われる。いわゆる定量的な研究や、定量を志向する理論モデルは(我々心理学者には)客観的でエレガントであるように見えるが、それらは理論に乗らない、数量化できない要素を大幅にそぎ落として構築された骨組みでしかない。それでは、それらは怪異研究の「本場の住人」の眼鏡にかない、なんらかの気づきを提供しうるのだろうか。それができないのであれば、心理学的怪異研究は、内輪のお楽しみを超えるものではないことになる。
 そこで、本シンポジウムでは二人の「本場の住人」を招き、自らの研究をご紹介いただいた上で、心理学的な怪異研究について率直に評価、批判をいただく。民俗学領域からは、妖怪研究を主導する研究者の一人で、民俗学、文化人類学的な見地から怪異について広く論じておられる廣田氏をお招きする。そして歴史学領域からは、日本における怪異、そして怪異と人の関わりについて、古代から現代までの歴史的変遷を通史的に論じておられる数少ない研究者である小山氏をお招きする。
 本シンポジウムは、質的研究と量的研究の対話の試みでもあり、エレガントな研究モデルのリアリティをチェックする試みでもあり、分野をまたいだ敵対的コラボレーションの取り組みでもある。多くの会員にご参加いただき、納得し、反発しながら楽しんでいただければと願っている。得るものの多い時間となることを確信している。