新入社員週報第1回「「丁寧さを失わずに」 これからよろしくお願いいたします」(持田玲)

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2024年4月より文学通信に入社しました、持田玲です。これから何卒よろしくお願いいたします。
今週より全五回予定で、新入社員週報をお届けします。

お二人の先輩方の週報と同じように、「はじめまして」と言いたいところなのですが、実はホームページを介して、既に私のことを知ってくださっている方がいるかもしれません。数年前から文学通信でアルバイトをしており、アルバイト日誌というものを書いていました。
日誌の更新は、2023年1月で途切れてしまっています。お読みくださっていた方には、突然終了してしまったこと、本当に申し訳なく思っています。執筆時には気付いていなかったのですが、最近になり、色々な場でこの日誌に興味を持ってくださっていた方がいたことを知り、驚いています。
最初の日誌は2019年、当時学部生の私の文章は、今よりもさらに稚拙なものですが、心にうつうつと立ち込めた感情、研究のこと、身の回りのこと、何とか自分の言葉で表現しようと試みていたことは確かです。今読み直してみて、この時の気持ちを忘れずに仕事をしたいと強く思いました。

更新が途切れていた約1年間、私は博士課程前期の2年目として、修士論文を執筆していました。専門は、日本文学、主に中世の和歌です。
和歌に興味を持ったきっかけは、高校の時の古典の授業。担当の先生が、院で『万葉集』を研究していたため和歌を扱う時間数が多く、熱量の高い授業も相まって、叙景歌にすっかり魅了されてしまったのです。ただ、当時はどちらかと言うと数学と物理の方が得意で、進学先には散々迷いました。
決め手は何かと言われると難しいのですが、古典以外にも、京都で仏像を見るのが好きで京都検定を取得したり、松本隆などの作詞家に惹かれていたりと、歴史や言葉への興味関心が高かったことが関係しているかもしれません。
文学部に対しての風当たりは強いですが、私は日本文学を専攻して心から良かったと思っています。古典文学は、現代とは隔絶されたものに見られがちですが、人の営みや心情を表現、記録した言葉や文化というものは、少しずつ形を変えながら地続きで受け継がれてきたものです。文学を読み、研究すると、今の私との共感、反対に現代とは対照的な部分それぞれを感じ、(大きな話になってしまいますが)それは全て、自分や他者をより深く知るという行為に繋がるように感じます。
性格診断のように手っ取り早く自分のことを知ることはできないけれども、手っ取り早いものはしばしば大切なものや面白いものを置いていってしまう気がします。

私には、特別飛び抜けたものはないけれど、そういうものを拾ってゆく丁寧さを失わないでいよう、とずっと心掛けてきました(つもりです)。この姿勢を、これから文学通信の一員として生かしていけたらと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

また、入社日に始めたX(Twitter)のアカウントでは、応援のメッセージをいただき、ありがとうございました。未熟者ですが、少しでもお役に立てるよう、精一杯邁進してまいります。

次回以降は、大学、大学院時代の研究のこと、コロナ禍での学生生活の話をできればと思っています。

最後に、先日見かけて胸に刺さった言葉を共有します。
河出書房新社「スピン/spin」第7号、柳美里さんの表紙の「ことば」です。