古代文学会 二月例会(第743回)(2022年2月5日(土)午後2時〜5時、zoom)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら


http://kodaibungakukai.sakura.ne.jp/wp/kenkyuuhappyoukai/reikai
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※詳細は上記サイトをご確認ください。


日時:2022年 2月 5日(土) 午後2時より5時まで
※zoom開始時刻は発表開始の三〇分前となっています

★今回に限り参加の登録は必要ありません。


発表者: 平山真由子 氏

題目: 神の御尾前―『古事記』の事代主神像―

要旨:

『古事記』上巻にみえる国譲り神話は、高天原からの使者である建御雷神と天鳥船神が大国主神の統治する葦原中国へ派遣され、天つ御子へ国を譲るか否かを尋ねる物語である。大国主神はその返答にあたり、従う意を示した後に事代主神が「神の御尾前」としてお仕えするならば百八十神の背反が起こらぬことを誓う。しかしながら、事代主神が神の御尾前として仕えることは、 国譲り後の葦原中国を天孫の統治可能な世界とするための重要な要素であるにもかかわらず、その具体的な働きや内容を把握することは難しい。御尾前という語は上代文献において孤例であるからだ。そこで御尾前の語が「御尾」と「御前」によって構成されることに着目しつつ、事代主神の性質を『古事記』の文脈に添って検証することで、事代主神が神の御尾前として仕えるということがどのようなものであるか考えていくこととしたい。

その上で、事代主神が御尾前として仕えることができた理由について読み解いていく。その際に「御尾」「御前」となる事代主神が居た場所が御大之前であることも無視できない。「前」をサキと読ませミサキを「御前」という文字遣いで表現しているのもまた、上代文献において『古事記』のみである。「御尾前」の語の特殊性に照らしてみれば、事代主神の役割である「御尾」「御前」と、この神が居た「御前」との繋がりは問われなければならないだろう。事代主神は「御前」で船に乗り「鳥遊取魚」を行い、その後大国主神に代わり国譲りの返答を行う。これらをそれぞれ独立した働きではなく、事代主神の持つ一連の役割として捉えることで、「御前」の持つ機能を明らかにしていく。そこを手掛かりとして「御尾前」の働きについて考察する。

(司会:長谷川豊輝 氏)