アルバイト日誌「展示空間の美しさ」(2022.10.14、れい)

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 お久しぶりです。出勤はしていたのですが、バタバタと過ごしており日誌の更新は約1ヶ月ぶりになってしまいました。この期間にも日誌の題材となりそうな出来事は様々あったのですが、その中で一つ、すでに会期は終わってしまったのですが、三菱一号館美術館の展覧会「ガブリエル・シャネル展」に訪れたことを今日は書きたいと思います。

 会期のはじめから話題になっていた「ガブリエル・シャネル展」、ブランドCHANELの象徴的なデザインとその美しさには憧れがありますし、書物や日本美術の展示を見ることが多い私にとって、服飾やジュエリーがどのように展示されているのかという点も気になり、興味を持ちました。

 私が訪れたのは平日だったのですが、待ち時間はなかったものの会場はわりと混雑していて、普段の博物館・美術館とは少し客層も違うように感じました。今回は、シャネルの仕事を中心とした展示で、ドレス・香水などがシャネルの言葉、映像とともに展示・紹介されており、初心者の私でも勉強しながら十分に楽しむことのできる構成になっていました。ガブリエルシャネルについて、これまで一流のデザイナーという漠然としたイメージを持っていたのですが、今回、その生き方、紡ぎ出される言葉やデザインの美しさにすっかり魅了されてしまいました。

 そのような展示の中でも特に印象的だったこと、それは展示空間の美しさです。シャネルには、飾り立てる美しさではなく、「引き算をする」という哲学があり、ドレスの形や装飾にもその特徴が見られるのですが、それらの作品を展示する空間が、何よりもシンプルで美しかったのです。光量の関係もあると思いますが、シャネルの象徴である「黒」を基調とした空間に簡潔な解説文、そして曲線を描いた展示台、どれも作品の良さを引き立たせて、その作品ごとに宿る美しさと呼応するような感覚がしました。

 今まで私は、展覧会に訪れた際いつも資料や展示構成に目が向いていて、その空間全体にはあまり興味がありませんでした。しかし先日、作品の置き方数ミリの違いで、その展覧会の完成度が随分と変わるのだということを教えていただいたこともあり、そしてまた「ガブリエル・シャネル展」を見て、展示空間をどのように作るかということが、作品の見方や展覧会に抱く印象にも大きな影響を及ぼすことが分かりました。

 特別展はもちろん、常設展であっても展示替があるため、図録はあろうともその空間というものは常に一回切りです。その形には残らない空間を、学芸員の方と見る側の私たちがともに共有する、博物館・美術館の魅力をまた新しく感じたように思います。