「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業─歴史が結ぶ地域と大学─」のご案内★『地域歴史文化継承ガイドブック』全文公開
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「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業─歴史が結ぶ地域と大学─」のご案内
私たちは、大学による歴史文化資料の保全ネットワークを組織し、資料所在情報をデータ化することで、その研究資源化や被災資料の保全、地域史研究の市民への還元といった、地域連携にかかる諸課題に対する知見の共有や教育、地域連携の実践をめざしています。
また、それらのバックアップを用意し、恒常的なネットワーク体制を作り上げることで、災害時の資料保全(資料レスキュー)に対する迅速な支援体制を構築しようとしています。
資料や地域史を通した学術的な地域連携をめざし、このネットワークは活動を続けてまいります。多くのみなさまのご協力・連携をお願いいたします。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117
国立歴史民俗博物館内資料保全ネット事務局
Tel. 043(486)4225
mail. pres-network@rekihaku.ac.jp
地域の大学を核とする歴史文化資料のネットワークをつなぐことで
①所在情報を含む資料情報を全国的に把握し、歴史文化資料保全のための相互支援体制を確立します。
②歴史文化研究分野における教育・人材育成とそのための環境・方法論を整備します。
③地域社会における歴史文化の継承と創成に向けた大学の機能強化に貢献します。
なぜ大学が地域社会の歴史の継承に協力するのか?
地域の歴史文化資料は、その土地の成り立ちを知り、これからを考えるための道しるべとなるものであり、地域社会の長期的、持続的発展に欠かせません。大災害から地域の資料を救い出し、継承していく取り組みは、阪神・淡路大震災をきっかけに立ち上がった神戸の「歴史資料ネットワーク」を先駆けとして、全国各地に普及しつつあります。
しかし、地域の資料を継承していく方法は、まだ制度的にも技術的にも確立していません。また災害の増加にともない、被災資料の保全(資料レスキュー)はますます大きな課題となっています。
これまでの取り組みに加え、地域で実行可能な資料継承手法の開発普及や、緊急時の相互支援体制の強化が不可欠です。そして、これらは高度な研究開発力と広汎な人的ネットワークが前提となります。
次の時代へ地域の歴史文化を伝えるために、大学の力が必要となる理由はまさにここにあります。そのため、私たちは全国規模の大学による資料保全ネットワークを立ち上げようとしています。
人間文化研究機構・東北大学・神戸大学を拠点とし、資料所在 情報の把握・データ記録化・相互レスキュー支援体制の構築・教育プログラムの開発・国際的な情報発信を行なってまいります。
五つの事業と人間文化研究機構の役割
このネットワーク事業は大きく五つの事業を実行することを通じ、目的を達成することを目指しています。五つの事業とは資料保存研究・データ記録化・相互レスキュー支援体制の構築・教育プログラムの開発と人材育成・国内外への成果発信です。ここでは、事業のうち特に人間文化研究機構・国立歴史民俗博物館(歴博)が行っているものについてご紹介します。
資料保全研究
頻発する災害にに対し、新たな資料保全の方法を検討することを目指しています。これまでのような「重厚長大」な資料保全の手法に加え、地域の人々とともに行うことが可能な、シンプルでわかりやすい資料保全手法の検討を進めています。人間文化研究機構の複数の機関と連携し、実務的な検討を進めています。これまで西日本豪雨への資料救済対応や、2019年の豪雨に対する資料救済対応で、技術指導を実施したり、実際に資料のクリーニング活動を行ったりもしています。
データ記録化
歴博が作成している情報基盤システム"khirin"を中心にデータの記録化を進めています。関東の大学を中心に資料の所在情報をマッピング、地図上に落としていく作業を行っています。また、全国の大学の歴史資料保全に関する画像データのバックアップを実施しています。地域における歴史文化資料はセンシティブなものが多く、現時点では非公開のものが中心ですが、今後は可能なデータから公開を進めていく方針です。
相互レスキュー支援体制の構築
本事業では、各地域ごとに史料ネットの連絡協議会を設置しています。東北大学は北日本を、神戸大学は西日本の協議会をもうけています。その中で人間文化研究機構では首都圏・関東の連絡協議会をつくり、各地域の資料ネットと連携するとともに、これらの地域の新たな資料ネット設立支援も行っています。東海地域にも資料ネットができる動きがあることから、今後は範囲をさらに広げ、関東・東海・中部などの地域を中心に相互支援体制を築いていきます。あわせて、広域災害への対応として東北大学・神戸大学との連絡体制の構築により、遠隔地の資料保全対応も構築しています。
教育プログラムの開発と人材育成
教育プログラムについては、歴史文化資料保全における災害対策を各地域で推進するための技術や方法論に関する普遍化をすすめるために、各地の大学や文化財行政関係者、ボランティア活動参加者を対象としたワークショップの開催などを行っています。資料保全に関する技術共有および人材育成を目的としたワークショップを実践したことで各地での防災対策を促進させるとともに、大学での教育活動を支援します。
国内外への成果発信
シンポジウム等のイベントを行うとともに、事業における日英両言語でのリーフレットの作成などを通じ、各地域の資料ネットの成果を発信しています。Webサイト等の構築も進め、イベントの集約や活動のまとめなども作成する予定です。また、国際会議や国際的な大学の連携を通じ、広く災害が頻発する中での社会対応、持続可能社会の実現に向けた取り組みなども併せて進めています。国際発信は、一つ一つの資料ネットでは困難になる部分もあるため、人間文化研究機構で効果的にとりまとめ、発信することを目指しています。