大橋崇行『落語と小説の近代 文学で「人情」を描く』(青弓社)
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https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787292728/
四六判 308ページ 上製
定価 2800円+税
ISBN978-4-7872-9272-8
書店発売予定日 2023年02月24日
紹介
江戸期から明治期にかけて、大衆芸能である落語は小説にどのような影響を与えたのか。落語は西洋近代とどのように出会い、どのように向き合ったのか。
三遊亭円朝の「怪談 牡丹灯籠」「怪談乳房榎」「真景累ヶ淵」「錦の舞衣」のほか、三遊亭円遊、快楽亭ブラック、談洲楼燕枝など、同時代に活躍した噺家による落語も議論の俎上に載せて、明治期の物語の様相や「人情」の語られ方を丁寧に読み解いていく。
これらの議論を通じて、言文一致をめぐる問題、坪内逍遥の「人情」論を再考するとともに、小説が落語に翻案されるプロセス、物語が小説・落語・講談などのメディアを越境する諸相を分析し、日本近代文学研究、アダプテーション研究の新たな地平を示す。
目次
序 章 落語の近代――アダプテーションの視点から考える
1 本書の目的と初代三遊亭円朝についての研究状況
2 落語と〈近代〉
3 アダプテーションの理論とテクスト
4 アダプテーションの、その先へ
5 本書の構成
第1部 人情噺と怪談噺のあいだ
第1章 「人情」を語る怪談――三遊亭円朝「怪談 牡丹灯籠」
1 人情噺としての「牡丹灯籠」
2 円朝の談話における「人情」
3 語る「人情」、演じる「人情」
4 坪内逍遥の「人情」論と人情噺の関係
5 小説表現への接続
第2章 「幽霊」と「神経病」――三遊亭円朝「真景累ヶ淵」
1 「幽霊」と「神経病」
2 「神経病」言説の流行
3 「真景」「真情」としての「執念」
第3章 「見えがたきもの」を見えしむる――三遊亭円朝「怪談乳房榎」
1 奇談としての病
2 人情噺への翻案
第2部 落語と小説のあいだ
第4章 メロドラマの翻案――三遊亭円朝「錦の舞衣」
1 「錦の舞衣」について
2 「錦の舞衣」の概要と先行研究
3 「やまと新聞」の翻案物と「錦の舞衣」
4 「小説」をめぐる言説
5 「悲劇」と「メロドラマ」
6 仇討物によるジャンルの翻訳
第5章 小説を落語にする――三遊亭円遊「素人洋食」
1 「素人洋食」の評価と原作の存在
2 二つの「素人洋食」
3 長屋噺への変更
4 「士族の商法」「素人鰻」との関係
第6章 講談・落語・小説の境界――快楽亭ブラック「英国実話 孤児」
1 実話としての落語
2 快楽亭ブラックの西洋人情噺
3 様式としての実話
4 講談と落語のあいだ
5 小説との関わり
第7章 落語を「小説」化する――談洲楼燕枝「西海屋騒動」
1 「西海屋騒動」について
2 初代談洲楼燕枝と「小説」
3 翻案としての「西海屋騒動」
4 落語を「小説」化する
5 燕枝による「小説」の変容
第3部 「人情」と言文一致
第8章 翻訳と言文一致との接点
1 明治初期の「豪傑訳」
2 逐語訳による翻訳
3 アダプテーションとしての「豪傑訳」
4 文体としての言文一致体
5 翻訳と言文一致との接点
第9章 『源氏物語』と坪内逍遥の「人情」論
1 「世態」の反映としての『源氏物語』
2 英語圏の「小説」観との差異
3 『小説神髄』と『源氏物語玉の小櫛』との関係
第10章 キャラクターからの離脱――坪内逍遥『小説神髄』「小説の裨益」「主人公の設置」
1 円朝と日本の近代文学
2 「人情(ルビ:にんじやう)」論と『倍因氏 心理新説』
3 キャラクターからの離脱
4 逍遥による円朝の評価
主要参考文献一覧
初出一覧
おわりに
人名索引
事項索引