木越俊介「古典のミライにアイデアを!──ないじぇるクリエイティブ会議開催に寄せて」
Tweet※本テキストは12/18(日)開催の「ないじぇるクリエイティブ会議 -古典のミライ にアイデアを!-」の趣意文です。ご参加お待ちしております(リンク先の参加申し込みフォームで受け付けております)。
古典のミライにアイデアを!
──ないじぇるクリエイティブ会議開催に寄せて
国文学研究資料館准教授 木越俊介
日本の古典文学-それがいまの世の中でどのようなイメージをもたれているのか、えてして関わっている当事者には一番見えづらい。しかしさすがに、よく読まれているとか、盛況だといった声はどう耳をこらしても聞こえてこない。新刊書店の日本古典の棚からは息づかいや勢いが感じられず、なんとなくシャッター商店街然とくたびれているように映ってしまうし、配架してくれるのならまだしも、どんどん縮小、消滅の危機にある。昭和の古典評論華やかなりし時代とも状況が全く違う。
古典、クラシック、スタンダード。ある意味、不動の地位にあり普遍的な価値をもつと信じられている作品には、常連のファンは多い。しかし、一見様お断りとお高くとまっている場合ではないし、「大古典」そのものにも新陳代謝は必要だろう。海外文学に目を向ければ、「新訳」という方法で息を吹き返すどころか、新しい命を吹き込まれている作品も数多くある。また、新旧の多様な作品が積極的に紹介されたことで、新しいファンを開拓した韓国文学などの例もある。日本古典はオワコンだなどといって自虐的なポーズをとる前に、やることはまだたくさんあるはず。
そうした危機意識とともに、古典文学を元気づけようとするさまざまな試みがなされている。ただ、一応「日本語」で書かれているがゆえに、かえって近そうで遠いもの、分かりそうで分からないもの、というなんとも微妙な立ち位置にありはしないか。まずは原点に立ち返って、人々に古典に目を向け、興味をもってもらうきっかけづくりからはじめる必要があるだろう。
研究者が日本の古典を取り巻く話をすると、いかんせんストイックになりがちである。 総じて研究者はそういう体質をもっているものだが、それがかえって自分たちの身動きをとりにくくしている。雑誌やネット上のライターのように、もっと自由に、軽やかに対象を愛でながら魅力を伝える方法やツールを編み出せないものだろうか。研究者個人と話すと、古典が好きになったきっかけはみんなささいな、それぞれ等身大のものなのに。
国文学研究資料館(NIJL)は2017年に「ないじぇる芸術共創ラボ」(略称:ないじぇる)なるプログラムをたちあげ、さまざまな分野で活躍するクリエーター、翻訳家たちと研究者が、ワークショップをとおしてともに古典籍の魅力を探求してきた。今回は特に、この10年ほどの間に急速に拡大した膨大な古典のデジタル画像の活用法をケーススタディとして提示したい。とはいえ、いきなりナマに近いものをそのまま差し出されても、多くの人は巨大な迷路の中に迷ってしまうだろう。そこで、これからの研究者はいわばコンシェルジュのような役割が求められる。そして、そこには五等星、六等星のような、人目につきにくいけどキラリと光る「小古典」も点在している。
本会議は、「ないじぇる」の第2期(2021年度~)の過程で培った経験と成果を余すところなく開放し、参加者のみなさんと一緒に古典のミライをつくるヒントをさがすために開催するものである。
★ないじぇるクリエイティブ会議 -古典のミライ にアイデアを!-
日時 12月18日(日)13:00~16:00 (12:50開室)(JST)
場所 Zoomウェビナー及びYouTubeライブ配信
参加費 無料
申込み方法
事前登録をお願いいたします。
「参加申込フォームはこちら」ボタンをクリックして、お申し込みください。
プログラム
第一部 アートと翻訳で探索した古典の可能性
<<プレゼンター>>
◇小山順子(京都女子大学教授)
創作と研究の架橋ーないじぇる芸術共創ラボの始発から今までを振り返るー
◇染谷聡(漆芸家、国文学研究資料館 アーティスト・イン・レジデンス)
風景の宛先
◇谷原菜摘子(画家、国文学研究資料館 アーティスト・イン・レジデンス)
接続される物語
◇片渕須直(アニメーション映画監督、国文学研究資料館 アーティスト・イン・レジデンス)
『枕草子』の時代に散りばめられた『映画』の可能性
◇毛丹青(翻訳家、国文学研究資料館 トランスレーター・イン・レジデンス)
翻訳に見えるもの、見えないもの
第二部 クリエーターと研究者に聞く:新たな地平をひらくために
<<コメンテーター>>
◇山中悠希 (東洋大学准教授)
◇齋藤真麻理 (国文学研究資料館教授)
モデレーター:木越俊介(国文学研究資料館准教授)
第三部 あなたのアイデアを大募集
総合司会:黄昱(国文学研究資料館特任助教、古典インタプリタ)
*終了後のアンケートで、古典籍の新しい利活用法について、お一人ひとつのアイデアをお寄せください。実現可能性は問いません!