ご挨拶(平川 南)★『地域歴史文化継承ガイドブック』全文公開

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ご挨拶
文●平川 南

1995年(平成7)の阪神淡路大震災後、神戸大学は2002年(平成14)に人文学研究科に地域連携センターを設置し、災害時の歴史資料ネットワーク活動支援などを提唱し、牽引してきた。

また、2003年(平成15)の宮城県北部での直下型地震を契機に、東北大学は県内大学や自治体等と連携して、被災した歴史資料の救済・保全、および資料の所在確認・地域とのネットワーク構築を推進し、2011年(平成23)の東日本大震災の翌年に災害科学国際研究所を発足させ、文理連携による被災歴史文化遺産の保全や、歴史資料を通じた歴史災害の再検討を実施している。

こうした情勢の中、人間文化研究機構では、法人第3期(2016年〈平成28〉4月~2022年〈令和4〉3月)の重点事業として「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」を立ち上げ、2017年(平成29)1月に国立大学法人東北大学、国立大学法人神戸大学、大学共同利用機関法人人間文化研究機構の連携・協力に関する基本協定の締結を行った。なお、大学間協定に先立って、東北大学災害科学国際研究所、神戸大学大学院人文学研究科、人間文化研究機構・国立歴史民俗博物館との三者間協定が締結されている。

この法人・研究機関による研究協力協定の締結で推進母体を明確に示すことにより、全都道府県において「資料ネット」などの地域基盤を充実させ、連携が強化されることを目指さなければならない。

日本列島各地には多様な歴史文化が伝えられている。これらの基盤となっているのが地域に残された膨大な歴史文化資料であるが、近年では頻発する自然災害また過疎化や地方都市の中心市街地の空洞化などの急速な社会の変容により、歴史文化資料の継承が大きな課題となっている。こうした状況のなか、長い年月をかけて蓄積された多くの歴史文化資料を伝え、そこから地域固有の豊かな歴史文化像を構築する取り組みが各方面で展開している。

人間文化研究機構では、東北大学、神戸大学と密な連携を図りつつ、全国の大学や「資料ネット」と協力して歴史文化資料の保存を進め、歴史文化の継承と創成に向けたネットワーク構築を推進している。本書では、各地の第一線で活動する研究者により、最新の研究成果を紹介している。また、事業を通して連携する全国「資料ネット」からは、それぞれの活動経緯やその特徴などが示され、各地で実践される活動状況を知る手がかりとなるのではないだろうか。

本書で紹介する内容は、地域を単位に歴史文化継承を進めるための基礎的な情報である。本書が自治体や博物館、文書館、図書館など、地域資料の保存・継承に従事する方や、そうした取り組みに関心のある多くの方々に読んでいただき、各地域社会の新たな歴史文化の創成と、その基盤である歴史文化資料の保存・継承が促進されることを願っている。