古代文学会10月例会(第754回)(2022年10月1日(土)午後2時〜5時、Zoom)※要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://kodaibungakukai.sakura.ne.jp/wp/kenkyuuhappyoukai/reikai
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※詳細は上記サイトをご確認ください。


日時:2022年10月1日(土) 午後2時より5時まで(例会終了後委員会を開きます)

※Zoom開始時刻は発表開始の30分前となっています。

場所:Zoom

発表者:アンダソヴァ マラル氏

題目: 出雲国造の祖神-なぜ『出雲国風土記』はアメノホヒを語らないのか

要旨:従来の先行研究では、出雲国造の祖先神であるアメノホヒに関しては、その出自と由来を問う議論が中心だった。近年は出雲国風土記を神話テクストとしてとらえる方法が示されているが、そうした中でもアメノホヒ関して、当風土記の成立事情からとらえる見解が示され、テクストの中での位置づけが十分に問われていない。

 本発表では、アメノホヒをテクストの中で読み解く視座に立ち、古事記、日本書紀(一書を含む)、出雲国風土記におけるアメノホヒを表出し、位置づけを行う。それによって、アメノホヒは古事記および日本書紀にその活躍が述べられ、オホナムチの祭祀者として位置づけられるものの、出雲国風土記ではアメノホヒと思われる神名(アメノフヒ)が一件登場するのみであり、この神を主役とする伝承や祭神とする神社の記載がみられず、出雲国造とのつながりも示されないことがみえてくる。すなわち、アメノホヒを出雲国造の祖先神とし、オホナムチの祭祀者とするのはヤマトの側で成立したテクストの認識であり、出雲側で成立した出雲国風土記はアメノホヒを出雲国造の祖神として語らないことが明らかとなる。

 それはなぜなのだろうか。この疑問を解消すべく、出雲国風土記において古事記、日本書紀の国作り・国譲りに対応している記事を取り上げ、オホナムチの宮殿の造営、天孫との関わり方、祭祀の在り方を分析する。出雲国風土記を神話テクストとしてとらえた上で、その全体の論理においてなぜアメノホヒに関する記述が必要とされなかったのかを考察する。その結果、出雲国風土記はオホナムチの祭祀を高天の原の神々の指令によるものとしてではなく、在地の事柄として記すことがみえてくる。古事記と日本書紀が形成した〈出雲観〉と出雲国風土記が描こうとした〈出雲観〉の相違が結論として導き出されるのである。

(司会:吉田修作氏)