新入社員週報第2回「出版社と社会と私」(持田玲)

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入社から早くも2週間が過ぎようとしています。この1週間、新たな特集を組んだり(!)、本の注文や返品の仕組みを知り、電話を取ったりメールを送ったりと、院での経験はあるとはいえ、新卒かつ、研究・教育の分野にいた私は、新しいことばかりで頭がパンクしています。今まであまり考えていなかったのですが、本屋さんには、夥しい数の本が一冊一冊棚に入っていて、この本を無事届けるため、取次会社などたくさんの人が関わっているということを知りました。細かいシステムと人力の両方があってこそ成り立っている産業なのだと実感しました。

また、流通だけではなく、本の中身に目を向けてみると、どんなジャンルにおいても、本は「社会」と何かしら関わっていることに改めて気づきました。専門書や研究書は、世の中とどのような接点があるの?と疑問に思われるかもしれません。確かに、研究書と社会を真っ直ぐな太い線で繋げられるか、と言われると難しいです。しかし、例えば「歌枕」の研究であれば、都から見てその土地がどのように捉えられていたのかが分かりますし、また、今の風景との比較から、土地がどのように開拓・利用されたのか、暮らしの歴史を垣間見ることができます。ひいては、観光業ともつながる部分があると思います。一方で、研究自体が常に社会への還元を意識して進められると、研究の範囲が狭まってしまいます。だからこそ、それぞれの研究(を含めて世の中にある全て)を社会と繋げていくのが、出版社の役目なのだなと感じています。

これまで「社会」と繰り返していますが、私が「社会」を意識したのはコロナ禍の2020年から2021年にかけてでした。私は、2020年の東京オリンピックの聖火ランナーに選ばれ、地元を走る予定でした(結局は、感染防止のため、トーチキスというイベントのみ、いくつかの区市町村合同で行いました)。
幼い時から地元のお祭りなどでお手伝いをしてきて、オリンピックに際して地元を盛り上げたいと思いを綴ったところ、選んでいただいたのですが、そのままコロナ禍に突入。ランナーになった時に喜んでくれた人の中にも、オリンピックに賛成、反対、両方の意見がありました。また、SNSや報道の風当たりは更に顕著で、見るたびにもやもやとした気持ちになり、当時、本当にこれで良いのかなと、心に迷いを持ったまま、私はイベントに参加しました。
オリンピックを開催して良かったのか、今でも私には答えを出すことができません。けれども、応募したことやトーチキスのイベントに参加したこと、インタビューを受けて、地元愛を話したこと...振り返ってみれば貴重な経験でしたし、何より誰もが不安定な「社会」の中に立っているという意識を持つようになりました。

発信する、何か行動を起こす時には、賛成する人もいれば、反対する人も必ず出てきます。特に、出版社はその渦の中心にいるような気がしています。そんな時、自分と周囲を冷静に見つめた上で、最後は自分を信じて前に進める人でいたいと思っています。